「予想をはるかに超える濃密な人間ドラマが描かれました。見終わって振り返ってみたのですが、いくら考えても何が真実で何が正解だったのか分かりません。…そんな、とても悩ましい作品です。」由宇子の天秤 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
予想をはるかに超える濃密な人間ドラマが描かれました。見終わって振り返ってみたのですが、いくら考えても何が真実で何が正解だったのか分かりません。…そんな、とても悩ましい作品です。
予告編の映像が 「観てみたくなる」 内容でした。
プロデューサーに「片渕須直」の名前も見つけて
これは観るしかないでしょう というわけで鑑賞です。
◇
あるドキュメンタリーを作成中の、主人公=由宇子。
川原でリコーダーを吹く男の横顔。
そんな場面から始まる。
自殺した女子高校生の父親らしい。
高校の教師とただならぬ関係になってしまい
学校にバレ
マスコミの格好の餌食にされ
この川原で命を絶った。
このシーンを撮影する場面から
由宇子の人柄が見え隠れする。
・無理やりコメントを引き出そうとはしない
・オフレコで口から出た言葉を「使って良いか」と問いかける
「被害者に寄り添いつつも、公正に」
それが彼女の信条。
この時点で分かる「事件」の関係者は二人。
・女子高校生
・高校の教師
ドキュメンタリーは、関係する人たちを追いかけ
広がり、膨らんでいく。
・女子高校生の父親
⇒ パン屋。 負けるものかと、誰も買わなくなったパンを焼き続ける…
・高校教師の母親
⇒ 何度も引越しを繰り返し、隠れるように暮らす日々…
・高校教師の姉
⇒ 遠くに引越し、小さな娘とひっそり暮らしている
彼らの声を通して
「真の被害者が誰なのか」 を
訴えかける番組を作り上げようとする由宇子。
「公平な立場で公正なジャッジを」
ドキュメンタリーを作成する由宇子の
矜持は、ぶれることが無い。 はずだったのだが
ここでもう一つの事件が起きる…。
◇
由宇子のもう一つの顔。
父の経営する進学塾で「講師」をしている。
教え子の女子高校生。
彼女の妊娠が発覚… しかも
父親が父親だと言う… (なんかこう書くと、ややこしい?)
新たなドキュメンタリー対象 発生
しかも 当事者が実の父 (あぁ なんてこった)
当初からの事件 と 新たな事件
他人事の事件 と 身内の事件
天秤にかけられるのは
「公平に公正に」 から離れ
「得る物と失う物」 に変わり始める。
「ドキュメンタリーの放送だけは何としても」
何とか実現させようとする由宇子だが、 そこに
自殺した教師の姉から告げられる真実…
「弟の遺書は、私がすり替えた物です…」
事実誤認。 …誤認? いや …隠蔽? 捏造?
…
そして由宇子の下す選択は…
◇
う~ん
重い話なんだろうと 予想はしていましたけれど…
「重い」 + 「息苦しい」 + 「胸が痛む」 という
三重苦のストーリーでした。
思い返しても くすっと笑う場面とか
ほとんど (ひとつも?) 無かった気が…。
少しは 息を抜ける場面が欲しかったかなぁ
というのも正直な感想です。
※どんなおいしい料理でも
味付けの濃いのが続くと
途中、箸休めが欲しくなります そんな感じ
もちろん
役者さんの演技が素晴らしいし
とても完成度の高い作品だと思います。
観れて良かった。
◇あれこれ
子供の父親
結局のところ
お腹の子の父親って誰なのでしょう …はて
誰かれ構わず体を売っていたワケではなさそう ですが
(チャラい男子高校生 の可能性は、ある気がする…)
瀧内公美さん
「彼女の人生は間違いじゃない」
くらいしか観た記憶がないのですが
今作ではなんとも 「強く たくましい女性」
似合ってました。
河合優実さん
妊娠する女子高校生役を好演。
すごく自然体の演技が光ってました。
これからの活躍にも期待。
◇最後に
「新聞記者」
に近い作品かな、と観る前は思っていたのですが、
う~ん 違いましたねぇ…
こちらの方が、泥臭いというか
身近にも起きてそうな事件がテーマだから
感情移入しやすい… とでもいいますか…。
※実際には周りにこういう事件の関係者いませんけど… (汗)
◇最後の最後に
スマホのカメラ
ああいう場面でレンズを向けられると
銃口を突きつけられた時のような緊張感が
体を走りますね… こわ~
※実際にはそんな場面に出くわしたコトありませんけれど… (汗)
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
お久しぶりです。
重い映画でしたね。
由宇子は、塾の先生をしている優しい姿。
ディレクターをしてたらますます彼女の良さが損なわれれ・・・
そんな気がしてしまいました。