「時に真実は人生を変えてしまう恐ろしさを持つ」由宇子の天秤 さくらんさんの映画レビュー(感想・評価)
時に真実は人生を変えてしまう恐ろしさを持つ
人は生きていく上で、全て真実だけで全く嘘をつかない、嘘をつかなくても隠すことがなかったら、これまで以上に人は簡単に傷つき、とても生きづらい世の中になってしまうだろう。
ドキュメンタリーの概念はきっと真実をありのままに視聴者に伝えることで、由宇子はその信念に基づいて、ドキュメンタリー制作に携わってきた。
しかし、嘘も貫けば、それを覆す証拠や立証できる人物がいなければ、きっといつの間にかに真実になり得るであろう。
そこに被害者、加害者の関係性がなければ関わっている人間が少ないほど尚更である。
この作品においても、それが真実であるということを信用するにはその人に対しての信頼が基本あるはずである。その人が真実を言っているかどうかは当人以外はわかるはずはないのだから。そして、マスコミや周囲の人が騒ぎ立てた噂だって、本当か嘘かもわからないのだ。
由宇子は自分の信念である、真実を伝えることが父の不貞により揺らいでしまっていた。萌を、父を、自分を、塾生を守るためにはこのまま罪を親子で背負っていくべきだと考えたが、萌の父が自分の目の前で娘のことを思い、自責の念も抱え、涙してる姿に良心の呵責に苛まれたに違いない。
人は嘘をついている相手に真摯に向き合われると、塗り固められた嘘の壁も一瞬にして崩壊してしまうのだ。それが志帆であり、由宇子なのである。
私たちはどちらを選ぶべきか…答えの出ない問いである。
優しさと厳しさを併せ持った勇敢な演技をみせてくれた瀧内公美さん、萌役の河合優実さんは思春期の多感な表情と雰囲気を見事に演じていらっしゃいました。
そして、岬の兄妹のお二人も全く違った一面を魅せてくれ、他のキャストの方も素晴らしく、この152分を堪能させてもらいました。