「人間の弱さを炙り出す傑作」由宇子の天秤 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
人間の弱さを炙り出す傑作
人間の弱さを炙り出した意欲作。
人は優しく、正しさを求めて生きていくのだけれど、儚く、脆く、臆病で、結局は嘘をつく。
他人の嘘には厳しいけれど、自分の身に何かあれば、自分もまた保身のために嘘をつく。
そんな矛盾を抱えて生きるがゆえ、結局は社会そのものが矛盾に満ちていく。
何が正しいのかすら曖昧で、誰にも分からなくなる。
はっきり言って、「答えはない」。
ついた嘘は、吐いた本人にブーメランのように戻ってきます。
主人公は誰より優しく、誰より正しくあろうとしたゆえに、一つの嘘が周りの人間も本人も深く傷つける。
その残酷さ。
そして、結局その状況を生むのは、冒頭にも書いた人間の「弱さ」なのだと。
この映画は「正しさ」をもち続けることが難しいこと、そして受け止める側次第ということを、刃物のように喉元へ突き付けてきます。
怖い怖い映画で、観終わった後もこの映画が頭の隅っこから離れません。
ひとつだけ絶対に「間違っている」「正しくない」と断言できるのは、当事者でもなんでもない第三者が、事件における加害者・容疑者の(事件とは全く関係していない)家族をネットに晒し上げ、リンチを加えるってことでしょうか。
「正しさ」を隠れ蓑にし、叩いてもいい相手と思った人間を果てしなく追い詰めて遊び愉悦に浸る行為は、卑怯そのものに過ぎません。
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