アイの歌声を聴かせてのレビュー・感想・評価
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心優しきAIに癒される感動巨編
期待してなかったわけじゃないけど、正直舐めてました。こんなに心に刺さる名作だったとは。
涙で前が見えません。
アニメのミュージカルってあまり得意じゃなかったけど、この作品は別格に良かった。
AIのシオンの歌がストレートに刺さる刺さる。
彼女の心からの歌がキャラクターひとりひとりの人生を変えていくのと同じように、見ているこっちをも幸せにしてくれる。
吉浦康裕監督の過去作品、イヴの時間とサカサマのパテマから通底してるのは"優しさ"。
中でも本作は、とにかく見る人全てを優しく包んでくれる素晴らしい作品だ。
イヴの時間で描かれたAIとの共存の可能性を更に押し進めた本作は、社会やヒトがいかにしてAIを受け入れられるかが丁寧に描かれている。
それもSF的理屈じゃなく歌を通しての感情で描ききっているのが素晴らしい。
難しい話抜きに、スッと心に入ってくる。
青春×AIのSFなんて、どこか小っ恥ずかしい気がしていたけど、見てるうちに笑って泣いて感情移入しきってしまう。
特にシオン誕生の真相を前に誰もが泣き崩れ、気付いたらこの作品を好きになってしまうだろう。
それくらいストーリーも素晴らしかった。
素晴らしすぎた。
AIの歌に心動かされるこの感覚。
初めてボーカロイドに触れた時を思い出した。
そんなエモさもあいまって涙が止まらなかった。
AIと人がこんな形で向き合える未来の実現を願ってやまない。
一途な心に感動的する
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主人公の高校生・サトミは友達がおらず、告げ口姫と呼ばれてた。
その母はAIロボットを女子高生・シオンとしてその高校に転入させる。
それで生徒らにバレなければ試験成功と目論んでた。
しかし転入後すぐに何故かシオンはサトミに、幸せか?と問うて来た。
以降もやたらサトミにそれを問い、何かにつけて歌を歌う。
またある時停止してしまい、4人の生徒にAIってことがバレる。
サトミは母のために黙っておいてくれと頼む。
やがてそこに連帯感が生まれ、5人は仲良くなって行く。
シオンは相変わらず変だったが、結果的に5人を幸せに導く。
ケンカ中のカップルは仲直り、高校未勝利の柔道君は初勝利。
さらにシオンは、サトミと幼馴染のIT天才の仲を取り持とうとする。
実際、2人は子供の頃は仲良かったのに長年話さなくなってた。
子供時代、サトミの母が作ったAI的たまごっちを、IT天才が改造。
IT天才は子供の頃から天才だった。
当時、その天才ぶりに目をつけたサトミの母だったが、
会社はそんなの子供の悪戯と相手にせずそれを消去した。
でもそのプログラムは、ネットを介して生き続けてた。
「サトミを幸せにして」は、当時のIT天才が命令したことだった。
また歌うことは、AI的たまごっちにサトミが教えたものだった。
プログラムは8年間サトミを見守り続け、シオンに乗り移ったのだった。
サトミが告げ口姫と呼ばれるようになったのは、IT天才を守るため。
それを仲間から聞かされて、IT天才はサトミへの愛情を強める。
しかしそんな時、会社によってシオンは回収されてしまう。
サトミの母の手腕をやっかみ、つぶそうとする上司が糸を引いてた。
5人はサトミの母とつるんで社に侵入、シオンを取り戻す。
そしてIT天才の手で、電子的に人工衛星に逃がされる。
会社もこの事件を表沙汰にしたくなく、一連の件は不問となる。
そんな中でなかなか恋が進展しないサトミとIT天才がいた。
でも衛星からシオンが歌を送って来て、二人はついに手をつなぐ。
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劇場で見た。すごくいい話で、かなり泣いた。
何に泣いたかって、サトミを幸せにという、シオンの一途な心。
AIと分かってても感動するものなんやなあ。
シオンのおかげで5人はそれぞれの悩みを解決したり、
心の壁を乗り越えたり、人間としてステップアップする。
これって性能以前に、最高のAIよな。ドラえもんみたいなもの。
でも8年間も一途にネットを介して監視されてたって考えたら、
ちょっとゾーッとする部分もあるんやけどね。
まあそれでもフィクションとしては素晴らしい内容やったと思う。
シオン(AI)の愛にほろりとする…。
音楽が良いと聞いて鑑賞。
AIロボットであるシオンが高校生のクラスにやってきたことで、変わっていく彼女たちを爽やかに描いたミュージカルの趣がある映画だった。
オリジナル脚本のこういうアニメ映画良いなあ。
個人的に印象的なのはシオンが人知れずずっとサトミを見守り続けてきたことがわかるシーン。
グッときてほろりとしてしまった。
登場人物たちのキャラクター描写がいまいち固まりきってないなあと感じたり、メインの声優演技がイマイチだなあ(シオンの土屋太鳳ちゃんは良かった)と思ったり、気になる部分もあれど、全体通して楽しく観た。
あと最新技術がほどよく田舎町の風景やそこで暮らす人の生活と溶け合ってる様子がリアルで良かったな。
現在とそのまま地続きの近未来という感じで。
ミュージカルだった!
SF大好き人間なので、好物なAIが登場する作品ということで興味をそそられ観てみることに。
と思って観たわけなんですが、、、実はミュージカルは苦手なんですね。。。
苦手な人あるあるだと思うんですけど、必然性があれば、ある程度は許容できるんですけど、基本的に何でここで突然歌い出すの!?ってなっちゃうんです。。。
私が受けいられたミュージカル作品は、全編をミュージカルで貫いたレ・ミゼラブル(ヒュー・ジャックマン)と歌と魔法の演出が圧巻だったアナ雪ぐらいかな、、、
歌で心揺さぶるのはいいんだけど、ちょっと強引にねじ込みすぎてる感があったかなぁと、、なので少し評価低めです。
だけど歌自体は上手いと思ったし、役者さんより声優さん派なんですが、太鳳ちゃんはじめ皆んな声があってたし芝居も良かったです。
物語もシオンがずっと昔からサトミを見守ってたというのはちょっと泣けてきた、、、だからこそミュージカル調がもう少しなぁと、そこが少し残念でした。
最近はAIが実生活で登場する場面も増えてきたのでSFがSFって言わなくなる日も来るのかなとか思いつつ、これぐらい高度なAIロボットは、まだまだ先になるのかな。。。
でも、生きてるうちに、こんな光景がどこかで見られる世界になって欲しいなとも思います。
視聴後エンドロールで土屋太鳳だったことを知り、2回目は歌声に集中し...
ビミョーな作品でどこを褒めればいいのか。
土屋太鳳が歌う部分が重要なのに、『龍そば』の中村佳穂さんとは比較するのも失礼な出来映え。AIを衛星にバックアップするのは攻殻機動隊のタチコマでとっくに既出のアイデア。シオンよりはタチコマの方がよっぽど可愛くて感情移入できる。サイバー世界の表現も細田監督に遠く及ばない。作画全般も新海誠作品がスタンダードになってしまった今日この頃としては凡庸。
そもそも脚本も書いた吉浦康裕監督はAIと言うものを理解できているのだろうか?学園ものとしても陳腐だし。
AIの制御が世界的に課題となっているのに、無許可で高校にAIロボを無断で実地試験に送り込む研究者、サトミの母の美津子も無茶苦茶で、頭を抱えてしまう。どう考えても、悪役扱いの上役の方がまとも。
サトミが好きなディズニー映画みたいな『ムーンプリンセス』も時代錯誤感が。今の小学生女子に好きなアニメを尋ねると『推しの子』と応えられる今日この頃に。
好評価に驚き
評価がまさかの4.0で驚いた。
『心が叫びたがってるんだ』みたいな青春群像劇をやりたかったのか、ディズニー映画みたいなミュージカル映画にしたかったのか、AIを軸にしたSF映画にしたかったのか、やりたいことが多いのはわかったけど結局は中途半端な映画になっていた感じ。
お母さんも詰めが甘いし、急に闇落ちしたかと思ったらすぐに立ち上がるしよくわからない。
後半の山場も結局は一企業のいざこざでしかなく、スケールもかなりしょぼい、
ステロタイプな悪役はもううんざり
全体を通じたストーリーは及第点。
ただ、贔屓したくなる主人公サイドにと小憎たらしい悪役サイドという描き方はもう古いよ。(ラストで改心といった救済もないし。)
使い古されたテンプレで話は組み立てやすいんだろうけど、そこを巧く乗り越えられるかどうかが佳作以下と以上の分岐点なんだろうね。
隠れた名作のように扱われてるけど、その向きにはどうしても疑念が残る。
ネットワークに神は宿る
人間はかくも仮想敵を生み出しては怖れる。
社会を豊かに、より世界の人々を繋げる為に生み出されたネットワーク。
AIもその一つだ。
私達の為に生まれてきたシステムを人々は脅威の存在と捉える。
ノンフィクションだけではない。
フィクションの世界においてもシステムは、人類を脅かす敵として描かれるパターンが多い。
古くは「鉄腕アトム」、人型ロボットアニメと共に育った世代でさえ、システムは人間を超えてはならない、同列であってはならないと考える者が多い。
日々、私達をサポートしてくれる機械に散々助けられておいて人類至上主義の元、機械を見下す私達は何なのか...
人の形を模した詩音の方が人間らしいと言える。
私達人類は劣等感を埋めるために敵を作り、相手を貶める。
悪性が本質の人類にAIを支配する資格は無い。
SF作家・神林長平先生の「戦闘妖精・雪風」
押井守監督の「攻殻機動隊」、「イノセンス」
そして人類の戒めたる「ゴジラ」シリーズを観てきた者として今作は、本当に見事な構成とテーマを持った作品だと感心した。
制作陣なりの「人とAIの共生」の想いを僅か100分間で良く描いたと思います。
詩音の奇行に振り回される日常パートを主軸に高校生の他愛もない会話やささやかな悩みを描きつつ、
更に日本人に馴染みの薄いミュージカルを上手く絡める。
観客を飽きさせないテンポも良く、間延びに感じるシーンが見当たらない。
人間の心のメカニズムは未だに明かされてない。
しかしAIのプログラムと私達の心に大きな違いは無いと思う。
他人を労るのもプログラムの一部と言うならば、
他人を貶める人間性より美しいと思う。
鑑賞後のカタルシスは絶大。
登場人物達全員に感情移入していた事に改めて気付かさせてくれる。
詩音の深い親愛に感謝を。
ミュージカル?
ピッタリが溢れる卑怯極まりない素晴らしさ
予告ティーザーだけの認知で、ミュージカルそんなに好きじゃないし鬱陶しそうだなとの印象、主役、声優じゃないしなあと観る気は無かったんですけど、音響が岩浪さんだし、丁度時間も空いたしということで鑑賞しました。 素晴らしさで溢れていました。
・配役がハマりすぎ。土屋太鳳の「抜け感」がAIキャラにピッタリだったし、福原遥はもともと上手いし、工藤阿須加しかトウマは出来なかっただろうと思わせる出来でした。
・ミュージカルの入り方、尺が絶妙。物語を適度に引き締めてくれるし、キチンと説明もしてくれていて想像が広がるしでミュージカルを避けていた自分でものめりました。土屋太鳳の素晴らしい歌、というか、シオンそのもの?、何だろう、ピッタリなんですよ。
・小ネタ満載で物語の進行に合わせて加速度的に気持ち良くフラグ回収で爽快。
・色んな名作のオマージュがたくさんで物語にピッタリピッタリと笑っちゃうくらいハマってる。
・柔道の乱取りのシーンのように動きと表情が美しい
・丁寧な音響処理 他にもいっぱい素晴らしいポイントがあるのですが書ききれません。一度しか観てませんが、これを書き込んでいる今、もうまた観に行きたくなってます。
結末というかAIシオンの種明かしには気持ちよく感動し泣いてました。 今季のアニメでは最良の一本だと断言します。
(追記) 二回目観ました。 最初から、「お!!!」「そうか!」「ああああ、これか!」と逆の答え合わせ(検算みたいなもん)で気持ち良かったです。実に奥が深い。 そして、ストーリーが頭にあるので時間が早いw 改めて感じたこと ・工藤阿須加の演技が、日野聡、興津和幸、小松未可子を向こうに回しても全く引けをとらないこと。すごい声優出てきたよ(笑)。 ・シオンの瞳がかわいい。 ・ミツコにはおしぼりを投げてほしかったなあw なお、そばかすとも似たような印象をもちましたが、あっちは、色んな大人の事情を匠の技で丸め込んでスマートにした作品、こっちは、監督の思ったままにやりたいことをやったらこうなった、という作品でしょうね。一回目を観た後にイヴの時間を観たことでそういう思いは強くなりました。
なお、七回映画館で観てます。ハマりました。
天馬トビオだ!
天馬アトムだ♥
サンダ○杉山?
図書館に『ムーミ○谷の冬』があった。
脚本で、結末が少し甘かった。
歌を交えて、ミュージカル風にしているのは認める。旧国営放送の女優さんの様だが、歌もうまいと思う。でも、合唱とかに、もっと発展すると良いのになぁと思う。
言うまでもなく、ロボット三原則をやぶるAIであって良い訳がない。ロボットが人間の為に存在するからには、人間には絶対に危害を加えてはならないと言う原則がある。
では
どうして、あるのか?
それは『ロボットは人間に危害を加える事が出来る』からだ。人間に近づけは近づくほど、人間に危害を加える事が出来るのだ。
『大量破壊兵器』と言う言葉を忘れてはならない。『人間をいやす為にロボットはあるべきだ』と言うのがアイザック・アシモフ氏の考えたロボット三原則。今から100年以上前に考えられている。その間に何人の罪なき人達が『兵器』に殺戮されたであろう。だから、
星間の所長が言う事は間違いない。
お母さんに言いたいね。男みたいに泣き喚く事は無い。会社が嫌なら、そんな会社辞めれば良い。
この母さん『間違って無かったのね』って、言語AI(たまごっち)を改造した、この少年の『バグ』が『シオン』を改善した。この母さん少し自信過剰の自己中だと感じる。
AIに対する考えは色々あるが、所詮『人間ありき』だと知るべきだ。仮に人間が一人もいなくなれば、AIの存在の意味がない。つまり、機械は絶対に人間になれない。AIに越されるか越されないか?を憂えるのではなく、AIには絶対に無い人生を、有意義に『過ごせるか、過ごせないか』を憂えるべきだと思う。
途中の脚本は破綻していたが、再生可能エネルギーを全面に出しているので、良いと思う。但し、星のシーンをもう少し綺麗に描くべきだったと感じる。
鉄○アトムはロボットの話では無い。人種差別とか戦争に対する平和を願ってのイデオロギーが隠されている。
やはり、恋愛は大願成就しない方が切ないと思う。また、高校生が『フライング・ダッチマンの奥さん』を好きになるのは、タバコをサッカー部の部室で吸う事よりも問題に感じる。
ネタバレあり
『シオン、幸せ?』
私なら
『命令ですか?』にしたい。
切り口も見事
自分向けではなかった
周囲の評価が高かったので期待値上げすぎた。
これは私向けではなかった。
福原遥さんは初めて聞いたけど声も演技もとても良かった。たまにこういう出会いがある。
セキュリティはザルすぎて唖然…。
シオンが(土屋太鳳さんの演技もあって)サイコ怖くて、全てのAI乗っ取ってクーデター起こして管理社会にして市民貴方は幸福ですかZAPZAPみたいな展開になるかと思ってた。人間に無理やり愛の歌を歌わせてこれが幸せですよ的な。(少なくてもAI乗っ取って侵略から地球を守るみたいなのはあるかなと思ってた)
シオンのサイコさに違和感を覚えたので、シオンは自分がAIだと信じている人間で、サトミの方が母親が開発したAIな展開なら好みだった。片親なのも、結婚もしてなければ子供も産んでないっていう伏線なのかなと。
ミュージカル仕立ては苦手ですが・・・
近未来。AI実験の為に内密に高校に送られた少女アンドロイドと、主人公高校生達の交流を描く物語。
アニメ好きですが、余り期待せずに鑑賞。ディズニーの影響もあるのでしょうが、アニメでミュージカル調の作品が増えて来ていて、少々戸惑っています。
しかし、この映画は思いの他秀作だったように思います。
告げ口をした・・・として仲間外れにされている主人公と、疎遠になっている幼馴染。
ギクシャクするリア充カップル。
そして、柔道部員。
彼等の心の壁や戸惑いが、アイの無私な歌声に溶かされている様子が、上手に描かれています。
そして、しっかりと伏線を張ったラストも中々の出来栄えで驚きました。
ただ、やはりAIに感情移入することに戸惑いを感じていて、自らの「感動」を抑制してしまったことが残念でした。
AIは人を幸せにできるのか?
これもまた良い映画でした。
歌が好きなAIロボット「詩音」が、ぼっちの主人公の悟美を筆頭に色々な人を振り回していく。
“幸せ”が何かも解らないまま動き回る詩音。
しかしいつしか悟美の周りには仲間が集まるようになっていた、のだが…
まるでディズニー作品のような半ミュージカルで、楽しくて、美しくて、その歌声には聴き入ってしまいます。
多少「いや無理だろ(笑)」的な強引なシーンも、上手く面白さに変えたり他の流れにもっていったり…
総じて凄く楽しめました♪
近未来という時代設定がカバーしている面もあると思います☝️
でも個人的にはもう一歩続きが欲しかったかな。
それにしてもロボットの進化と共に昔から続く“AI”の技術論争。
この作品ではAIは良い方向に描かれていますが、もし悪い方向に覚醒してしまえばまさしく「ターミネーター」になりかねない。
ひとつ間違えばそんな恐さもあるんだという事も考えてしまう作品でもありました。
大林宣彦なら。
うまくいっていない
1周年記念で、映画館で観た。
うーん。
登場人物たちを応援したい気持ちはあれど、脚本が気持ちが乗るようになっていないので乗り切らない感じ。原作・脚本・監督が同一らしいので、しがらみも弱く伝導率は高いはず。
となると、この結果は脚本をどうすればいいのかわからないまま混乱して書いている段階であり、まだ自筆できる段階にはないと感じる。
企画としての「ミュージックビデオ風の青春アニメを作りたい」意図が前に出すぎている。
ヒット作『君の名は。』をMVと解釈してしまったのか、アナ雪の歌先行のヒットを意識したのか、ぬるぬる動くダンスシーンと上手な歌があれば評判は付いてくると思ったのか、「青春映画」の支点と作用点に対して、力点がズレてしまっていた。そこに思いっきり力をいれて押しまくった感じ。正直、随所においてジュブナイルを構成する各要素への造詣が浅いと感じた。
以下、気になった点。
①誰を応援すればいい?
AIやアンドロイドがあふれている(?)近未来。
海沿いの田舎街は、ホシマというIT企業の企業城下となり、実地運用地域となっていた。この街に住む人の親の多くは、ホシマ所属らしい。
そして、ホシマの開発部長か室長クラスであるサトミの母が作った人型アンドロイド「シオン」が、違法スレスレの実地運用試験をするために高校に送り込まれる。5日間、人間とバレなければ合格で、大きな実績を積むこととなる。
しかしシオンは、登校初日から「自己紹介で、サトミに対して歌を歌う」など、人間らしからぬ奇行を連発。
サトミと少数のクラスメイトを前に、あっけなくAIであることがバレる。
が、サトミは「母親が頑張ってきたから、この試験を成功させてあげたい」と、シオンがAIであることの隠匿をクラスメイトたちに頼み込む……
というあらすじなのだが、この時点で視聴者はけっこう感情が迷子。
優秀であるはずのサトミの母は、なぜこんな強硬手段に出たのか?
すでに誰の目から見ても欠陥品だが、サトミの母はそれを報告してほしくないのか?
そうして欠陥を隠蔽してまで通した「成果」で、優秀な技術者であるサトミの母は喜ぶのだろうか?
「ちくり魔」と避けられるほどに生真面目なサトミも、それでいいのか……?
第一、肝心のシオンは「自身がAIであるとバレないこと」を重視する気持ちが見えない……
(それにはいろいろ理由があることが後で判明するのだが、それもつながりが微妙)
物語は「妥当性ある理由で、必死に頑張っている人を応援したくなる」ものだが、妥当性に対する疑義への灰汁取りが不十分で、そもそも必死に頑張っているとも見えないので、心情的な同化が難しい。それは感情的な振れ幅の縮小と、それが引き起こす感動の打点の低さに繋がってしまう。絵はそのままでもセリフを少し変えるだけで、かなり違うと思う。
②人物の解像度
2021年に発表された作品なのだが、サトミが「だわ」「わよ」口調なのはターゲットから反感を買うだろう。設定は近未来だから限りなくリアル寄りにしてほしいのに、昭和や平成一桁の生まれが考える高校生、なのだ。内部で誰も突っ込めなかったのなら、制作体制にも問題がある。
ごっちゃんの「何でも80点止まりの自分」を悩みとするのも、平成の頃ならばよく使われた悩みだが、現代で共感を呼ぶのは難しい。SNSで下層の声が標準化した今、「何でも80点止まりな俺」は少年少女にとって嫌味だからだ。アヤの恋愛脳も、「そもそも魅力的な、誰もが好きになるごっちゃんを、粘り強くちゃんと好きだった」という解釈にしかならず、主要キャラの一人の格とするには薄い。ごっちゃんとアヤは現実にはいないこともないが、それをリアルとして持ってこられても多くの観客にとって「自分とは違うな……」という、歓迎されないクソリアリティ次元にとどまっている。
サンダーはわりといいキャラしてるのだが、シオンの疑似カップリング相手がサンダーというのはけっこうやめてくれな展開。サトミとトーマが番いだから、シオンの相手役がいないというのはそうだし、まあサンダーならシオンに恋するだろうなとは思うのだが……キャラの格的に苦笑いな落としどころにとどまってしまっている。勢いで疑似カップリングするところでは無かった。
そして、サトミとトーマが物語開始~最後まで何の捻りもなく相思相愛なのは判断ミス。boy meets girlをやったつもりなのだろうけど、実際は2組のboy has met girlがあって、こじれていた文脈を、わけがわかってない珍奇者シオンが乱入して歌いまくったらなんとなくそれぞれ勇気が出て元通りになった……的な話では、ドラマが薄いのだ。
また、サトミ母の研究を失敗に終わらせたがる支社長と主任が意味不明。「(サトミ母は)男社会なのに出世したから、敵が多くて」の一言説明で片付けられてしまうが、競合他社が不当な妨害工作をしかけてくるならともかく、同社の上と下の人間両方が(自身の評価向上にさえすんなり繋がらない)悪意からひたすら脚を引っ張ろうとしてくるのは、大人の描き方として粗い。どうしてもこの二人を悪役に書きたいのなら、「ポンコツで欠陥だらけのシオンを、改竄してパーフェクトと喧伝する人達」にして、サトミチームやサトミ母のシオンと真摯に向き合う怒りが爆発する……系だと思うが。
③どれがやりたかったのか
様々な青春系ヒットアニメ映画を分析すれば「ボーイミーツガール」「田舎」「夏」「ちょっとしたSF」「歌」「わからず屋の大人たち」がアルペンレースの旗のように浮き出てくる。アニメとして、美少女がぬるぬる踊るのが勝ち筋というのもある。ただ、『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』も『バブル』もそうだが、それらの要素を均等に並べてみただけでは焦点がぼやけて相乗効果を生むことはない。本作は結局サトミとトーマをやりたかったのか、サトミとシオンをやりたかったのか、シオン中心をやりたかったのか、田舎ムービーをしたかったのか、AIムービーをしたかったのか、ミュージカル風をしたいのか、そして後半突然「無力な子供と強い大人たち」が強調されたり、幹が不在なまま枝葉が伸びてしまっている。
④ミュージカルではないのにミュージカルする
突然歌って踊り出すミュージカルは、心象や情景の投影だ。だから、ミュージカル作品に比喩的時空間としてミュージカルシーンが登場するのは何も問題はない。しかし本作は「すべて、現実で起きている話」として進む中で、独自進化を遂げてしまっているシオンはともかく、トーマもサトミも「そこでは歌わんやろ」というシーンで突然歌い出す。これではミュージカルでも物語でもなく、ただの商業企画の人格乗っ取りだ。あまりの強引さに、ちょっと恥ずかしくて身もだえしてしまうところがあった。アニメーターさんや声優さんは頑張っていたと思うが。
キャラ設定と脚本さえもっとよければなあ、という印象。
動画の力や歌の力を信じてもいいが、だからといって、脚本(構成・キャラの言と動・迫真性)の力を軽んじない方がいい。
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