「心に沁みる映画だった」ハッピー・オールド・イヤー EMAさんの映画レビュー(感想・評価)
心に沁みる映画だった
ただ捨てて物を少なくする事が重要ではない。
それが無いと未来を始められない物、
それを捨てなきゃ新しく歩き出せない物、
どちらも大切な物。
その区別をつけてしっかり実行する事が断捨離なんだね。
勝気な主人公ジーンとその家族の心の奥に居座る深い悲しみのくだりにロックオン。
皆、父が好きだった。悲劇の前も後も。
父のピアノを捨てる事を頑なに拒否する母。前に進む為に捨てようと決心するジーン。とても身勝手なようにも思えるけど、その心の傷の深さに心が痛んだ。
お母さん、そんなにピアノを捨てたく無いなら、子供達がそのピアノを大切に思えるようなあなた自身の生き方を子供達に見せてあげるべきだったのでは?...なんてね。強い母を求めすぎかな?
ジーンの元彼エムの言葉にもグサリときた。
「君は、自分の為に謝っている」
「本当に申し訳無いと思うなら謝ってほしくなかった」
どちらのセリフにも心当たりがある。突き詰めれば謝罪によって少しでも救われたい自分も、謝罪した時点で加害者と被害者の立場が逆転するような錯覚も。
ある意味、ジーンの父は正しかったのかも知れない。娘ジーンの電話に一言も発しなかったのは、故意か否か。真相は分からないがこの一件で、ジーンは長年のモヤモヤした想いと決別する事ができたのだから。
ただ、いさぎよくとはいかない。バラバラにした唯一の思い出の写真を結局捨てたのはホテルの清掃係の人だ。ジーンの部屋を最後に無にしてくれたのは包容力抜群の兄ジェーだった。
自分で捨てれない時は人の力を借りてもいいよ。
捨てるモノ、置いておくモノ、心の中のモノも整理して元気出さなきゃね。
エムは素敵な男性だった。けれども前にジーンが彼を選ばなかったのもわかる気がする。
(今カノ?)ミー、落ち込むことは無いわ。自らでないにしろ元カノのTシャツを今カノに着せてる男性なんて、どんなに優しくてもあなたに相応しくない。
色々な人の心の機微が網羅された繊細な映画。監督さんてどんな人だろう。もう一度観てみたい。また違う捉え方になるかもしれない。そんな映画だった。