「【"君が捨てたモノの中に大切なモノは本当に無いのかい?" 若き女性が、軽い気持ちで始めた断捨離をする過程で、様々な経験をし、イロイロな事を学ぶ姿を描いた作品。】」ハッピー・オールド・イヤー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"君が捨てたモノの中に大切なモノは本当に無いのかい?" 若き女性が、軽い気持ちで始めた断捨離をする過程で、様々な経験をし、イロイロな事を学ぶ姿を描いた作品。】
-私の枕頭には、多数の本の側に幼き子供達の写真を入れた写真立てがある。
五百冊の本、二百枚のCDを数年かけて断捨離して来たが、家族の写真だけは一枚も捨ててはいない・・。-
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◆スェーデンでミニマルライフスタイルを学んだデザイナーのジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、母と兄と暮らす家を大晦日までの1ヶ月で、デザイン事務所にリフォームするために、戸惑い、反発する2人を横目に大規模な断捨離を実行して行く・・。
◆印象的なシーン(前半はやや否定的にジーンの行為を観ています・・。)
・本屋で、"本を買うとモノが増えるから・・"と内容をスマホでパシャリ!とジーンが写すシーン。
-それは、広義で見ての窃盗だよ!今、本屋さんは君の様な行為をする人達が増えて、大変なんだよ!-
・CDを"ストリーミングできるから・・"とジーンがポイポイとCDを捨てるシーン。
-あのね、君が自分で買ったCDならば、捨てるのに異論はないが、友人ピンクから贈られたCDを捨てるのは、どうなのよ・・。
それから、アルバムは全曲通して聴くのが、通常スタイルでしょう。アーティストは曲順にもこだわっているのだよ。マア、今では好きな曲だけ”効率よく”聴くのが普通のようだが・・。-
◆自分の勝手な都合で、連絡を取らなくなったエムのカメラを彼の元(すぐ近く)に送り届けるが、受取拒否で戻って来るシーン。ジーンの顔色に動揺が隠せない・・。
ー 後ろめたかったのだね・・。ー
・渋々、自分で届けるとエームが優しく赦してくれる。エーム、優しいなあ、と思ったら再後半、エームからキツイ言葉が・・。又、エームの傍には”あるTシャツ”を着た可愛らしい彼女ミーがいる。
- この辺りをナワポン・タムロンラタナリット監督はサラリと描いているが、後半、このシーンの”効かせ方”が絶妙に上手いのである。-
・片づけは進むが、難物ジーンが幼かった時に家を出て行った父親が弾いていたピアノが残る。母親は頑なに処分する事を、拒むが・・。
- 母親を兄に連れ出してもらい、古物商に売ってしまうジーン。激しく怒る母親。ヘッドフォンをして、その罵声を遮るジーン。けれど、自分たちを置いて出て行った父親には、キチンと電話をかけて確認していたものなあ・・。父親はジーンの声が分からなかったようだし。それが、ジーンが父親と決別する決意を持たせたのだろう。哀しいね。母親の気持ちは考えなかったのかい? ジーンの仏頂面がドンドンひどくなっていく・・。-
・エムがフィリピンに行くことになり、ジーンとミーとで食事をするシーン。エームから、段ボール箱二箱分のジーンの私物を渡されて・・。
- エム、矢張り怒っているのかな・・。-
・ミーが着ていたTシャツ(もともと、ジーンのものであった・・)をジーンに返しに来るシーン。そして、エムと一緒にフィリピンには行かないと告げるシーン。
- 涙を流して、詫びるジーン。自分が余計な事をしたばかりに、エムとミーの関係性を壊してしまった・・。ー
・エムが最後の荷物を整理している時に、ジーンに言い放った厳しい言葉。
”お前は、俺に詫びているのではない。自分を慰めているだけだ・・。”
◆そして、大晦日 ジーンはホテルに籠り・・。
翌朝、ベッドには大切にしていた母親と兄と自分とあのピアノを父親が楽しそうに弾いている姿が映っている家族写真がちぎられていた・・。
<劇中、モノには様々な想い出が残されていると言う制作陣の思いを込めた、
”ジーンの友人からの昔奥さんになる人と撮った写真を探して欲しい”
という物語を絡めたりして、
『断捨離とは単に、モノを効率的に処分する事ではなく、そのモノと関わった人々との関係性、自らの思い出も”整理する”ことである・・。』という大切な事を描いた作品。
新年、過去の思い入れのある写真、品々を整理し終えたジーンの姿をどう見るのかは、観た人次第であろう・・。>