劇場公開日 2020年9月19日

「VTuberだからこそ語れる物語」白爪草 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0VTuberだからこそ語れる物語

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

VTuerの電脳少女シロが主演の作品なのだが、「VTuberが映画に出ても安っぽいCG作品になるだけなのでは」という事前のイメージを完全に覆された。想像よりも遥かに面白くて、上映時間中、画面に釘付けにされてしまった。
舞台はとある花屋のみという、ワンシチュエーションの会話劇だ。花屋で働く少女の元に、両親を殺したことで刑務所に入っていた双子の姉が会いに来る。この双子役をVTuberが演じてるわけだが、当然のことながら顔は全く同じ。本当は両親を殺したのはどちらなのか、二人の会話の応酬は二転三転を迎えて、観客はどちらがどちらなのかわからなくなってくる。そこに心理カウンセラーによる洗脳の話も加わり、同じ外見だから入れ替え可能な双子の話に加えて、中身の精神すら洗脳によって、操作可能であることが示唆される。
VTuber主演で、外見と中身の入れ替え可能性を論じる物語を描くというのは秀逸なアイデアだ。生身の役者が一人二役を演じても同じ物語を語れるだろうが、テーマの説得力が異なってくるだろう。VTuberだからこそ上手く語れる、エッジの効いた技ありの一本だ。

杉本穂高