「クロエ・グレース・モレッツの少女時代と見紛いました」ヒトラーに盗られたうさぎ グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
クロエ・グレース・モレッツの少女時代と見紛いました
原作はジュディス・カーという世界的絵本作家の自伝的小説だそうですが、作家のことも作品のことも何も知りませんでした。
ただ、偉大な創作の業績を残された方の10歳頃の感受性という視点で観てると、どのシーンにも意味があるように感じられ、その後どう成長していくのだろうという想像力も掻き立てられますから、意外と見応えがあります。
兄妹揃って出来が良いので、最近はあまり使われなくなったことわざを思い出しました。
『栴檀は双葉より芳し』
せんだんはふたばよりかんばし、と音で先に覚えて、漢字は後から確認した記憶があります。
物語は、ヒトラーに批判的な文筆家の一家が、ナチの政権奪取をキッカケに、その迫害の手からスイス、フランス、イギリスへと逃がれていく過程を描くものです。その環境の中で、少女の豊かな感受性が後の創造性に繋がることを伝えています。
ナチの残虐性とか犠牲になった不幸な人たちの姿は、たぶん意識的に映像化しないように演出しているので、ストーリー展開にはそれほど劇的な起伏はないし、まぁなんてことはないです。
それでも最後までスクリーンに惹きつけられたのは、主役の少女の知的な無垢と物怖じしない明るさと健康的な軽やかさがあったからだと思います。走ってるシーンのスピードや男の子にアクロバティックな運動をコーチしているあたりは、本当に運動神経の良さが感じられました。
顔の雰囲気はクロエ・グレース・モレッツのようでもあり、まったく似ても付かない作風なのに、一瞬『キック・アス』を観てるような気さえしました。
原作絵本や作者への思い入れのある方はもちろん、そうでない方がご覧になっても、主役の少女の健康的な生命力からちょっぴりエネルギーを貰えます。
観てよかったな、と思える後味の良い作品でした。