ヒトラーに盗られたうさぎのレビュー・感想・評価
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拍子抜けするほどのポジティブ感が、コロナの時代にちょうどいい
ナチスドイツ期、ユダヤ人少女が家族と共に亡命して外国を転々…と聞けば深刻で重い話かと身構えそうだが、拍子抜けするほどポジティブな感覚が優勢だ。原作は絵本作家ジュディス・カーが少女時代の体験を基にした小説。父親がヒトラーへの痛烈な批判を展開してきたせいで弾圧される前に、家族共々スイス、仏、英国へと移り住む。 アンナ役は候補約千人から見出され映画初出演で主役を射止めたリーバ・クリマロフスキ。「キック・アス」の頃のクロエ・グレース・モレッツか、ジュリエット・ビノシュの子供の頃を思わせる利発そうな顔立ちで、兎のぬいぐるみや住み慣れた家など大好きなものに別れを告げる姿が切なくも愛らしい。外国の言葉で当然苦労するし、貧しい暮らしも変わらないが、前向きに努力して克服する。受難の日々というより家族総出の冒険生活風で、そんなポジティブさがコロナの暗い時代にちょうどいい。あと、スイスの山村からの景観が絶品。
少女のみずみずしい視点が貫かれた秀作
そのしなやかな感触に心奪われた。ナチスが勢力を拡大する時代を描いた作品なのに、ここには軍服を着た兵士の姿は登場しなければ、目の前で人が殺されることもない。国を転々とする主人公にとって、祖国ドイツの状況は手紙や電話によって知らされるのみ。かくも本作をあくまで少女のみずみずしい「旅人」としての視点で貫き通したところに感服する。これは彼女が何を見つめ、何を感じ、いかなる旅路を経て少女期を送ったのかを、感性豊かに描いた作品。絵本作家ジュディス・カーの作品に親しんで育った人にとっては感慨もひとしおとなるはずだ。いかなる異世界にも意欲的に飛び込みつつ、同時にその文化を客観的に見つめようとする意識。どんなに暮らしが困窮しようとも、家族がいつも共にあろうとする姿勢。そのすべてに彼女の生きざま、そして絵本作品に通底するものを感じる。度々口にする「アウフヴィーダーゼーン(さようなら)」という言葉が胸に残った。
棲かを追われた少女
ドイツベルリンで 裕福に育つ少女アンナ 政権がヒトラーに変わり行く時代 ユダヤ人の父 仕事がらナチスに批判する記事を執筆 したためベルリンの棲みかを 離れることになる そしてスイス、フランス、最終的に ロンドンに行くことになる 賢いアンナは何処の国に行っても 新しい友達を作って学校生活も うまく順応していく…逞しさ。 アンナは自由に物事を考えることが できるのは資質もあったけど 幾つもの国街で暮らしたことも 貴重な体験になったはず 常に弾圧を受けてきた ユダヤ人の柔らかさの様にも感じた
「象徴」とするには微視的に過ぎないか。
周知のとおりのナチスによる迫害を免れるために逃避行を余儀なくされたユダヤの人々は、決して少なくありません。 充分な計画や準備に基づくものではない訳ですから、持ち出すことのできる資産も限られたことでしょう。 なかには、換金する暇もなく、経営していた工場やその設備をそのままに、着の身着のままで逃げ出した人もいたことでしょう。 そんな状況では、ウサギのぬいぐるみを持ち出せなかったことが、どれほどの痛手になるのか、評論子には、にわかには理解し難いところです。 もちろん、少女にとっては、かけがえのない大切なものであったことでしょう。 しかし、生業の基盤までうち捨てて逃げなければならなかった人もいたであろうことにも考えを及ぼすと、ナチスの侵奪の象徴とするにしても、「ウサギのぬいぐるみ」は、一本の映画の素材として取り上げる…ナチスによる迫害の「象徴」とするには、あまりにも微視的に過ぎるように思われて、仕方がありません。 その根幹的な一点で、本作は、すでに残念な一本となってしまいました。評論子には。
主人公が光ってた
嫌な時代の嫌な話なはずなんだけど、子供達の前向きな姿勢に明るさを感じることが出来た。実在した本人は大変な苦労があっただろうけど。 やはりナチスとユダヤの温度感が今ひとつわからないけど、十分楽しめた。 アンナ役の子はかわいいし、自然で演技らしさを一切感じさせなかった。 不思議と爽やかな気持ちになる映画だった。 評価:3.6
うん、つらくも、よかった、
迫害を逃れて西へ西へと移動する家族の話。 つらい時代のひと家族の話ではあるけど、つい最近まで存命だった人の実話に基づく話だった。 移動を余儀なくされつつも前向きに生きていくストーリーで見入った。 収容所の話でもなく戦場の話でもなく、それでもこういう時代のこういう家族、人もたくさんいたんだろうなー。 それしてもしかし、当時のドイツ、ヨーロッパも狂気の時代だったんだな、と。 あんな時代のあんな愚策の政策は二度とあってはならない。
逆境の中のサクセスストーリー
迫害の為に家族で、ドイツ→スイス→イギリスと家族で逃避したお話。 大変だったのは分るが、 やっぱり逃げる事が出来る行動力とお金と知恵。 これがあれば、何でも可能だと思った。 ある意味、羨ましい。
ウクライナからの避難民に是非見てもらいたいとても暖かい素敵な映画
カロリーヌ・リンク監督(アカデミー外国語映画賞受賞のドイツ人)による2919年製作のドイツ映画。原作はジュディス・カー(ユダヤ人でドイツ生まれの英国人絵本作家兼イラストレーター)の自伝的小説。
ナチスが政権を担う選挙直前に、ドイツ・ベルリンを脱出するユダヤ人中産階級家族の物語。父親はナチスに批判的な演劇批評家らしいが、このタイミングで、殆ど着の身着の儘で、
家財と家政婦を残して、ドイツを脱出するのは、凄い決断力と思った。9歳の主人公少女も持っていけた縫いぐるみは、沢山ある中で唯1つだけで、お気に入りのうさぎの縫いぐるみも置いていくことに。
この映画のために1000人ものスカウトから選ばれたスイス生まれの新人らしいが、主人公を演ずるリーヴァ・クリマロフスキの全身で示す演技や表情が何とも可愛らしく、素晴らしかった。そして男の子に負けずに元気一杯で、綺麗な横転もやってのける。多分監督の演出も的確なのだろう。
家族は最初は、スイスの郊外へ行く。ドイツ語圏なのだが、方言の違い、更に男女の明確な区分け等文化の違いに、主人公リーヴァは大いに戸惑う。男の子達にもいじめられる。可愛く気になる存在だかららしいのだが。ただ、とても仲良しのお友達(ハナー・カンピヒラー)もできた。この娘が主人公と対象的に少しおっとりとしたタイプだが、また可愛らしい。
スイスにはすっかり馴染んだものの、父親が仕事が見つけられず、家族は今度はパリに行くことになる。家も、お風呂・トイレは共同で前よりずっと狭くなる。少女の視点と重なるパリの街並みの映像がとても素敵だ。そして、さっぱり分からないフランス語と10歳となったリーヴァーは公立学校で格闘することになる。父親は仕事は見つかったが、収入は少なく、家賃は滞納、子ども達も噴水の投げコインを一生懸命に攫う。
母子3名は、父がさんざん貶した演出家(ドイツから亡命も富裕)の家に招待される。豪華な食事に美味しそうなお菓子、沢山の衣服や本(困窮者への寄付予定だった)のお土産までいただき、母も演出家妻とピアノ連弾(ブラームスのハンガリー舞曲)が楽しめ、父親は物貰いかと怒ったが、3人は大満足。環境に素早く適応する、妻および子供たちの逞しさを感じさせた。また、ラテン語は必須と考える、仏に来たからには関心はナポレオン、そして即興でピアノ連弾ができるというユダヤ中産階級の文化的な豊かさも、感じさせられた。
フランス語に最初は苦戦のリーヴァも作文コンテストで優勝し賞金ゲット、兄もクラスで成績は1番。父親も、英国で脚本が認められ、今度は家族で英国に渡ることとなる。さっぱり分からない英語であるが、主人公にはすぐにわかるようになるとの自信ができていた。母親もどんなチーズが食べられるか楽しみと言う。父親の様々な場所に住めることは良いことという前向きな首尾一貫とした楽観論がなんとも頼もしかった。
時節柄、ウクライナから国外に逃れてる多くの母子のことが思い浮かぶ。言葉や文化の違いに戸惑うだろうが、寧ろ可能性が広がるかもしれない。そういった意味で、ウクライナ避難民の子供たち親たちに是非見て欲しい映画と思った。困難に思える異国での生活体験は、実は潜在的才能を引き出す英才教育なのかもしれない。
製作はヨヘン・ラウベ ファビアン・マウバッフ、原作はジュディス・カーの自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」、脚本はカロリーヌ・リンク アナ・ブリュッゲマン。
撮影はベラ・ハルベン、編集はパトリシア・ロメル、音楽はフォルカー・ベルテルマン。
出演は、リーヴァ・クリマロフスキ(娘)、オリヴァー・マスッチ(父、「帰ってきたヒトラー」でヒトラー役)、カーラ・ジュリ(母)、マリヌス・ホーマン(兄)、ユストゥス・フォン・ドーナニー(叔父)、ハナー・カンピヒラー(お友達)。
逃れる人々のその先での苦しみとは
レビューのタイトルから、この映画がさも逃げた先に待つ苦しさに悶えて終わるかのような映画だと想像させてしまったかもしれない。しかし、映画にはコミカルな雰囲気がところどころに出てきて、愛らしい子供たちがいる。映画の原作は絵本で、ユダヤ人の原作者の実体験をもとにしている。強制収容所の体験や隠れて暮らすユダヤ人が主点となった映画は多いが、逃げた先の生活を舞台にした映画は観たことがなかったので新鮮だった。ヒトラーはうさぎを盗った。しかし、盗られなかったものもある。苦しみの中で翻弄されながら、生きていく子供たちの生活は何が盗られなかったのかを考えさせてくれるだろう。
ネガティブも、開き直ればポジティブ
大戦前のパリは、魅力的だ。パリが世界で最も輝いた時代、華麗で、自由を謳歌し、それでいて妖しげな魅力を放つ。様々な理由から、暗黒の時代直前のパリが一番良好きだ。
そんなパリでアンナ一家は、貧乏な暮らしを強いられる。懐に余裕があったら、さぞかし華のパリを堪能できただろう。しかし、彼らはパリで貧乏を楽しんだ。ここまで来ると、ファンタジーの世界だ。本当は辛いパリ生活だったかもしれないが、幼いアンナは、初めて住むパリを潜在的に美化してしまった。
子供の視線だから柔らかく優しい。反ナチのような強烈なメッセージはなく、ナチのおかげで、家族の絆が強まり、ヨーロッパ中を旅した、そんな夏休みの家族旅行のような雰囲気を醸し出す。
ラストのパリからイギリスに引っ越す船の中では、新しい生活への希望と好奇心が、気持ちを高揚させる。ホロコーストを忘れてはならないが、同じように希望を捨てずに生きる事も忘れてはならない。絵本作家の視点は正しい。
子供目線戦争映画の秀作!
ミツバチのささやき、戦場の小さな天使たち等、子供目線の戦争関連作品には傑作が多く、まぁ確かに戦争の悲惨さを子供目線にすることにより緊迫感や悲惨な話ばかりではない戦争映画に出来る利点は存在するが、にしても戦闘シーンは登場しないものの本作の適度な緊迫感と亡命家族の苦しい日常の描写は素晴らしい!
戦争中のユダヤ人家族の逃避行物語ですが、ほのぼのしてます❓‼️
それほど悲惨では有りません、寝落ちしそうですが、実話なので、デフォルメが無くて好感が持てます。 前向きな気持ちがあれば、こんなに生きることが素晴らしい、そう思わせてくれる少女の姿でした。 生きるのが苦しいと思う人は、是非。
落ちぶれても上流階級
絵本作家ジュディス・カーはお茶の時間に来たトラの作者として知っていた。子供の頃に読んだ本ではなく、NHKのアニメ版を見て知り、4歳になる娘もお気に入りの作品となっていたので、その作者の伝記映画として興味深かった。主人公のアンナを中心に家族全員で環境や経済的な低迷にも順応しながらも、腐る事なく逞しく生きていくメンタルの強さに勇気や感動をもらえる内容になっている。心にエネルギーが補充される映画は素晴らしい。
名子役? 小さな大女優?
主役の子が良かった! これからも見続けたいリストに入ったけど、ドイツの女優さん、追いかけられるか? 予備知識なかったんで、フランスがナチに占領されて…とか思いながらドキドキ…(笑) 今もナチもどきがはびこる世の中で尊いものは、何か、そこを考えるよい映画。
先手の行動は大事です
タイトルにヒトラーの名前が付いているので、惨虐シーンが多いのかな?と思っていましたが、そんな心配は不要でした。 基本的に、家族の逃避行の話しなのですが、この一家はお父さんの危険予知力が高いので、先手の行動で切り抜けます。 お父さんの決断力に感心しました。 だからなのか、作品としては淡々と話が進むと言うか、盛り上がりに欠けると言うか・・。 まあ、作られたストーリーではないので、無理して盛り上げる必要はないですね。
2本立て1本目。ユダヤ人一家亡命物語。 これでもか、の戦争、ユダヤ...
2本立て1本目。ユダヤ人一家亡命物語。 これでもか、の戦争、ユダヤもの。そもそもどうしてユダヤ人ってそんなに迫害されるの?ちょっと調べるとやっぱりこれもまた宗教絡みっぽい。ユダヤの人って、「我々は選ばれし者」とか思ってるの?そうは思えないが… 主人公少女はちょい生意気。母親が美人。兄はイケメン、ブレイクの予感。物語は淡々と進みます。大きなヤマはなし。最後はみな逞しくなっているのが良かった。人間は強い(笑)
【多くの”サヨナラ”を乗り越え、学び、生きるユダヤ人家族の姿。そして、聡明な夫婦の庇護の下、マックスとアンナが逞しく成長して行く姿を描いた作品。】
ー 1933年、ベルリンから物語は始まる。ナチスドイツが、国を支配し始めた時期である・・。- ■感想 <Caution! 内容に触れています。> 1.今作では、ナチスの愚かしき行為は直接的には、描かれない。だが、ケンパー一家を始めとした、ドイツ在住のユダヤ人への怖ろしき足音が聞こえてくる・・。 2.マックスとアンナの父で、著名な批評家でもあるアルトゥアが兄、マックスと可愛らしくも勝気な女の子アンナに告げる言葉。 ”ヒトラーは、でたらめな事を言って、ユダヤ人を貶めている。だから、私たちは証明するのだ。誠実で、勤勉で、寛容なのがユダヤ人の長所であうことを・・” 3.アルトゥアとピアノ奏者の妻ドロテアの深いお互いへの信頼と、聡明さが印象的である。 彼らは、常に一歩先を読んで行動する。 子供達にとっては辛いベルリンでの裕福な生活を捨ててでも。そして、スイス、フランス(ここは、少しハラハラする。だって、ナチス・ドイツは・・)を亡命先に選び、徐々に貧しい暮らしになって行く中、誇りを忘れず行動する。 何より、アンナがスイスでも、フランスでも、言葉に苦労しながらも、現地の子供達に溶け込んで行く明るくお転婆な姿が、可愛らしい。 スイスアルプスの美しさも、画に華を添えている。 4.アルトゥア夫妻が、常にマックスとアンナの教育を重視している姿勢が、心を打つ。その結果がエンドロールで流れた、その後の二人が成し遂げた事に繋がっているのである。 5.家族がお互いを思いやる姿 ・ピアノが弾けない妻ドロテアに、クリスマスプレゼントでアルトゥアが渡したプレゼント。そして、夫が厳しく批評した演劇作家の家に招待されたドロテアと作家の妻の連弾シーン。 ー アルトゥアは、聡明だけれど、頑固でプライドが高い所も、人間味を感じる。- ・パリで、空腹のため機嫌が悪いマックスをアルトゥアが連れ出し、カフェでエスカルゴを食べさせるシーン。 - 異国の地の、美味しきモノを食べさせる。これも、教育であり、父親の愛情表現でもあろう・・。- <引っ越しは辛い事だけれども、聡明な夫婦が子供達の命を考え、素早く行動した事。 その際に、子供たちへの教育も忘れていなかった事。 結果的に子供たちは、フランス語も、英語も話せるようになるんだよね。 マックスとアンナが、辛い時代環境の中、逞しく成長して行く姿が、素晴らしい作品である。> <2021年2月28日 刈谷日劇にて鑑賞>
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