ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
全70件中、21~40件目を表示
赤ん坊からしてみれば
望まれて生まれてきたわけでもなく、父親は反社、母親はその愛人の売春婦で父親を殺した張本人。
父親の本妻は自分を血眼になって捜し、その件で死人も出ている。
また、死産した実子の代わりに育てたいと言ってきた善良そうな夫婦を逮捕し前科持ちにした刑事自身が、一番可愛い盛りの時期だけ自分を養育。
物心ついたときには、このクソッタレな事実を全て知るだろう。子供は馬鹿じゃない。
母親も、生まれてきてくれてありがとうだ???
ただただひたすらの地獄の環境に産み落とし、よくもそんな台詞が吐けるな?
母親も父親も父親の本妻も刑事も皆憎い。
2つの殺人事件の原因は自分、死産夫婦が前科持ちになった原因も自分。自分も憎い。
………と、赤ん坊が未来に犯罪者になる暗い第二作目が出来そうな話でした。
疑似家族メンバーと母親との心の交流の描き方は繊細で良かったです。こちらだけの話にしてくれたほうが、もっと心に染みたと思います。
とはいえ、ずっと、刑事の不可解な行動が気になっていました。
その答えが、ラスト付近で判明します。
見たこともないような柔らかな表情で刑事が幼気な子を遊ばせている海辺のシーン。
つまり、そもそも赤ちゃんポストに入れた刑事の真の狙いは、ブローカー逮捕という手柄のためなんかではなく、引き取り手である夫婦と実母双方を逮捕することで、彼らから合法的に子供を奪い取り、自分が母親ごっこすることだったのです。
しかも、まるで善人のように、赤ん坊の母親宛てに手紙を書くという図々しさも加わって、元々この刑事に良い印象がなかったところ、最悪まで落ち込みました。
そもそも母親から赤ん坊を委託されたのも驚きだったのですが、そう仕向けるのは簡単だったでしょう。
お陰で、ラストシーンで嬉しそうに集合場所に駆けていく母親の姿が、騙された哀れな人にしか見えませんでした。
淡々と
パラサイトや万引き家族を思わせる映画でした。
ストーリー的は面白いと思います。母親の本当の気持ちが序盤うまく隠されていて、すごいって思いました。
女性なら特に母親の方なら直ぐに気づいてしまうかもですが。
全体的に、あまり場面展開が無く、同じような話が淡々と繰り返している感じで、寝不足もあったせいか睡魔に襲われました。(ちゃんと睡眠取っとくべきでした)
題名にブローカーというキーワードが入っており、前半でヤクザとかも登場してくるので、ドキドキするようなシーンがあるのかと思いましたが、全くなかったです。
あと最後のシーンがよく分かりませんでした。
ソン・ガンホが演じるハ・サンヒョンが最後に近所の知り合いの息子(名前を忘れました)に「あいつらは俺を必要としない。俺と一緒に金儲けをしよう。4000万ウォン」的な発言をして消えてしまいますが、あれはどういう意味でしょうか?
星はすばる
タイトルやクレジットが全部ハングルだし、全編韓国人俳優が韓国語でしゃべっているので、本当に韓国映画なのだと実感した。ただ監督が日本人というだけだった。
韓国の警察組織や養子縁組の実情を知らないので、登場人物の行動理由がわからないところもあるが、物語は理解できるし、説得力のあるセリフは多かった。なによりも、ソン・ガンホやカン・ドンウォンが、でっかい体で小さな赤ちゃんを抱く姿が、コミカルでとてもかわいかった。
登場人物みんなが心に傷を持っているが、赤ちゃんが彼らに光を与える。ウソン(赤ちゃん)がその名のごとく星となり、まわりの星を統べていく。こどもを失った夫婦も、刑事夫婦も、みんなでウソンを育てていく。血のつながりのない大人が、ゆるやかな輪でウソンを包む。こんなふうに、実の親がいなくても、多くの人の手でこどもを育てられるのはいい。追い詰められた「親」が、こどもを虐待して死なすよりいいと思う。こどもはさみしい気持ちもあるかもしれないけど、死ぬより生きてる方がマシ。ドンスだって、生きていたから、許せる気持ちになれた。挽回のチャンスは、死んでたら訪れない。
産んでから捨てるか、捨てる前に中絶するか。どちらも母親には罪悪感がある。母性という神話に苦しめられ、女だけが罪の意識を持たなければならないのは、なぜなんだろう。男がこどもを捨てても、女ほどには責められない。乳を与えられるかどうかしか違いはないはずだけど。
サンヒョンだけが消えてしまったが、きっと地下にもぐり、パラサイトへ続く…なんてね。
生まれてくれてありがとう。
公開初日に鑑賞。
感情が上手く言葉に表せないまま三週間が経ち、再度鑑賞。
初回は当然ながらこれからどうなるのだろうと思いながら物語りに引き込まれた。
登場人物たちが背負っているものを知った上での二度目は、冒頭の大雨のシーンから泣けてしまう。
クリーニング店を営むサンヒョンは妻と娘にも逃げられ今は借金に追われている。「赤ちゃんポスト」のある施設で働くドンスは自らも母に捨てられ養護施設の出身。この二人のベイビー・ブローカーと、赤ちゃんポストの前に我が子ウソンを捨てた若い女ソヨン。養護施設から逃げ出した少年ヘジン。
ウソンの養父母(買い手)を求めておんぼろバンでの旅。
それを追う現行犯逮捕にこだわるスジンと先輩に懐疑的ながらも従うイの二人の女性刑事。
洗車機での悪戯やウソンの発熱などを通して少しずつ心を開いていく。
悲しい結末しか待っていないのが解っていながらも、彼らの旅がいつまでも終わらないでいて欲しいと願ってしまう。
それぞれがつらい過去を背負っている登場人物のキャラクターづけがしっかりとなされているので、ひとつひとつの場面、セリフが切なくて胸に刺さってくる。
トンネルに入って、闇が表情を、騒音が返答を消してしまうシーン。
我が子が目の前で他人に授乳されるシーン。
娘にもう会いに来ないでと去られるシーン。
そして、観覧車の中のプロポーズにも似た許し。
極めつけは、生まれてくれてありがとう。
同じソン・ガンホ主演の「弁護人」「タクシー運転手」、また「1987真実の闘い」や直近では「モガデシュ」などの実話ベースの骨太な社会性のある作品まで第一級の娯楽作品に仕上げてしまう韓国映画と比べると物足りなく思ってしまうかもしれない。
韓国の監督が撮っていたなら、殺人のシーンも描かれているだろうし、最後は釜山スカイランドのゲート前で全員が再会して、涙涙で終わっただろう。
しかし、是枝監督は結末を描かない。
来月の15日に再会するかもしれない、
数年後、十数後の15日にサンヒョンも含めてみんなが再会するかもしれない、
お互いにもう二度と会うことはないかもしれない。
登場人物たちの未来は観る人によってそれぞれ異なるだろう。
「花よりもなほ」のラスト近くにこんな台詞があった。
桜が散るのは来年また咲くためですから、
今年よりももっと美しくね。
大好きなこの台詞や「海街diary」と同様に、韓国人スタッフとキャストで韓国を舞台に作られたこの是枝監督作品は、私の心の奥深くにいつまでもいつまでも留まるであろう。
そして多くの人に語りつがれる作品になるだろう。
生まれてくれてありがとう。
生まれてくれてありがとう。
何度でもやり直すことができる。
この映画を作ってくれてありがとう。
子を想う物語
子と離れ暮らす父、親に捨てられた青年、子を産み苦悩する母、子を持てない夫婦、それぞれの気持ちが交錯し絡まった糸を解くことの難しさを感じさせられ、それぞれが願う想いの重さが突き刺さる。
そして誰もが幸せを求め暮らすことを夢見それぞれが導いた回答により、その子の笑顔を想像させる景色で終わることが未来に希望を託してる様に感じられた。
終演後、分け隔てなく未来に生きる子供たちに多くの笑顔が訪れることを願わずにいられない。
「生まれてくれてありがとう」
土砂降りの雨、そして夜中。もう重い悪い予感しかない感じ。若い女が赤ちゃんポストの前に置き去りにして、次の日戻ったら、、、。
母親ソヨンが、子供を値切ったり、顔(眉毛)がどうのこうののいう夫婦にキレて、罵るシーン。流石に赤ちゃんにでも汚い言葉を聞かせたくないので、そっと耳を塞いで赤ちゃんを抱っこしていたサンちゃん(ソン・ガンホ)が良かった〜。
みんなそれぞれ訳ありではあるが、闇商売の旅によって家族のような空気になってゆくのが、さすが是枝作品!洗車のシーンから、みんなケラケラと笑い、ソヨンの笑顔も初めて観れた。
やっぱりホテルの部屋で電気を消して、それぞれにいうあのセリフ。そして、最後に子役のヘジンが彼女にも言うのよ〜、ウルウル。
サンちゃんがソヨンの服のボタンを付けてあげたり、何気ない家族の様な振る舞いに、彼女もハッとして打ち解けてくるし。
サンちゃんは、チンピラ(殺された父親の仲間)と話しを付けるために、わざと1人になったのですね。
最後に車に乗っていたのも彼?だと思うんですが。
たまたま是枝監督の話しを、朝のNHKで聞けたので、うんうん、なるほど、みんなで正直に育てれば良いなぁと思いました。
新しい命に最善を尽くし、大切なものに気づくお話
血のつながりではない絆、信頼と慈しみが徐々に生まれて、ジンワリと温かい空気の輪がどんどん大きくなっていき、ホワァンと気持ちが優しくなっていくような作品でした。赤ちゃんを中心としたただの感動ドラマ仕立てにしていないのは流石の是枝監督ってところではないでしょうか?まぁ、赤ちゃんの引き取り手(顧客)を探しながら大人達が救われていく巧みな物語でした。
本作は見事に血縁関係が出てこないのです。唯一の血縁関係の描写は悲しい関係なんですよね。良い対比だったかなぁ。「血縁」ではなく、重要なのは「存在」を否定しない、認める、受け入れるってことなのかなぁ?って思いました。それがあるから家族(のようなもの)になれるのかもしれないですね。
「傘のくだり」とか「雨も良いところがある」とか「生まれてきてくれて〜」・・・などなど。いいとこつくなぁ〜の描写が目白押しです。登場人物が皆、「無い」から、「持っていない」から、尚更渇望する相手の気持ちがわかるのかもしれないなぁ。登場する方々、ほぼ全員いい人なんですよね。他者の寄り添い方も心で肩をそっと抱いている感じが本当によかった。
さらに安易な感動ポルノっぽい結末ではないのが良いですね。もしかしたら見る方によってはスッキリできないかもしれません。けど主要な登場人物全員が現実味のある落とし所を必死に見出した結果なんだと思います。誰もが自身の役目(仕事の役目も含め)をきっちりこなしたってことは、守るべき新しい命を社会的に不幸にさせないための方法だったんだろうなぁって思うのです。そこがまた優しさたっぷりというか・・・。
正直、女刑事が見逃すのかなぁ?って思ってたんです。色々と内情がわかってきたから情が移ってって感じで。でもそんなありきたりな結末はやはり違いますよね。本作は赤ちゃん救うお話じゃないですから。捨てられた赤ちゃんを中心に多くの大人達が救い救われていくお話。見えない絆で結ばれていくお話ですから。結果的に擬似的な家族は擬似的な一族に昇華していくのです。そして、集う彼らの笑顔に観客は「あぁ、これでよかったんだ、これがよかったんだ」ってまたラストにあたたかーい気持ちになれるのだと思います。
韓国の方々はわかりやすい感動を求めるって聞いたことがあります。ですから、もしかしたら韓国では本作は受け入れられないかもしれません。しかし、演者さんは素晴らしいですし、撮影舞台が韓国だからこそ、本作の雰囲気が醸し出されているとも言えます。
ツッコミどころ満載
全体を通して波がなく、淡々と進んで終わる、悪くはないけど、ツッコミどころが多くて微妙だった。
疑問点
①最後の買い手である裕福な夫妻は、なんで非合法な手段で養子を取ろうとしているの?
②何故急に逮捕されることになったの?あれだけ「現行犯」を強調してきたのに、取引成立してないのにいきなり踏み込んで逮捕するのは何故?ソヨンが白状したから?
③暴力団員は誰が殺したの?何故?
そもそもこの物語に余計な要素じゃない?強引に主人公を犠牲にさせたいから?
視点大渋滞
だいぶ遅れての鑑賞。何故か夕方くらいまでしか上映が無いので日曜くらいしか行けませんでした。
そこそこ楽しみにしていたんですが、まぁ〜起伏がなくて楽しめませんでした。是枝監督の作風というか日本ならではの魅力があった「海街diary」は好きなんですが、「真実」や「万引き家族」はグローバルに目を向けた結果複雑なものが増えていき、それらが増幅したのが今作でした。
作品の立場的にはロードムービーに当てはまるとは思いますが、そのロードムービーとしての変化や面白さ、急展開などには欠けており、どうも単調に思えて仕方が無かったです。オチの付け方も思っていた通りというか、あーそのバッドエンドかー、って感じでした。赤ちゃんを売るもの、産みの親、それを追う刑事と視点が多すぎたのも退屈に思えた要因でした。
ソン・ガンホの善人の皮を被った様子は流石としか言いようがないですし、「新感染半島 ファイナル・ステージ」で初めて見たカン・ドンウォンの心優しいけど気の強いお兄ちゃん感はめちゃくちゃ良かったです。役者は本当良いんですけどね…。
韓国映画は基本的に高い水準で面白いものが揃っているのですが、是枝監督作の今作はどうもハマらなかったです。ただ大きな挑戦だったと思うので今後も色々な国での作品、もしくは日本にカムバックして新たな作品作りに勤しんでもらったら良いなと思いました。
鑑賞日 7/10
鑑賞時間 12:20〜14:40
座席 I-14
しっくりこない
売春、孤児、暴力、借金、不妊、人身売買、孤独
1人ずつが抱えてるものや背景はすごく重たいのに
それは置いておいてしまってて、いいとこだけ
集めてみましたみたいになってて不自然に感じる。
あんまり人間味を感じない。
ほんとはもっと暗くて狂ってて叫び出したいのに
押し殺してるんじゃなくてどっかに置いてきちゃったみたいになってる。しっくりこない。
なんだか長く感じてしまって、もう最後は映画館の椅子が硬くてお尻いたいって気持ちでいっぱいだった。
タイトルなし(ネタバレ)
韓国釜山の赤ちゃんポストを設置しているとある教会。
ひとりの若い女がポストの前に赤ちゃんを放置して帰った。
部下とともにポストを監視していた警察のアン・スジン(ペ・ドゥナ)はポストの下に置かれた赤ん坊を憂慮し、ポストに入れた。
ポストに入れられた赤ちゃんは、教会の非正規雇用スタッフ・ドンス(カン・ドンウォン)によって嬰児売買者サンヒョン(ソン・ガンホ)の手に渡る・・・
といったところからはじまる物語で、こう書くとサスペンス映画のようなのだが、残念ながら、サスペンス要素は乏しい。
興味深い題材ながら、映画的には面白味が乏しく、翻るといくつかの要因が考えられる。
1)サンヒョンがベイビー・ブローカーとなった理由
くだくだしく描く必要はないが、「それしか生計を立てれなかった」というのが欠落
2)ドンスがベイビー母に惚れてしまう過程が希薄
彼女に惚れるなら、前の同じような境遇の女性にも惚れそうだようね。
ならば、彼女が「はじめて」とかというシチュエーションが必要なのだが、そんなことはない。
3)そもそも映画の話法として、家族があったサンヒョンの物語(彼には別れたといえど娘と妻といる)と、その他の人物(嬰児の若い母親は別として)の家族不在の設定とがつくりすぎ感がある
個人的には、ここのところが納得できていないのですが、映画としては
血のつながった家族があったサンヒョンが家族を喪う話と、
血のつながっていない人々が「家族」的な繋がりを得る話、
だと思うのですが、
後者に重きが置かれたために、、「疑似家族」=「最小のコミュニケーション}=「絆」という、個人的に収まりの悪い所に収めてしまった感があり、残念ながら評価できません。
欧米では、サンヒョンの物語(特に、ほとんど何もしていないにみえる終盤の演技が評価された)ようにも思えますが、脚本的にはかなり甘い感じがしました。
それぞれ、自らと仲間を見つめ直す時間が最高
里親探しの旅に出かけた5人は赤ん坊のウソン含めて、全員が訳あり。旅の進行と共に皆の気分はだいぶ和らいできているが、殺人者もいる。
◉ゴンドラに揺られながら
遊園地で揃ってゴンドラに乗るシーン。メンバーが互いに思いを馳せ、顔を見合わせる。あー、今度はこんな家族を作って、ここでハッピーエンドにするんだと、私の頬は一瞬、緩んだ。浅はかにもだ。
監督はそこではまだ、ハッピーエンドは用意していなかった。ロードムービーの中でそれぞれの心構えに変化は兆したものの、二人の男はそもそもが人身売買目的の誘拐犯であり、迎えに来ると言いながら結局は里親を探す母がいて、子を買おうとする親がいて、そんな人間たちが刑に服したり、逃亡したりして、手間暇かけて、得られないかも知れぬハッピーエンドを探すと言う物語だった。
でも、人生はきっとそうした努力が素敵な結末を生むんだろうなと、温かな気持ちになれました。
◉答えをすぐに出さないのは優しさか?
街から街へ、結論は先延ばししながら、旅はサンヒョンの顔つきそのままに飄々と続いていった。殺人、子捨て、人身売買と言う濃い問題を抱えながら、それらと正面からは向き合わず、何となくはぐらかしていく。
でも、必死に向き合っていて、答えを出すまでの、間の切なさが胸に沁みました。
◉父はいつも独りだが
水をかけられたのに笑っている、ソン・ガンホは底抜けのお人好し。私もあんな人になりたい……とは断言しないけれど。
しかし、お父さんもう連絡して来ないでと断言したサンヒョンの実の娘は、犯罪的に冷淡過ぎます。これでは親父も、本気でグレてしまう。思いがけず生まれた家族の絆と、そこまで決定的には切れるとは思わなかった絆とが、強烈な対比で見せつけられる。
「タクシー運転手 約束は海を越えて」の時は、父ソン・ガンホの胸に娘の微笑みがあったはずと記憶しています。
汗まみれでブローカーを追い続けた、二人の女刑事にお疲れ様と言いたい。しかし、まさかウソンを引き取って養育するとは、びっくり、大きく拍手。
ロードムービー+サスペンス
“人身売買”という言葉を聞くとドキリとしてしまうが、彼らの願いは金目的ではなく赤ん坊に幸せになってもらうことだった。養父母探しというロードムービーに、一つの殺人事件が並行して描かれ、最後にはウルッとさせられました。「生まれてきてくれてありがとう」という言葉がこんなにも優しいなんてのも素晴らしい脚本。俺なんてどちらかというと、「生まれてきてごめんなさい」なんだけど・・・
韓国女優の中で「国民の妹」と呼ばれる女優IU(イ・ジヨン)。かつてはムン・グニョン、パク・ポヨン、キム・ヨナ(フィギュアスケート)たちがそう呼ばれてきたが、何となく理解できる。そういや、日本に「国民の妹」と呼ばれる人はいない!
殺人課ではない刑事(ペ・ドゥナとイ・ジュヨン)を配したのも画期的であり、殺人事件については無関心を装ってるところがいい。人身売買ともとれるブローカーを執拗に追うのが仕事だからだ。ここでは『空気人形』(2009)の時のアイドル的なドゥナちゃんとは全く違い、優しさの中に厳しさを匂わせる大人なドゥナが際だっていた。
『真実』(2019)では新たな挑戦と思われた是枝監督だったが、作品としては面白くなかった。しかし、日本と通ずる韓国の土壌がやはり是枝らしさを発揮させたのではなかろうか。親子関係、疑似家族といったテーマも一貫しているし、女性蔑視や同性婚などという問題も含ませていた。
笑顔
ベイビーブローカー
極悪人ではなく
めっちゃ赤ちゃんに優しく
海外に転売されないようにしっかり交渉されて、なんか凄く良い人
赤ちゃんを捨てた母親
ブローカー二人
施設から抜け出したい子
捨てられた赤ちゃん
この人達が旅でどんどん家族みたいに
仲良くなっていく
万引き家族もそうだけど、
血が繋がらない家族みたいなのが、
この映画でも映し出される🎬
みんな良い人だ
車窓の花を取るペドゥナの手が綺麗だった
昔、中絶をした事があるかのな?
そんな風に思わせる
ウソンの為に、みんなが動くのは現実的ではないけど、そこは理想がかかれているのだろうか
飲食シーンはめっちゃ食べたくなる笑
タイトルなし(ネタバレ)
素敵な作品ほど、上手く言葉で感想をまとめるのが難しい。
これは映画館で観て良かった。映画体験ってこういうことだよなとしみじみ。感動って言葉だけでは薄っぺらいくらい、私にとっては貴重な経験ができた。
是枝監督作品はもともと好きだが、今作はその中でも傑作だった。
理由は良いシーンが多すぎるから。感覚的には6個くらいあった。大体の映画で良いシーンは数個あれば良いのに、この映画はどのシーンも良かった。
そしてそれぞれの良いシーンが「良いシーンですよどうぞご覧下さーい!」って厚かましさがないのが凄い。非常にナチュラルに受け止められる。
音楽もすごく良かった。ピアノの透明感と雨音がしっくり馴染む。
雨だれのシーンでは前半なのに既に泣きそうになった。
ストーリーも、序盤からの流れをくみ取り、徐々に厚みを増してそれらが人物たちの想いとして形に表れていくのが美しい。人数も多いのに自然にキャラクターをまとめお互いに物語を進めていく流れは、さすがの手腕。最後まで目が離せず、この先どうなってどう終わりを迎えるのか、全く予想できない。
それぞれ誰かに捨てられた人らが、一時でも家族としての絆をつむぎ、最終的には自分たちは生まれてよかったと思い、目の前の赤ちゃんにも生まれてよかったと思って欲しいという願いがひとつになっていく。愛のある親が子に当たり前にするように、「この子には幸せになって欲しい」とみんなが願う様が美しい。あの瞬間は間違いなく家族だった。
少子化はこれからも続いてしまうし、なかなか私自身も産む選択もできなさそうだが、この映画のように新しい命にはやさしい社会であってほしいと願う。ウソンみたいに愛される子が増えたらいいな。
大切な言葉は暗闇の中で実母の声となる。
ソン・ガンホの演技観たさに鑑賞。
今回も擬似家族を描き続きてきた是枝監督ワールド韓国版でした。
そんなにバッドエンドでもないのに、なぜか鑑賞後、スカッとした感じがしなくて。
曲のせいかな?とも思いましたが、描き方も大きいかなあ。
ウソンの満面の笑みとか、顔の表情を強調せず、可愛らしさみたいなものはあえて見せないようにしていたのかなとも思いました。
そうすることで誰もが捨てられ貰われていくベビーの顔を自分に置き換えることができるからか。
一方で、サッカー大好きヘジン君の表情は豊かで微笑ましく、作品の陰鬱さを和ませる役割をになっていました。
そして、大切な言葉は暗闇の中で。
視覚を遮られた上で聞こえる、生まれてきてくれてありがとうという声は、まるでそれぞれの実母から言われているかのように染み入ります。
ホントのそれぞれの実母は決してそんな事は言わないんだけどね。だからこそ欠落した言葉を貰うのは誰からの言葉が曖昧になる暗闇が良いよね。
刑事が女性だったことは大きいでしょう。あれがいかつい男の鬼刑事だったらあんな母性溢れる海のシーンは有り得ません。
3年後、ソン・ガンホ演じるサンちゃんも面と向かってウソンに会わせてあげたかったな。
擬似家族全員集合は難しいですね。
理想的なコミュニティ
赤ちゃんを売買するブローカー2人と赤ちゃんをベイビーボックスに預けた母親の里親探しのロードムービー。
『万引き家族』と同じように犯罪で結ばれた人達が擬似家族のような絆を築いていく話なんだけど、本作の方がラストにファンタジー的な爽快さがある。売られる予定だった赤ちゃんウジンは、女刑事に預けられ引き取る予定だった夫婦とも交流があり、実の母親ソヨンとの再会も匂わされる。
実の母親だとか母親と知り合いだとかに関係なく、1人の子供を皆で守り育てていく理想のコミュニティ。日本で撮った『万引き家族』が現実的な終わり方だったのに対して、海外で撮った本作は"ここではないどこかの理想郷"感がある。だから日本人目線で見ると納得しちゃう。
『万引き家族』では取り調べを担当する警察官が外からの目線という形式上の人物でしか無かったのが、今作では女刑事2人をちゃんと人間として描く。女の子の方が200万安いことに腹立つし、専業主夫のような旦那さんがいたり、道中色んなものを食べてぶつくさ言いながら、不思議な擬似家族を見つめていく。
この2人もちゃんと人間として出てくることで色んな価値対立が発生して面白かった。「子を捨てる親は無責任」vs「やむを得ない事情で子を捨てる親」vs「かつて自分も捨てられた」みたいな。この色んな価値観が最終的に1人の赤ちゃんを守ることへで集約されていくのが清々しかった。
胸の内
複雑な脚本というか、表に出てくる事柄とは全く違う筋がもう一層あるような脚本だった。
センセーショナルな題材ではある。
韓国風にもっとドス黒い作品にも出来たはずではあるのだが、人の暖かさを感じてしまうような作品になってた。詰まる所…焦点がボヤけるというか、んー…まぁ、そんなに単純な話なんて映画の中にしか転がってないんだろうな、とも思う。
「赤ん坊」に対する視点が、皆んなバラバラで、それを扱う理由も様々なのだけど、そんな連中が「赤ん坊」を介して擬似的に家族になっていく展開は面白くもあり、同時に切なくもある。
それだけ無垢な存在なのだろうと思う。
ただ、まあ、そんな無垢な存在を純粋に金儲けに使ってる連中もいなくはない。
男2人も、結局は金を手にする手段として、養子縁組を利用してはいる。
公にしたくない理由を持つ買い手もいるのは確かなのだろう。足の付かない商品を欲する理由もあるのだろう。彼らがキューピッドと自分達の事を表現するのは、言い訳にしか聞こえないけれど。
矛盾を大いに孕む作品だった。
それが人間なのだと言えばそれまで。
日本人の監督が、わざわざ韓国でコレを撮ったのも頷ける。日本ではこの脚本を昇華しきれないと思う。
韓国でなければ、韓国の俳優達でなければ、このとてつもなく曖昧な人間模様にたどり着けはしなかったろうなと思う。
なんちゅうか…居心地の悪いぬるま湯にずっと浸かってるような印象だった。
あまり、起伏はなく、何と対峙してるのかも、今は分からない。そんな感じ。
■追記
特殊、なのだよ。
万引き家族の時もそうだったけど、舞台設定がぶっ飛んでて比較対象が見当たらない。
そのくせ、そこに生きる人間達の言動には、いちいち共鳴してしまう。不思議な体験なのだ。
今回もそうだ。だからこそ混乱する。だからこそ集約される。人の葛藤が浮き彫りにされていくとでも言うのだろうか…。後ひくわー。
いつのまにか旅の参加者になれます。
ざあざあ雨に古びた街の姿が滲む夜
赤ちゃんポストの下に置かれた赤ん坊。
そこから始まる「赤ちゃんを高く買ってくれる養父母探しの旅」
ブローカーの男サンヒョンとドンス、売りものにする赤ん坊ウソンと母ソヨン、養護施設の少年へジンも途中から飛び入りし出会ったばかりの5人を乗せて進む車。
後を追うのはブローカーの実行犯逮捕を狙う女性刑事スジンとイの車。
韓国で深刻な社会問題にもなっている闇稼業。
その犯人逮捕へのドラマだけを想像していたなら、え?え?え?となる。
重い事件性を匂わせつつも、ブローカーの車の漫画のようなオンボロ具合やところどころ笑いを誘うコミカルなやりとり、少年との微笑ましい会話やその表情など幸せでたのしい雰囲気がたくさん散らばっていてつい忘れそうになるが、いかん、いかん。。。彼ら、れっきとした人身売買に関わり中。
だが、その奇妙な出会いの意味やいかに…なのだ。
道中、一緒に過ごし相手の人生の裏側を知ることで家族のような関係性が生まれ、やがてそれぞれが自分自身をみつめ返す時間となる。
この心情の微妙な変化の描写がみせどころであちらこちらに仕掛けられてるのを私たちは繋ぎ合わせるように見入ることになる。
ひょうひょうとして調子のよいサンヒョンの別れた家族との寂しい関係、ドンスの生い立ちがつくる影、ソヨンがウソンを手放すまでの悲しい理由、やんちゃなヘジンの境遇と幼き無邪気な希望。そしてクールな刑事スジンの背景も、だ。スジンに関しては直接にはほぼ語られないのだが
彼らにかかわりながら見え隠れしていくのを見逃せない。
特に、雨にぬれ車窓についた花びらを座席から手を伸ばし掬い上げていくしぐさは印象的で彼女の中の葛藤、不安感、さみしさなど人間的な部分を静かに露呈している。図らずも、、の演技が素晴らしい。
チーム長として気丈で頼もしいキャリア像がある故に真逆な一面を思いがけず目にしてしまった申し訳なささえあった。
そして、観るものに人は皆、360度いろいろな事情と思いを重ねそこに存在しているんだよということを思い出させるのである。
また、「傘」というワードで気持ちのかたむきを会話に込めたドンスとソヨン。
宿泊先や車や観覧車の中でのものだ。
どこも安定していない流動性のある場所で、それが不確かなものをみるときにすっと光をあててみたくなるような、でも怖いような、、そんな、ちょっと懐かしくもあるじりじり感を増しているように思う。
かつて親に捨てられた立場の彼がそれを許せる心境をむかえるとき、側にいたのは今まさに子を捨てようとしているソヨン。
ふたりに流れる空気にじーんときた。
どうしようもない雨に濡れながら、我が子を置くしかなかった彼女に、小さな傘が横からゆっくり開き、だんだんと大きな傘にかわって包まれていく感覚だった。
不意に始まったこの旅は、傷をもったお互いの心に寄り添いながら変わりゆく自分を見つめる旅だった。
観客はいつのまにかそれを擬似体験する旅の参加者になり、何かしらの思い出を胸の底に得るのだとおもう。
全70件中、21~40件目を表示