ベイビー・ブローカーのレビュー・感想・評価
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尻切れトンボ
幸せな終わり方もひどい終わり方も出来た映画だと思います。 是枝裕和監督の選んだラストはこれか、というのがものすごくがっかりして映画館を出ました。 ロードムービーとしてとても楽しく観ていたので首を傾げてしまいました。 この結論が正しいとか良かったって思う人がいるのが少し驚き。
続・万引き家族
是枝監督作品は、初めて観た「誰も知らない」(04)以降、どちらかという苦手な作風でした。頭で理解できるのに感覚的にしっくりこないような…。少し変わったのが「海街diary」(15)で、「万引き家族」(18)も強く共感しました。という流れだったので、「期待しすぎてハードルを上げてはダメだ!」と自制しながら、カンヌでも話題になっていたので、ついつい期待して観ました(笑)。個人的には、今までで一番好きな是枝作品になりました。そこにあるテーマは、今までとある意味同じ、疑似家族の絆を描いて家族の有り様を問うものかと思います。主人公ハ・サンヒョン(ソン・ガンホ)らがやっている商売は犯罪行為で、白黒でいえば完全に黒!しかし、現実社会が白黒判定だけで解決せず、様々な矛盾を含めて成り立っている現状を考えると、たちまち正解がわからなくなります。そういった曖昧な闇に真摯に目を向けて、家族や社会のあり方を、まるで自問自答するように作品を作り続ける是枝監督の熱意に感銘を受けました。僕にとってのカギは、登場人物に共感できるか否かだったと思いますが、その点で、ソン・ガンホさんと、赤ちゃんの母親役イ・ジウンさんでよかったと思いました。
刑事サイドの視点が面白い
是枝監督のこれまた奥深い作品。 万引き家族を彷彿とさせるような様々な視点と支えあい。さらに、なんとなく奥深さを感じたのは、ベイビーブローカーを刑事の視点で追っていたこと。ここがまた緊張感を醸し出しつつ、刑事サイドの心の変化が面白い。そしてその変化から、まさかのラストシーンへ。最後の終わり方も是枝監督っぽい後味でした。
是枝裕和監督最高傑作
相変わらず子役の演出は見事。 後半のホテルシーンや帰りの新幹線のあの「台詞」など、泣けました。 社会問題に切り込み、善悪の価値観を揺さぶりながらもこんなに心地良い時間が流れていくのは、まさに是枝裕和監督作品に出てくる海のような広い心で全ての人間を受け入れてくれる登場人物達のキャラクターのなせる技。 母親の選択、ブローカー達の末路。現実的にフェアに描きつつも、やはり彼らを応援したくなる。彼らは頑張れる。そんなラストに感じました。
ざっくりひと言で言ってしまえば…
ロードムービーをバックに 「万引き家族」と「パラサイト 半地下の家族」 を、足して2で割ったような作品だった 競争がし烈な韓国社会 貧富の差は日本以上かもしれない そんな社会の底辺で、暗い過去を背負い、 犯罪に手を染めるような生き方しかできない3人の登場人物たち… そんな3人が、ソヨンが捨てた赤ちゃんをきっかけに、家族のような温かい関係になってゆく 車窓を流れる韓国の美しい風景とともに、 それぞれが自分に流れてきた時間を振り返り、 「生まれてきてくれてありがとう」という言葉が胸に落ちるまでの心情の変化を、 時にユーモアを交えながら、是枝監督の優しい視線が丁寧に追ってゆく この3人と対極的な存在として登場するのが 女性刑事二人組 スジンはリーダー的ポストで、社会的には成功者じゃないのかな…と思うのに、子供がおらず、どこか満たされていない 社会的弱者も成功者も、どこか満たされない そんな韓国社会の息苦しさみたいな雰囲気が、 冒頭の土砂降りの雨のシーンによく表されていた気がする… ソヨン役のイ・ジウン! こんなにセリフが少ないのに、目線や表情、仕草で胸にぐっとくる演技ができるなんて! その演技力は新鮮な驚きでした
ザ☆是枝映画
作家性の是枝映画ですね。 家族とは何かを主題に人間を描き続ける。 いや、本作も本当に良かったし、褒めてますよ。 意地悪な表現をすれば毎回が同じ話のリメイクなんですが、作家としての映画監督ってそれでいいと思うんです。 人生掛けて1本の指針を貫く方が、見てる俺らも人として信頼できると思うんです。 あれも出来る、これも出来るってエンタメ手腕振るって来る作り手よりも映画監督として信用に値する。 恐らく次回も同テーマで映画が作られるのでしょう。 数年先にはどれの、何年のコレエダは良いとか、イマイチとか語られる、ワインとか焼酎のような銘柄になるのでは無いでしょうか 静かに期待してますよ是枝監督。
「親になれば分かる」もの
韓国映画というと、過剰な暴力表現やエロ描写などのため、個人的には生理的に受け付けないのですが、今作は日本人監督ということもあり安心して鑑賞出来ました ただ、例えば本場の韓国キムチが好きな方には、日本で売っているキムチでは辛さが足りないように、今作品も韓国の方や韓流ファンには物足りなさを感じるかもしれません 是枝監督の作品は何と言っても脚本が秀逸で、語りすぎずに行間を読ませることで、観客の想像力に委ねてくるところがあります 今作も、自分自身の人生や家族に想いを重ねることで、ジンワリ自然に涙が滲んでくるような作品で、そこは好みが別れると思います また、異文化や言語の壁を越えたチャレンジ精神に1点追加、ということで、大変素晴らしい作品でした
家族写真が一枚もない
私は崩壊した家庭で育っているので、家族写真が一枚もない。物心ついたときから憎みあっている両親しか知らずに育ち、その後、親の病気や自殺未遂もあり家庭は地獄みたいだった。当然、家族旅行とか家族団らんの記憶もない。 幸い、学校での人間関係が良好だったので、さみしさはあまり感じなかった。 大人になった今、男女が愛し合い暖かい家庭を築くということの重要性は痛切に感じる。でも高い離婚率や未婚率を見ると、それってもしかしたらレアなことなのかもしれないとも思う。 自分の中を見ていくと、幼少期の環境とそこで受けた傷というのは、自分の潜在意識深くに根をはっていて、自分の考え方や行動に影響を与えているのが分かる。 それを癒すことは何年も続けていている。
브로커になってしまった賞評価
正直に言えば、『万引き家族』の二番煎じであって、樹木希林の代わりに송 강호を据えたっていうところだ。映画としては、前作を踏襲し、ややいじった感じの二流。 まさに、作品そのものが題名通り브로커だからこそか?自分の思いで、作品を「買取」たいと思っている連中にとっては「いい作品」なのだろうが。 そんな思いが、陳腐な映画評にも現れている。 社会的弱者が支え合う単位としての疑似家族・・とか 深淵な響きを放つ秀作・・とか 「人間の根源的な物語」として昇華させた作品・・・とか 地に足のついた深い人間模様があった・・とか アホなコメントが、トップに来てるのはなぜだろうか? ラーメンを食って、高級フレンチでも食べたかのような気になっている連中はめでたいと言うしかない。 「生まれてきてくれてありがとう‥‥」って、これってantinatalismが一気に吹き飛んでしまう幼稚な台詞。 ・・・違う。そう言わなければならない状況を、少しばかり事件を絡ませて「説明」してはいたものの、ストーリーの「回収」があまりにも安易だった。 송 강호の演技も、今までも彼の演技を知っているならば、特筆すべきものではない。 강 동원。반도もそうだけど、逃げてばかり? 배 두나。もったいない!どんな役をさせてるん?もっと、濃い役させて!彼女に、この役必要だったのだろうか? 巷では송 강호ばかりを取り上げる無知マスコミばかりだけど、강 동원や배 두나のことも取り上げなくちゃ!そして、この3人が、全員、本当の意味で「役不足」であったことを指摘しなきゃ。 -なぜ、しない!その程度なのだろうか?この業界は? -あ、河瀬直美の作品が「爆死」しているにもかかわらず、なんとか話題にしようとしている体質から? さらに言えば、こんな安易な幕尻をといえば、 最後の数分は何だった? 夏休みの宿題を終わらせるベイビーのように、予定調和的に安堵させる展開に持っていきたかった? 家族が「擬似」であり「似非」であったのであれば、 どうか、最後は十分に散逸させて欲しかった。にもかかわらず、最期まで「家族」に固執する映像、ストーリー。 是えだも是までか? と言うより、 いつも思うのだが、 このサイトに提灯意見、書くのはやめようよ!
20歳のわたしから
正直、各々の心情を 分かりきることはできませんでした。 でも、「分からなかった」で終わらせないで、 これから考えてみようって思う映画でした。 そう思わせる優しい余白を 今回の作品では個人的に感じた気がします。 5年後、または10年後にもう一度観たら もしかしたら、共感できることがありそうです。
重く苦しく…ないか
是枝監督で、カンヌ上映、ソンガンホ主演…などなど、結構話題作だと思うのだけど、その割にスクリーンが小さかった。割引デーかつ、たまたま小箱の上映回にあたっただけなのかもしれないが、久しぶりにかなり前の方の席になってしまった。 それはそれとして、内容は期待通り。赤ちゃんポストの社会的な課題を下地に、人生の過去を抱える無関係な人々が絡みあいながら、少しづつ歩み寄っていく。赤ちゃんを売りに行く過程で旅をするロードムービー仕立ての趣向。「捨てる」側「捨てられる」側のヘビーな事情を想像させつつ、結構ドロドロの背景が見え隠れする、重苦しいテーマではある。淡々とした展開ながら、それぞれのシーンの表情や仕草で感情を表現した画に、気持ちを読み解く面白さがあったので、退屈はしなかった。 「赤ん坊を売る」という重い内容なのに、ソンガンホの持つ雰囲気が物語を殺伐とさせず、観ながら重くならないのが良い。 韓国女優で好きなぺ・ドゥナも、ガンホ演じるブローカーを追う刑事役で登場。「グエムル」の頃のイメージを残しつつ、芯のあるキャリア女性をカッコよく好演。なぜか我が子を売る旅に同行する若い母親役のイ・ジウン。私は多分初見だけど、韓国では人気歌手のようですね。松岡茉優に似ていて、「万引き家族」を少しイメージしたかな。 全編静かな進行なのだけど、ラスト10分ほどで怒涛の展開。切なくも、物語にきっちり落ちを付けた、本作のラストは良かった。安心して観れる快作です。
意外と...
万引き家族を思い出す、不安な気持ちが続くかと思っていたけど、所々にユーモアが、、 ソンガンホのキャラのおかげかな? 途中の挿入歌で懐かしい曲、なんだたっけー?と ずっと気になって、思い出しました! 映画マグノリアのsave me! サントラ買ったほど気に入っていたから、 なんか嬉しかった(笑) マグノリア、見直したくなりました。 脱線しましたが、 最後は良かったぁと 終われてホッとしました。 私も母親なので、やはり考えさせられる 話でした、違う角度からの 考え方を知れたような、、 気になっている方は 是非観て下さい。
善か悪か?
善いも悪いも、シロクロつけられない題材。 いや、そんなことはない。 優しければ、赦されるのか? やってしまった後始末のための、里親探しなのか? 突き詰めると、悪が見えてくる。 反面、それぞれが子を持つことに真剣に向き合って、もがいてきた背景がある。 だから、こどもたちに優しい。 それが、見ていて微笑ましくもあり、切なくもある。 望んでも子を持てない側と、予期せず親になった側、親から置き去られた児。 なぜ、堕ろさなかったか?の答えが突き刺さる。 産んで捨てたら殺人で、堕ろしたら違うの? ホントにそこだけど、そんなに簡単なものでもない。 ラストに救われる。 みんなで見守るって、こういうことかもねと思える。この子の存在が、確実に大人を変えている、そこを見せたかったのかな。 是枝監督は。
最悪な人身売買の中から育まれる最高の疑似家族愛
日本でも”赤ちゃんポスト”がマスコミで大きく報じられて話題になったが、韓国でも似たような状況が起こっているということである。”育てられないのに産むな”というセリフが、映画の序盤に登場してくるが、確かにそう言いたくなる気持ちは分かる。しかし、この映画を観ていると、実際にはそんなに簡単に割り切れる問題ではないのかもしれないと思ってしまった。様々な事情から止む無く赤ん坊を預けるしかない母親もいるし、自分で育てるよりも施設で暮らし方が幸せな場合だってあるはずである。本作はそんな韓国の社会的実情に着目しながら、生命の尊厳を謳った作品である。 監督、脚本、編集は是枝裕和。「誰も知らない」や「そして父になる」、「万引き家族」といった作品で国際的な知名度を誇る日本を代表する映画作家の一人である。「万引き家族」の後にフランスへ招かれて「真実」を撮り、その次に韓国へ渡って本作を撮り上げたということである。言語や文化が異なる場所で映画を作り続けることは大変な困難を伴うものであろう。中々真似できるものではない。 物語は捨てられた赤ん坊を巡って繰り広げられる群像劇になっている。赤ん坊を捨てた母ソヨン。その赤ん坊を売ろうとするサンヒョンとドンス。彼らを追いかける女性刑事スジン。映画は夫々の胸中を繊細に捉えながら展開されていく。 その中から見えてくるものは人間の孤児性、孤独といったものである。彼らは親から捨てられた者であり、子供を捨てた者であり、子供を持てない者たちだったということが徐々に分かってくる。 思えば、これまでにも是枝作品の中には人間の孤児性、孤独は何度も描かれてきた。例えば「誰も知らない」は母親に捨てられた子供たちの荒んだ暮らし振りを徹底したリアリズムで描いた作品だった。「万引き家族」の中には児童虐待を受ける少女が登場してきた。いずれも大変シビアな作品であるが、人間の孤児性、孤独が切実に描かれた作品のように思う。それが本作でも大きなキーワードとなっている。 そして、サンヒョンたちは一緒に旅を続けるうちに”疑似家族”のような絆で結ばれていくようになる。これも是枝監督が好んで描いてきたテーマの一つである。途中からドンスを兄貴と慕う少年ヘジンも加わり、彼らは時にユーモラスに、時にシリアスに衝突と団結を繰り返しながら奇妙な信頼関係で結ばれていく。その姿は正に孤独な者同士が肩を寄せ合う”疑似家族”そのものである。 個人的には、遊園地の観覧車の中で交わされるドンスとソヨンの会話が印象深かった。彼らは決して本物の家族にはなれない。しかし、確かにこの旅を通して一瞬だけでもかりそめの家族にはなれた。その事実は誰にも奪われないし、決して失われることはない。そんな思いがこの時の二人には共有されていたような気がした。 脚本も人身売買のサスペンスをエンタテインメントに上手く昇華しながら巧みに作られていると思った。夫々のバックストーリーをミステリアスに紐解く構成も大変魅力的で、抑制を利かせた是枝演出も相まって非常に濃密に仕上がっている。人によっては分かりづらいという意見があるかもしれないが、このくらいさりげなく軽やかに語られると想像の幅が広がって個人的には楽しめる。 例えば、スジンはサンヒョンたちの人身売買の現場を押さえようと執拗に追いかけるクールな女性刑事である。そんな彼女が、後半の車中の電話のシーンで涙を見せる。彼女には彼女なりの苦悩があったということが分かり、冷徹に見えていた彼女に一瞬だけ人間味が生まれ愛着の持てるキャラになった。これも実にさりげない演出だが、味わい深い。 全てを描ききらないラストも然り。その後の彼らを想像させるという意味では素晴らしい終わり方だと思う。疑似家族の在り方を改めて示して見せたという捉え方もでき、実に”したたか”なエンディングになっている。 難を言えば、展開を軽快に進ませるためなのか、幾つか詰めの甘さが散見されたことが惜しまれる。 例えば、人身売買が韓国社会でどれほど大きな問題になっているのか。そのあたりの実像が、映画を観ていてもよく分からなかった。報道や警察の捜査の中で表現するやり方もあったと思うが、是枝監督はどうもそこのリアリティに関しては余り関心がないようだ。 また、細かい演出で言えば、サンヒョンを尾行するスジンの距離の取り方が余りにも近すぎるのが気になった。実際にあのような尾行をしたら刑事失格だろう。車に仕掛けた発信機が簡単に見つかっていたし、元来彼女は余り有能な刑事ではないのかもしれないが、そうだとしてもサスペンスとしてはいささか緊張感を失する演出である。 キャスト陣ではサンヒョンを演じたソン・ガンホの飄々とした妙演が印象に残った。普通であれば極悪人になってもおかしくないところを、人の良さを滲ませながら愛すべきキャラクターへと見事に創り上げていた。
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