ウルフウォーカーのレビュー・感想・評価
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自分の居場所をかけた戦いの話し。
96本目
森に住む狼と街に住む人間と、眠ると魂が抜け出し狼になる「ウルフウォーカー」を取り巻く、自分の居場所をかけた戦いの話し。
狼と人の森をかけた戦いはもののけ姫と似てるけど、もっとストレートで見やすい感じ。
ストーリーもキャラ造詣も王道でわかりやすいけど、だからこそ世界観にすぐに入り込めたし、素晴らしい映像美と独特な表現によって「既視感」を超えた世界が出来上がっていた。
美術や色彩、アニメーションの完成度の高さや独創性、ロビンとメーヴの関係や、それぞれの魅力など良かった点は多々あるけど、それはもう沢山書かれているので、個人的にとても良かった点を。
物語後半、父もウルフウォーカーになりロビンを助けるシーン。
人の状態の父がオオカミ状態のロビンを助け、その後、人の状態のロビンがオオカミ状態の父を助けるっていう構図、そして潔く死を受け入れる護国卿。
対立の終了と相互理解を表現しているというのがヒシヒシと伝わってきてとても良かった。
振り返った瞬間ボウガンを手にした人のロビンが居たの、鳥肌立っちゃったよね。
あと、音楽を担当しているKiLAというグループが昔から好きで(民族音楽にハマるタイプの厨二病だった為)、久々に聴く王道ケルトミュージックがめちゃくちゃ心地良かった。サントラ欲し過ぎる。
この作品、「ケルト三部作の三作目」らしいが、それ以前の作品は観ていないので、これを機に観たいなと思いました。
他の2作品もKiLAが音楽担当らしいし。
あとは護国卿が単なる悪役ではなく護国卿なりの正義があったこともしっかり描きながらも勧善懲悪としてまとまっていたのが素晴らしかった。
終わり方も最高。
自分たちの居場所を見つけたのはオオカミ達だけではなく、ロビン達もまた然り。幸せなハッピーエンドでしたね。
どうかその便利な治癒能力に目をつけられウルフウォーカー狩りが始まらないことだけを祈る…笑
上映館がかなり少ないから気軽に観に行けないかもしれないけど、映画好きの方には是非観て頂きたい上質なアニメーション映画でした。
要約:めちゃくちゃ良かった!!
素晴らしい作品
上映館が少ないのでなかなか見られない人も多いと思いますが、素晴らしいアニメーション映画です。
ケルト三部作全て拝見しましたが、本作が最も見やすいと思います。おそらく「民話」「神話」「伝承」としての雰囲気が最も薄く、「童話」のような感覚で見られれるからだと思います。
個人的にメーヴのキャラクター造形が、フォルム、声など(字幕版を鑑賞)非常に上手だとおもいました。
作画、躍動感、音楽。全てが丁寧に作られています。
海外のアニメーションはなんとなくアニメと呼びづらく、アニメーションと呼ぶにふさわしいような感覚があります。
日本のアニメのような、少し趣味の世界みたいな感じでなく、アートな感覚で見るべき作品が多いような気がします。
昨年見たロングウェイ・ノースなども非常にアーティスティックでした。
鬼滅の刃が空前の大ヒット街道を驀進していますが、たまにはこんなアニメーションにも触れてみてはいかがかと、皆さんにオススメしたいです。
純真無垢な気持ちで
アイルランドのアニメーション映画は多分初めて劇場で鑑賞した経験となったであろう。とても貴重な体験となった。
主人公のロビンと森に住むオオカミ使いのメーヴが友情が芽生え育み、人間とメーヴはじめ森に住むオオカミたちとの対立を描いた作品。
ロビンの住む村やロビンの父は森を支配下にしたくオオカミ狩を行なっている。その辺の溝に苦しむロビンの心の成長が主となる。
話のルーツはもののけ姫なんかと似ているなと思った。ただこの作品の主人公のロビンはもっと幼く、自分の素直な気持ちやありのままの本能を大切に行動に出る。この辺りの行動に理由や意味を求めすぎると引っかかる点は多い。いかに見てる側も純真無垢な気持ちで見られるかはさらに楽しく鑑賞できる要因になりそうにも思えた。
ロビンとロビンの父も最後はメーヴ親子のように人間とオオカミのハイブリッドとして森に住む事となる。
この結末やそれまでの描写含めかなり展開が読みやすくありきりたな展開に感じた。
自分と対する存在の価値観や、彼らの生き方考え方。この辺りをメーヴと出会い、ロビン自身オオカミになる事で理解や成長に繋がるのだが、この辺が物凄くストレートに描かれているため比較的子供たちが楽しめる作品に思えた。
もちろん大人でも楽しめるとは思う。個人的には比較的子供向け作品のように感じ、物凄く興味を惹かれる事はなかった。
丸
あちこち丸い。森を進む道の脇の木は湾曲して丸をなす。森が開けたところも丸く開ける。水溜りは丸く、メーヴの顔は丸い。髪も丸い。横を向いても丸い。人の街は方形である。キャラクターも角ばる。自然と人工を意識的に描き分けているのか。
描き分けという点では狼目線での表現。科学に則した表現か分からぬが、実に想像力がかき立てられる。狼ならではのスピード。狼の五感が備わったように感じる。フクロウにはどう見えたのか?などとも。
もはや安定のトムムーア品質である。絵心の豊かに負けないストーリー構成の詰め込み方。親子、男女、人種、文化の相克を乗り越えてくる。キャラクターの愛らしさ、特にメーヴは二重丸。
ケルトの森からやってきた超純正ハイレヴェルアニメーション
非の打ちどころのない王道のシナリオと、超ハイレヴェル&個性と意欲に満ち溢れたアニメーション技術を兼ね備えたぐうの音もでない佳作。
日本のアニメがピーキーなものしか作らなく(あるいは作れなく)なって久しいが、アイルランド人でもこんな素晴らしい純正で真っ向勝負の素晴らしいアニメが創れるようになっている。もはや日本のアニメは岐路に立たされているが、きっとその代わりになる才能あふれるクリエイターは世界中にいるのだろう。
美術は本当に素晴らしい、ただ作画や演出の技術が優れているだけではなく、この作品ならではの独創性とチャレンジに満ちている!
特に都市部ではキャラクターやその周りと背景のレイヤーがはっきりわかれていて、その背景はパースが存在しない中世ヨーロッパのフラスコ画のような意匠になっている。その感覚を形容するのは難しいが、人形劇のワンシーンのように感じられた。特に都市の遠景はまるで壁画のごとく真上から俯瞰しており最初は何を描いているのかすらわからなかった。こんな奇天烈な描写もある一方、一歩森の世界に入ればそこはトトロの森を圧倒するような水彩風の色彩に彩られるケルトの森林世界である。そのファンタジックな深い深い緑や、優しい黄色、日陰を思わせる落ちついた青や、あたたかな紅葉を思わせる赤が溢れた画面は、これまで他のアニメやゲームでは見たことがないような素晴らしい魅力を湛えている。それは可憐で小さくまとまった秘密の小道のような美しさがあるかと思えば、瀑布をのぞむ渓谷のような雄大な美しさもあり、ただ背景を眺めていて飽きることがない。ツタの造詣、舞い散る落ち葉、足元の背の低い草の質感と、ちょっとしたワンシーンすべての描写に妥協がない。
都市部の描写も17世紀のアイルランドの生活描写が非常に強い説得力をもって描かれており、きっと当時の城塞都市はこんな空気をまとっていたであろうことがリアルな生活臭とともに想像できる。パンとスープ、掃除道具、晒し台、屋台と山羊のミルク。ロビンの家の間取りや、家々の窓の造詣、天守があるわけではないが堅牢な城や、馬車のデザインなど、どれもが細部まで、適当ぶっこいて作ったエセ中世世界(正しく言えば近世だが)でないことがわかる。
そんな森や街を時にハイスピードに駆け回るときの疾走感よ!
背景やガジェットのデザインのみではなく、カートゥーンなキャラクターの感情や感覚の描写も見事だ。安易にセリフで語らせるのは三流のアニメであり、この作品はしっかり目を挙動でキャラクターの想いを描き切っている。狼の感覚を通した匂いの世界の描写も印象的だ。
キャラクターデザインは、都市に属するものは直線的デザイン、森の世界のものは曲線的デザインで明確に対比されているのも場面がコロコロ切り替わるふたつの世界を行き来するにあったて、場面の理解や頭の切り替えに役立っていたように思える。
キャラクターは設定は奇をてらっているわけではなく、言い方によっては平凡だが、一方で万人ウケする誰でも好きになれる魅力がある。冒険好きな女の子のロビンも、友達できてウッキウキの野生児メーヴも、悪く言えば既視感のある、しかし良い意味で王道的でツボを押えたキャラクターになっている。果たしてこの作品の登場人物に、ひねくれた個性など必要あるだろうか? キャラクター至上主義という病に侵された今の日本では、きっとこういうストレートな主人公達を作ることはできないだろう。
敵役である護国卿も、主人公達や21世紀の自由至上主義・人権至上主義といった宗教観から見ると悪でしかないが、シナリオのために適当に作られた小物的・サイコパス的な安い悪人ではなく、17世紀当時のイギリス人としての確たる使命感と価値観をもって行動し潔く死んでいくあたりは素晴らしかった。この護国卿を「宗教への皮肉と批判を描くために作った悪役」などと浅い読み取り方をしているような連中は、この映画を見るだけの教養がついていないということだろう。
ストーリーも自然保護や異なる文化との対話の重要性、フェミニズムなど近年のスタンダードでよくある素材を、まったくもってごく王道的に普通に、でも高水準にまとめている。これを「普遍的テーマをまとめきっていて素晴らしい」とするか「無難に寄せ集めたに過ぎず工夫がなく平凡だ」とするかは判断に迷うが、しかし、ここでヘンテコな主張や個性をねじ込んで素晴らしいアートワークと世界観を台無しにするような愚を犯していないことがこの作品が佳作たる所以である。
メーヴ達は、母親の救出さえ済めば「人間達から尻尾をまいて逃げて、安住の地に移る」という前提で行動している。これはアメリカや日本の作品では滅多にみられない展開だと思われ、実際もののけ姫では自分達の領域を犯す人間を虐殺するサンや山犬たちの行動に、視聴者は(自分含め)誰一人疑問は抱かない。この平和的逃亡者としてウルフウォーカー達を描いたのは、イギリス人と凄惨な殺し合いをし、時にはただ耐え忍んできたアイルランド人の感性ゆえなのだろうか。
前述通り護国卿は芯の通った17世紀のイギリス人として描かれていたが、21世紀的な宗教観(自由至上主義・人権至上主義)でロビンをヒーローとして描き、アイルランド側を善玉・イングランド側を悪玉として組み立てているのは事実であり、政治的な意図が一切排除されてはいないとも感じられる。
いずれにせよアカデミー賞候補筆頭は伊達ではなく、日本人が創れない領域の王道アニメーション作品であることは間違いない。過去のジブリの傑作を鼻にかけて奢りまくった日本のアニメは、そろそろもう一度本気を出さなけばならないときを迎えている。
その他細かい感想
・音楽めっちゃかっこいい。サントラ欲しい。
・狂犬病システムでこんな便利な特殊能力遺伝できるならガンガン噛みなよ
・不可抗力で眠ると狼化するの凄く不便じゃない?電車で居眠りしても狼出てくるよ?
・ウルフウォーカーになると一生熟睡することができなくなる。精神を病まないだろうか
子供連れが思ったよりいたけど
表現が綺麗。
手描きの繊細なタッチなのに躍動感があり、色彩豊かなアニメーションだった。
日本の最近のアニメとは全然違うものを観たなー、というのがまずは感想。
ストーリーはわかりやすいけど、人間として複雑な気持ちになる。
文明、自然、破壊、支配、信仰、宗教、自由、親子。
うーん、、軽くはない。
鑑賞前に気にしてたもののけ姫との比較だけど、観ていて気になるなあと思う時もあったが、全体的にそこまで似た印象は持たなかった。
跨って駆けてくシーンとか、森への進軍とかはさすがにフラッシュバックしたが、やはり当たり前だけど別物。
全体的に扱うテーマはけっこう考えさせられるけど、綺麗だし、テンポはよいし、異文化や歴史に触れられて面白かった。
なお、吹替え版も違和感なし。
寓話が絵本になり、それが動いている感じ
期待通りの絵の素晴らしさで、シンプルな話のもと、これもまた素晴らしい音楽と音響に囲まれながら、視覚的な喜びを大いに感じた作品でした。
土地に伝わる寓話が絵本になって、それがそのまま動いているような、見事なアニメーションで、確固たる世界観に存分に浸ることができると思います。
内容は突飛でなおかつ単純に感じるため、もしかしたら絵空事にしか捉えられないかもしれませんが、それ故の良さ感じられたので、飽きることなく見切ったという印象です。心地よい音と絵に囲まれ、一瞬睡魔のようなものに襲われましたが・・・
字幕版と同時に吹き替え版同じように上映されている所以も理解できました。どちらで観賞しても問題ないと思います、
【アイルランドの歴史】
これは、1650年頃のアイルランドの悲しい歴史をモチーフにした物語だ。
イギリスは、約10年ほど共和国だった時代がある。
国王を追放し、この間、実質的に実権を握っていたのが、物語にも登場する護国卿で、大半はクロムウェルの支配だった。
また、この時代、大きな気候変動があり、17世紀半ばから約80年から90年間、世界は寒冷化し、ヨーロッパも冷害で食物は不足し、クロムウェルは、アイルランドに攻め入り、肥沃な土地を収奪し、多くのアイルランド人を虐殺した。
そして、アイルランド人の大半は、痩せた土地に移り住まなくてはならなかったと言われている。
また、アイルランドは自然崇拝(アニミズム)の色濃く残る地域で、カトリックからは異教徒とされていたことも、この作品では伺える。
狼は、カトリックにとっては悪魔の化身だ。
だが、この物語は、アイルランド人を狼に重ね、争いを好まず、住む地域を隔て、平和に暮らすことが出来るのではないかと語りかけている。
最後に、ウルフウォーカーたちがたどり着いた場所は、自然が豊かな場所だった。
実際のアイルランド人が移り住まなくてはならなかったのは痩せた土地で、それまでヨーロッパ人が口にしなかったジャガイモを主食にして、彼らは命を繋いだ。
この物語では、豊かな土地に移り住んで平和に暮らしたのだと締めくくり、争いのない世界に願いをこめたのではないか。
だが、残念なことにアイルランドとイギリスの間の争いは絶えなかった。
長い間、アイルランドはイギリスの植民地のような状況だった。
だが、この物語は、今だからこそ、これからの僕達の世界にとって大切なのは何かと問いかけているのだ。
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