ブータン 山の教室のレビュー・感想・評価
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子供たちの笑顔にやられた、とても幸せな気持ちになれる作品です♪
劇場で予告編を観た時に授業を受ける女の子の屈託のない笑顔を観て、“これは良い映画だ”と言う印象にかられて、鑑賞しました。
で、感想はと言うと…良い!
凄い良い。めちゃくちゃ感動しました♪
もう、この良さをいろんな人達に伝えた気持ちで一杯w
なので、めっちゃネタバレが有るのはお許し下さいw
教職志望のウゲンはやる気が無く、教職訓練の最終年であっても教職に就かず、オーストラリアに渡り、ミュージシャンとして成功を夢見る青年。
だが、そんなウゲンに人里離れたルナナと言う村に学校教師としての派遣が告げられる。
ルナナはウゲンの住むティンプーから8日間もの移動時間が掛かり、その殆どは徒歩での移動が強いられる程の高地にある村。
移動中も不満と文句が一杯のウゲンだったが、村について何も無い環境に驚愕。
到着早々、村長に帰りたいと告げる。
だが、最大限の尊敬ともてなし。またウゲンの到着を心待ちにしていた、村人と子供達の思いにウゲンの気持ちは揺らぎ始める…
と言うのが大まかなあらすじ。
ブータンの事は殆ど知らなくて、アジアの国で中国やインドと国境を接していて、仏教の国でチベット系の民族と言うぐらい。
「世界一幸せな国」と言うフレーズが有名ですが、幸せかどうかは人それぞれとしても、ルナナの村に人々の優しさが身に染みます。
登場人物に悪い人がいなくて、みんな純粋で良い人ばかり。
唯一居るとすれば…酔っぱらって外で寝てるペム・ザムの父親ぐらいw
ウゲンも今時の若者ではありますが、根は純粋で子供達の思いを真っ直ぐに受け止めるとても良い奴。
いろんな物を取り寄せて、徐々に教室らしくなっていくのも良いんですよね。
その中でギターを取り寄せて、音楽をみんなに教える事や歯磨きをみんなに教えるのにはなんか物凄く気持ちがほっこりします。
村までのガイドを努めるミチェンも村長もウゲンと淡い恋仲になりかけるセデュもみんな良い。
特に子供たちの眼差しと笑顔が抜群で汚れた大人には目を背けたくなる程の真っ直ぐな眼差しが眩しすぎるw
屈託のない笑顔と言うのはこういう事なんだと教えてくれます。
学校の子供達がみんな良い子すぎですがペム・ザムが純粋で真っ直ぐ。
無垢な笑顔がとても良い子で可愛らしい。いや可愛らし過ぎるw
いろんな仕草や言葉がいちいち可愛いんですよねw
この作品の半分以上の良さはこのペム・ザムの笑顔かと思いますw
子供たちは先生に勉強を教わる事に待ち焦がれていて、それぞれの夢がある。
その中で「将来は先生になりたい。先生は未来に触れることができるから、将来は先生になることが夢」と口にする。
物凄く目が覚める思い。
「教育」とは教えて育つと書くが、教えるだけでなく自身が教えられて、自ら育っていく事だってある。
相互教育と言う言葉だけで括れないぐらい。
昨今の教育者の不祥事に教育と言う言葉が汚されて踏みにじられている事を思うと本当は教育と言うのは尊い事を教えてくれる。
分かっていても実は分かっていなかったと言うか、表面だけで分かっているフリだけだったと、目から鱗がぼろぼろ落ちるw
本当に子供たちのキラキラと輝く瞳に心が洗われるんですよね。
ウゲンがここに留まる事に少しずつ気持ちが傾くのも分かるけど、故郷を離れて自分の夢に賭けたい気持ちも分かる。
正直ルナナの生活はとても過酷。
電気・ガス・水道がスイッチ1つでなんて事は夢のまた夢。電気もソーラーでの自家発電がギリギリある程度で、それでも殆ど使用不可な状態。
トイレ等の環境も至極劣悪で正直自分には無理w
紙もとても貴重。
都会で暮らしている者にとって、普通に有る物が殆ど無い。
そこには都会に無い物が沢山ある!なんて言うのは現地に居ない者の言う事で実際に「無い」事が当たり前のルナナの人々はそれを受け入れられても、普段「有る」事が普通の者からすると、窮屈この上無いと思う。
村に向かう道中にお世話になる家族が子供以外は靴を履いてない事に「高価な靴を買うなんてお金は持っていない」と言う。でも自分の子供には靴を与えている無償の愛。そんな気持ちがしみじみと感じられます。
また、教育を受ける事で様々な将来の職業の選択肢が増え、村を出る事だって出きるし、村に留まっても、ルナナの村の未来の可能性を広げる事が出来る。
この辺りはグリーンランドの辺境の村をテーマにした「北の果ての小さな村で」に似ているかも。
でも、村長がウゲンが外国に行くのを聞いた時の「ブータンは世界一幸せな国と言われてますが、そんな幸せな国を出て海外の国に行く…」と言う台詞は物凄く心に突き刺さります。
これって、地方から都会に上京する時の親の気持ちを知ったのと似ている感じで、物凄く突き刺さります。
また、ウゲンが村を出る時のクラスを代表して、ペム・ザムがウゲンに渡した手紙では泣きました。
物凄く真っ直ぐ気持ちが綴られていて自然と涙が出てきた。
もしかしたら「俺はルナナに留まる!」とか「また春には戻ってくる!」と言うかもと淡い期待をしましたが、そうはならなかった。
遠くオーストラリアに渡り、シドニーでクラブのステージで歌を歌う。
でも、殆ど聴いている者はいない。ただ流れているBGM程度の認識。
そんな時にルナナでセデュから教わった「ヤクに捧げる歌」を歌い始める…
憧れではあったが、遠く異国の地に行ってきて、ルナナの暖かさを思い出して歌い始めたけど、ウゲンがブータンに戻って再びルナナに行ったのか、シドニーに留まったのか迄は描かれてないんですが、結構良い終わり方かと思います。
個人的には「ブータンに帰る。ルナナに戻る!」と劇中に意思表示してたら、ベタでもなんかスッキリしてたけど、これはこれで良いかと。
ウゲン役のシェラップ・ドルジやミチェン役のウゲン・ノルブ・へンドゥップ。セデュ役のケルドン・ハモ・グルンも殆どこの作品で俳優デビューとの事。ミチェン役のウゲン・ノルブ・へンドゥップはちょっとジャッキー・チェンに目元が似ているかもw
ペム・ザムは役名と実名で同じで実際にルナナで暮らしていると言うのも驚き。
演技を意識しない自然な演技が心に迫るのは2018年に公開されたレバノンの「存在のない子供たち」の主役のゼインが実際にシリア難民であるのと同じでリアリティーを醸し出していると思います。
標高4,800メートルの地にあるルナナでの壮大な大自然の風景と映像美が圧巻でそれぞれの場所での「人口」の説明がクスッと笑わせてくれる。
学ぶ事も尊さや本当の豊かさと言う言葉を文章にするとチープにも感じますが、それをこの作品は教えてくれる。
とにかく良い映画。
映画としてのストーリーはオーソドックスですが、凄く良い作品で2回目の鑑賞は余程の事が無い限りしないんですが、これはまた観たくなりました。
とても良い映画ですが、コロナ禍の影響もあって、都内では「岩波ホール」でしかやってないのが残念です。
でも、こういう状況下でこういう作品に出会えた事がとても嬉しい。
また、岩波ホールも初めて行きましたが、街の公民館みたいな感じですが、古き名館的で良い感じ♪
派手なエンタメ作品も良いですが、こういう時だからこそ、観てもらいたいしみじみとしたお勧めの作品。
何回も良いを連呼しているのは、それだけ良い映画だったんですが、自分は今年前半ではナンバーワンかも。
ちょっとでも興味と機会がありましたら、是非是非な作品で絶対お勧めです!
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