「とにかく自然が美しい映画」ブータン 山の教室 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
とにかく自然が美しい映画
秋田県大館市にある東北唯一の常設単館映画館「御成座」さんにて鑑賞しました。
平日昼過ぎの上映だったこともあり観客は私一人。貸し切り状態での鑑賞です。
予告編すら観ていないため、本作の内容に関しては全く事前知識がない状態でした。
結論ですが、めっちゃ良かった!!!
2020年に鑑賞して私個人の年間ベスト映画『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』に匹敵するくらい自然の描写が素晴らしい映画でしたね。標高4800メートルにある「世界一の僻地」と言われる実在の小さな村「ルナナ村」を舞台とした、若い教師と村人たちとの交流を描いた映画。実在する村を舞台にしており、撮影もその村で行ったそうです。劇中でも描写があるようにかなりの僻地で、ブータンの首都ティンプーから片道8日も掛かる場所のため、パンフレットを見ると撮影時の苦労が見てとれます。学級委員長として登場するペム・ザムは実際に村に住んでいる女の子が本人役で出演していたりエキストラとして多くの村人(特に子供たち)が参加しているんですが、これはルナナ村へ人を連れていくのが大変だったからという側面もあるんでしょうね。
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教師として働いていたがやる気が出ずミュージシャンを夢見てオーストラリアへ渡ることを計画していたウゲン(シェラップ・ドルジ)は、教師として働く最後の一年間、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校への赴任を命じられる。電気も無い村への突然の赴任で全くやる気が無いウゲンであったが、村人たちから歓迎され、子供たちとの触れ合いを通じて、教師としてのやる気を取り戻していく。
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(失礼ながら)正直あんまり期待していなかったというハードルの低さはありましたが、これがめちゃくちゃ面白かった。
「ブータン映画」は初めて鑑賞しました。調べてみると、ブータンで国産映画が初めて製作されたのは1980年代だそうで、比較的歴史は短いとのこと。本作に出演しているキャストも本職で俳優やっている人がほとんどいないです。ミチェン役のウゲン・ノルブ・ヘンドゥップは失業中の土木作業員だとパンフレットに書いてて笑っちゃいました。子役はほとんどおらず、ルナナ村に実際に住んでいる子供たちが本人役として出演しています。台詞量も多くてメインキャラを演じていたペム・ザムも村に住む演技未経験の女の子です。ルナナ村への移動が非常に大変なので、おそらく人員も機材も限られた中で制作された映画であろうということは、パンフレットに載っている苦労話やエンディングのスタッフロールの短さからも感じ取れます。
ルナナ村に到着するまでの描写がかなり長かったですね。ウゲンの住む町からルナナ村までの道程を30分以上掛けて描写していましたが、これは「ルナナ村がいかに僻地であるか」を時間的に表現した演出のように感じました。ルナナ村までの距離の遠さ、そして「一度行ったらなかなか帰れない」というのを表現してますね。
そして村人たちとの交流。「勉強したい」と思う子供たちの描写と、最初はすぐに帰るつもりだったウゲンが彼らによって心動かされ、町に戻るのを取り止めて村に残ることを決意したシーン。素晴らしかったですね。
ラストシーンは結構解釈分かれそうな雰囲気でしたね。あれはハッピーエンドと呼んでいいんだろうか。悩みます。
他の国の映画と比べてしまうと、キャストやスタッフや機材が限られ、尚且つ俳優たちもプロではなく、かなりの低予算で制作されたであろう本作ですが、「面白さ」で言えば全く引けを取らない。それどころか「面白い映画を撮りたい!」という努力や情熱がスクリーンを通して伝わってくるような作品でした。オススメです!!!