「こんな力が自分にもあったらと思いつつ現実に戻る」ママは世直しヒーロー talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな力が自分にもあったらと思いつつ現実に戻る
かなり笑えて面白かった。アメコミやハリウッドのスーパーヒーロー映画に批判的なのはドイツっぽかった。「パワー」を生まれつき持つ人々は既に子どもの時に、学校や社会に適応できないと判断され、「治療」が必要と錠剤を処方されファイリングされ監視下に置かれる。大人になってからは場合によって、病院に見える「収容所」に閉じ込められる。ドイツ映画だからナチスドイツが想起される。
アメコミのヒーロー好きな金持ちボンボンもパワーを持っているが、夢見る「エレクトロマン」で現実もわからず過去から何も学習していない。こいつが提案する計画「ワルキューレ」に主役のウェンディは「ナチスっぽくない?(有り得ない)」と言うが、馬の耳に念仏の彼は変てこなコスプレを続けている。そこに世代間の違いや現実世界が表れていてリアルだった。
ダイナーで働くウェンディはどんどん強くなるが、自分のパワーに対して恐れとバランス感覚を持っている。彼女は決して人を殺さない。コスプレもしない、なぜなら「女のヒーローはいつもSMの女王様風」の格好をさせられている、と言える批判精神があるから。こじんまりでもプールがある家を手放さないで済んだウェンディ一家は、息子の学校「友達」やその親達を家に呼んでアメリカンなガーデン・パーティーをする。それをウェンディは夫とシニカルに言い合って笑う:「なんか成金ぽくってバカみたい」。
『FREAKS: あなたも私たちの仲間』がオリジナル・タイトル。ウェンディは「あなたはフリークスではない、病んでいるだけ」と「精神科医」から言われてパワーを発揮できなくするブルーの錠剤を渡されていたのだ。エンドロールで流れる音楽かっこよかった。世の中、どっちが誰がフリークスなんだ?フリークスで悪いか?適応できなくて悪いか?