「アメリカの田舎町で起こる因果応報。裁くのは人か神か。」悪魔はいつもそこに マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの田舎町で起こる因果応報。裁くのは人か神か。
オハイオ州にある田舎町。典型的なキリスト教を信じる人々と自身の生まれから神を信じないトム・ホランド演ずる1人の若者を軸とした話。そこに腐敗した警官と自分の趣味として殺人を繰り返す一組の若夫婦を交え、信仰がどこまで人に通じるか、その理不尽性を説いたところがすごく魅力的だ。
またこの作品は宗教を信じることの矛盾さも感じられる。トム・ホランドは無神論者だが自分の妹の身を案じ、血は繋がっていないが本当の兄貴のようにずっと彼女を守っていく。時には暴力を使ってでも彼女を守り通す姿は人を守ることの尊さ、そして立派さを感じられる。徹底的に神を信じず、妹が祈っていても彼は祈らない。対照的に妹の方は祈りは欠かさずに行い神を信じる。対照的な2人だがそこには確かな絆を感じられ見ていて温かい。しかしそんな彼女を新しく赴任してきた牧師が食い物にするがそこがとても皮肉が効いている。他にも熱心な信者が自分の奥さんを殺し神の力を証明しようとするがもちろん死者が蘇ることはなく、その彼はその後に殺しを趣味とするカップルに殺される。
物語が終盤に向け、接点がないように見えるキャラクターたちが不思議と絡み合っていくシナリオの畳み方は見ていて自然に引き込まれ、面白かった。宗教を信じるか信じないかは自由だがこの中で一番人を救ったのが無神論者であるトムであるところがとても好きな映画だ。
タイトルの悪魔はいつもそこに、とは人の心の数だけ悪魔はいるから誰でも加害者にはなり得るが、人を殺したらいつか自分に返ってくるという因果応報を感じてそこも面白いな。
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