「空(タワーマンションに、住んでみたい)」空に住む 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
空(タワーマンションに、住んでみたい)
2020年。監督・脚本:青山真治。原作:小竹正人。
「空」に近いほど高いタワーマンションの46Fの一室に暮らすことになった
直美(多部未華子)の日常を描いた映画です。
編集者の直美は独り立ちしている女性です。
突然、両親が交通事故死して、叔父の所有するタワーマンションに住むことになった直美は黒猫のハルを連れて引っ越して、そこの住人となります。
なにかと訪ねてきてお節介を焼く叔父と叔母。
内心ウザいと思っている直美。
そしてある日、エレベーターで乗り合わせたスター俳優の時戸森則(岩田剛典)
時戸は直美に間髪入れずアタックしてくる。
(この辺、ありえない設定だと思う)
そしていきなり部屋を訪ねてきて「オムライスが食べたい」・・・
なんて口説きますかねー。
この映画はどことなく軽い。
原作者の小竹正人さんは作詞家で作家。
EXILEや三代目J Soul Brothers・・・の作詞をしている人。
だから岩田がキャスティングされエンディング曲も三代目・・・が歌っているのも、
いかにもEXILE御用達ってことですかね。
多部未華子と岩田剛典のラブシーンも違和感は半端じゃない。
もちろんそのラブ・アフェアに愛なんてものは介在していない。
直美は時戸のアイドル本の出版を自分の出版社から出す・・・その下心から寝るのだから。
(もちろん彼がかっこいいとも思ったと思うし・・・愛がなかった訳でもないだろう)
でも好奇心とプライドを満足させるのと同時に、ビジネスの成功・・・が心の奥にあった筈です。
そして忘れてならないのが親より大事なペットの猫(ハル)
親の死でも泣けない直美が、ハルの病気は心底嘆き悲しむ。
ハルの病気と、同僚の臨月の編集者の後輩・木下愛子(岸井ゆきの)の存在感。
岸井ゆきのの役はインパクトがあった。
臨月でもお腹の子は結婚相手の子供ではない・・・とか。
ラストの出産場面とか、凄いシーンは岸井の出る場面なのだ。
多部ちゃんはインパクトでは岸井に負けているね(笑)
才気ある原作者の小竹正人さん。
「空に住む」
タワーマンションに住む若い女性。
その設定でここまでの作品を書いてしまうのは凡人にはなかなか出来ないことだ。
だからと言って胸を打つ映画だとは、到底言えないけどね。
お洒落感はありました。
「空に住む」のタイトル通り、地面に足のつかない映画だったなぁ(笑)
直美の勤める出版社の畳の仕事部屋の佇まいが、余計に身に染みた。
それとチョコっと出演する永瀬正敏。
職人技を見せてくれました。
今晩は。
今作は、邦画の異端児且つ、世界に認められた青山真治監督の遺作になってしまいましたね。
監督の意図は明白で、タワーマンションから見える東京の姿は一見綺麗でありながら、虚構であり、地に足の着いた生活をすべし、というメッセージを感じた映画でもありました。
青山監督作では「共食い」が劇場で観た映画としては印象に残っていますが、今作を劇場で観れた事は僥倖である、と思った作品でもありました。
では。