「まさに「ギレルモ・デル・トロの」ピノッキオ」ギレルモ・デル・トロのピノッキオ Malmöさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに「ギレルモ・デル・トロの」ピノッキオ
まず、これぞギレルモ監督作品だなと感服。
ダークで悲惨で物悲しい。だけどちゃんと救いもあって、クスッと笑えるシーンもある。
監督の作品が大好きで過去の作品はすべて見ていますが、結末は一番温かい気持ちになれた。
物語始めの仲の良い父ゼペットと息子カルロの生活がとても微笑ましいけど、第一次世界大戦時の話だし、そもそもギレルモ監督だし、どこかで一気に悲惨なことになるはず…とびくびくしていたら案の定。教会にピンポイントで…というのも悲劇。
愛する息子を失った悲しみ(とやや憎しみ?)に塗れながら作った木の人形に、妖精が命を吹き込んで生まれたピノッキオ。
誕生したばかりのピノッキオは歩き方・動き方がおぞましく、顔もちょっと異形寄り(個人的な感想です)。素直にかわいいとは言えないのだが、物語が進むにすれてめちゃくちゃかわいく見えてくる。
自分が誕生したことをとても喜び、色々な物に興味をひかれて、楽しい面白いと歌うピノッキオ。
当然だがピノッキオは世間をまったく知らず、突飛な行動ばかりするので、ゼペットはちょっと困り気味。
ピノッキオに愛する息子カルロのように育って欲しいと願うゼペットじいさん。
カルロではないしカルロにはなりたくないピノッキオ。
どちらの思いも分かるから、すれ違ってしまうのは悲しかったな…。
印象的なシーンはピノッキオがゼペットじいさんの元を去るシーン。
ゼペットとの約束を守らず学校に行かず、甘い言葉に誘われてカーニバルへ行ってしまい、結果大事故が起きてしまう。
あまりのショックと疲労感からか、怒ったゼペットがピノッキオに「なんて状況にわしを追い込むんだ。どうしてカルロのようになってくれないんだ。おまえはとんでもない重荷だ」と暴言を吐く。
当然、ゼペットじいさんは人間なので嘘をついても鼻は伸びないが、ピノッキオはそれを知らない(自分と同じで嘘をつけば鼻が伸びると思っている)ので、ゼペットの鼻は伸びなかった=本音を言ってるんだと思ってしまう。
生まれたばかりのピノッキオが「パパを傷つけてどならせたくない。パパの重荷になりたくない」と家を出ていくシーンは本当に悲しかった。
人間ではないし、血が繋がった息子でもないけど、子どもの口から出る「重荷」という言葉がこんなに辛いとは…。
ピノッキオを慰めるセバスチャンの「父親も絶望することがあるんだよ。そして一時の感情に任せていろいろ言ってしまう。だがやがて気付く。本気じゃなかったと」という台詞は、多くの人が身に覚えのあるものじゃないかと。
後々この台詞がまた出てくるシーンがあるけど、そこも切なかった。
個人的にはセバスチャンによく頑張ったで賞をあげたい。
そしてキャンドルウィックにも幸せになって欲しい(生きてるよね?)