劇場公開日 2020年11月27日

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「【理由、決着】」アンダードッグ 後編 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【理由、決着】

2020年11月28日
iPhoneアプリから投稿

後編は、龍太のボクシングを始めた理由や、過去が明らかになる。

そして、
晃と太郎と佳子。
明美の子供との交流。
明美の過去と虐待。
木田の大胆な行動と運命。

更に、龍太の事件と、最後の試合へのモチベーションが、交錯して、晃を運命の試合に駆り立てて行く。

引退を強く勧めていた会長やジムも徐々に一体となって行く様は、どこかスポ根ふうでもある。

試合の結果は、映画の通りだ。

決着はついた。

しかし、それは、その試合の決着ということだ。
前編の宮木を含めた、晃と龍太の三者三様の人生の決着ではない。
それは、エンドロールでも明らかだ。

宮木は別の道を歩み、龍太も自分と同じような境遇の子供達と交流を重ねている。

そして、晃はきっとボクシングを続けている。
だが、世界チャンピオンになれるとは考えていないだろう。

僕は、途中でトカイが晃に投げかける言葉がキーではないかと思う。
「お前が羨ましい。噛ませ犬と言われながらも、ボクシングを続けて、ボクシングが本当に好きなんだと思っていた」

子供、家族、仲間、金など、闘う理由はあったとは思う。
ただ、僕は、晃はボクシングが好きなのだと気がついたのではないかと思う。

前編の最初に、ハングリーとは異なるテーマがあるのではないかと書いたが、映画を見終わって、大きな意味で、今は、テーマはハングリーかもしれないと思っている。

ただ、それは、貧乏から抜け出したいという従来のものとは異なる、何か目標を定めて、それを追求したり、好きという理由で、それを黙々と続ける姿勢という意味でのハングリーだ。

それは、晃だけではなく、宮木や、その運命を受け入れた龍太も同じだ。
運命を受け入れることも強さだ。
それは、この3人だけではなく、他の人達、僕達にも同じことだ。

とかく近視眼的になりがちなテーマを、複数の視点から、理由や選択は一様ではないとの示唆も与える秀作だと思う。

ワンコ