「【Viva la Vidaと、ひげと】」フリーダ・カーロに魅せられて ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【Viva la Vidaと、ひげと】
レビュータイトルは、フリーダ最後の作品として、映画のエンディングでも映されるスイカの絵の断面に書かれた言葉で、作品のタイトルともなっている。
「人生万歳」
実は、この映画の公開前の1月25日のEテレ「グレーテルのかまど」でフリーダが好きで、皆にふるまったとされる「カピロターダ」というお菓子を取り上げていたのだが、そこでも、この絵が紹介されていた。
生死をさ迷うような交通事故の後遺症、恋愛、ディエゴ・リヴェラとの出会い、結婚、度重なる流産、浮気、離婚、痛みによる度重なる手術、ディエゴ・リヴェラとの再婚….
波乱万丈の人生だが、僕が衝撃だったのは、フリーダが、周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自傷行為をするミュンヒハウゼン症候群だったのだろうという話だった。
家から出ることが少なくなり、ディエゴ・リヴェラとも距離があったのだと考えると、切ない気持ちになる。
僕が、フリーダの作品を生で観たのは一度だけ、20年近く前のフリーダとメキシコの画家というタイトルのBunkamuraの展覧会だった。
一応、フリーダの作品がメインだが、他の画家の作品も沢山あった。
僕が、その時感じたのは、タッチは異なるものの、アンリ・ルソーと少し似た雰囲気があるなということだった。
アンリ・ルソーも独学で絵画を学び、人物も、動物も、植物も、丁寧に描く独特の世界観の作品を残していて、素朴派と呼ばれることもあるが、シュルレアリスムに通じる作風と言われることも多い。
フリーダの自画像のなかにも、動物や植物が多く描かれ、その世界観をして、シュルレアリスムとされることがあるが、自らは、自分はシュルレアリストではないとしている。
自ら見たもの、感じたものを作品に落とし込んでいるというのが、その理由だと思うが、政治的には自らの強い意志で共産主義を選択したことからも、夢や薬物、精神疾患による幻覚からインスパイアされているわけではないという信念があったのだと思う。
だが、フリーダの作品は、僕にはシュール…に見える。
「ヘンリフォード病院」で見たもの経験したもの描いたこと、
カトリックに絶望していたわけではないものの、メキシコの原始宗教だけではなく、ヒンズー教や仏教の思想背景にある神々も描いた「宇宙の抱擁」、
「希望の樹、しっかりと立て」のフリーダの2つの感情、
「二人のフリーダ」では、離婚後の感情的な2つの苦痛が感じられる。
「折れた背骨」では、観る者も思わず大きな肉体的苦痛を想像してしまう。
他にも多くの作品が紹介される。
ただ、ルーブル美術館が購入した「フレーム」は肖像画の周りがメキシコ風の鮮やかな色で装飾され、この時はきっと、苦痛よりも幸福感が上回っていたのではないかと思わせてくれる。
フリーダが来客にふるまったとされる「カピロターダ」というお菓子を考えると、フリーダは本当にミュンヒハウゼン症候群だったのだろうかと考えてしまう。
フリーダは、孤独を恐れ、アイデンティティとは何かを問い続け、それはフリーダにとっては明らかに現実で、シュールなんて言われたくなかったのだ。
だから、自らの最後を悟り、残した作品のタイトルが「Viva la Vida(人生万歳)」だったのだ。
情熱の画家だ。
因みに、ポートレートに描かれた「ひげ」、気になる人、きっといるよね😁
初めて描いたポートレートにはなかったし。
ひげまで、きっちり描いたのは、飾らない、ありのままの自分だと、シュールじゃないということなんだろう。