劇場公開日 2021年7月31日

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「父の遺した経験、言葉を受け継ごうとする娘の意志が結晶となった一作。」8時15分 ヒロシマ 父から娘へ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0父の遺した経験、言葉を受け継ごうとする娘の意志が結晶となった一作。

2021年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

19歳の時に広島で被爆した美甘進示氏の体験に基づいた作品。美甘氏の娘・美甘章子氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、ニューヨークを拠点に活動しているJ・R・ヘッフェルフィンガー監督が撮影や編集も手がけています。約60分と劇場公開作品としては上映時間が短めですが、脚本執筆にハリウッドの制作会社が関与するなど、映画製作の経験がほとんどなかったという美甘章子氏のプロデューサーとしての能力はなかなかのもののようです。

ヘッフェルフィンガー監督の意向がかなり強く反映されているという映像は、実写部分とCG、そしてグラフィックのエフェクトをかなり強調したものとなっており、被爆当時の状況の忠実な再現というよりも、そのインパクトをイメージとして提示する方向に重点を置いたものです。では現実味を欠いているのかといえば決してそうではなく、例えば被爆当時の写真や原爆資料館で被爆資料を見たとき、当時の状況はこうだったのではないか、という想像がそっくりそのまま具現化したような迫力がありますし、息子を想う父の描写は胸に迫るものがあります。また実際の美甘氏のインタビューと、田中壮太郞によるインタビューの再現映像(英語)がほどよく取り混ぜられている点も、ドキュメンタリーならではの、現実味はあるけどちょっと映像的なとっつきにくさがある、という問題点をうまく克服していました。

yui