「ルーシーが少し不憫」ルーシー・イン・ザ・スカイ REXさんの映画レビュー(感想・評価)
ルーシーが少し不憫
ベースとなったのはリサ・ノワックという宇宙飛行士が巻き起こした、ただの不倫と痴話げんかというありふれた事件なのですが、今作は「着想を得た」と挿入されるとおり、彼女を不倫に走らせた「そもそもの原因」を想像で膨らませた物語。
とはいえ、やはり不倫ぐらいしか大きな出来事は起きないし、物語が大きく揺れ動くのは後半なので求心力はやや弱いと感じた。はっきりいって、どんどん堕ちていくナタリー・ポートマンの演技を見たいがために見続けたようなもの。
実話は置いておいて、ルーシーには少し同情してしまう。
一度高山に登ってしまうと低山の景色では物足りなくなるのと同じで、最高の経験をしてしまうと他のことでは満足できなくなる気持ちもわかる。
まだ体力も衰え切ってはいないし、再度宇宙へ行く夢を諦める条件には置かれていない。
潜水服浸水のときに心拍数が上がらなかった(パニックにならなかった)ことが評価されるのかと思いきや、それが選考に落とされた原因になったことは不思議だし不運。何でもいいから彼女を宇宙に行かせてやれよ、と思ったのが本音。そうすればこれほど堕ちなかっただろうに。
最初から馴れ馴れしく近づいてきたマークは逃げれば追う典型的な浮気男で、宇宙からの帰還後に彼に出会ったのも不運といえば不運。
そして終盤の姪ケイトの立ち位置が微妙。共犯バディ物のようにコミカルに描きつつも結局裏切る形に。群れの中にスズメバチがいるという例えは、元夫と近づきになる姪のことだったのか…?というのは勘ぐりすぎだろうか。養蜂場で宇宙服に似た防護服で宇宙を夢想するルーシーが、あまりに不憫だった。
余談ですが、タイトルで真っ先に連想したビートルズの同名タイトル曲は、ルーシーが母を見舞いに行く場面でのみ使用。茫然自失の感覚を表現した演出がうまいと思った。