「ドキュメンタリーとしてもドラマとしてもあとすこし足りない」海辺の彼女たち 015🎬6/21RUN/Greedさんの映画レビュー(感想・評価)
ドキュメンタリーとしてもドラマとしてもあとすこし足りない
技能実習生の映画という断片的な情報だけ持って観に行ったら、“元”技能実習生の映画だった。
冒頭で「15時間働かされていた」「お金をもらえなかった」過去の職場から逃げ出してきたという言及があるが、まさかこれが技能実習生として働いていた職場のことだったとは。
この情報を頭に入れておくと、入れないとで大きく違う。
何故かと言えば、その後の彼女達の立場は『母国の家族に送金するために不法就労をするベトナム人』で固定されてしまうから。
なお、技能実習生時代のエピソードはこの断片的なセリフで終了。
恐らく同郷と思われる謎の仲介人(仲介料がバカ高い)により紹介された仕事は青森の水産物加工所のようだが、映像で見ている限りではそれなりに賃金も出ているし、温かい寝場所や食糧の提供もある様子。
怒鳴りつけるスタッフもいるが、怒る理由が至極真っ当なので、この辺の理不尽さを期待して観に行く人は肩透かしを喰らうと思う。
『海辺の彼女たち』というタイトルなので、メインの登場人物は3名いる。
ただし、正直なところ主人公役と言えるのはうち1人だけなので、実際は『海辺の彼女(たち)』という感はある。
全編を観た感想としては、
《良かった点》
・技能実習生たちを食い物にするシステム(仕事の仲介人、偽造MNカード作成者等)がリアルだった
・舞台が青森の港町なので、海外の労働力に頼らざるを得ない環境も見ただけで理解できた
・敢えてあの場面で切ったラストが昔のヨーロッパ映画みたいで良かった
《わかりにくかった点、共感しにくかった点》
・元技能実習生であるというエピソードをもっと入れてほしかった
・本当に相手は母国の人なんだろうか…
・多分病院のその対応、後で院長先生に怒られますよ
技能実習生の苦しい生活にスポットを当てた作品と言うよりも、家族か仕事かを選ぶ行動の方に重きを置いてしまったように感じる作品。
題材は良かったのにもったいなすぎる。