劇場公開日 2021年1月8日

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「映画ファン御用達作品」チャンシルさんには福が多いね シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映画ファン御用達作品

2021年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まずは「あまり韓国映画ぽくない作品だなぁ~」と、むしろ日本映画ぽい作品の様に感じてしまいました。
私の場合、韓国映画の根幹にあるのは「恨」だといまだに思っている人間なので、それが希薄だったのと、この作品は“映画人”の物語で、基本的に映画人に(外国に対する)排他的傾向がないのも韓国映画ぽく感じなかった原因かも知れません。
それとなにより、この主人公の一番好きな映画監督が小津監督ってのもそう感じた原因の一つでしょうね(笑)
この作品、名作・傑作の類の作品ではないかも知れませんが、(濃いめの)映画ファンには惹かれる要素満載の作品に仕上がっています。
特に、この主人公はアラフォーなので、この世代が映画に浸っていた時期は恐らく1990年代であり、日本ではミニシアターブームの頃で、私はこの人達より二世代上になりますが、丁度映画熱が再発した頃でもあったので、本作での映画に関わる会話が面白くて仕方なかったです。
特にど真ん中にいた同世代の映画ファンなら、一々笑えるシーンが用意されていて可笑しくてたまらなかったでしょうね。
例えば小津監督については、90年代に活躍した世界中の多くの映画作家が信仰していた対象の監督でもあり、その時期は小津監督が世界中で再び見直された時期でもあります。
そして、初デートでの会話で相手が好きだという監督がクリストファー・ノーラン監督ってのも絶妙だったし、更には下宿先の幽霊にその世代に絶大に支持されていたレスリー・チャンというのも絶妙でした。こういうシーンだけで監督の映画に関するバッグボーンまで見えてきて、映画ファンなら嫌いになれる筈もないという作品です。

それと、映画好きの観客とは別の意味で、良くも悪くも才能の有る無しに関わらず、“職業映画関係”という肩書きとプライドが、関連したスタッフの人生に深く深く浸食し、一般職とは違う特殊性を強く感じてしまいました。

シューテツ