「美しさの中にある"何か"を感じる為の作品」ノマドランド かぼちゃぷりん。さんの映画レビュー(感想・評価)
美しさの中にある"何か"を感じる為の作品
クリックして本文を読む
本年度アカデミー賞 作品賞 受賞作品。
経済不況によって長年住み慣れた家を失った女性がキャンピングカーで旅をしながら再出発し、そこで出逢う人々との交流をアメリカ西部の広大な自然を背景に描いていくロードムービー。
率直な感想として、とても素晴らしい作品でした。
従来のロードムービーは人と人との交流や友情などに重点を置き、そこにある感情を読み解くことで共感を得るのがスタンダードであるが、本作はその交流や感情に重きを置いてはいない。代わりに自然の美しさや雄大さを余すところなく前面に映し出し、失った"何か"を探す旅のなかで、人間という存在がどれほどちっぽけなものかを感じさせてくれる作品に思えた。
更にストーリーを進めていくと、主人公のファーンが探しているものは実は見つからないのではないか、"何か"とは形としてあるものではない"何か"なのか、自然の美しさが目立つ前では何もかもが小さく見えてしまい、そもそも探している"何か"というもの自体ないのでは?と考察が膨らんでしまった。私の映画知識の中でそれはとても新鮮な体験で、観る者にそういった感情を抱かせてくれるのも新鋭クロエ・ジャオの手腕なのではないだろうか。旅を重ねていく中で、沢山の人との交流のなかに様々な思いを感じ取っていくファーン。そこに明確な答えはなくとも、それぞれがこの生活に誇りと自由を持って生きていることに感化されていく彼女がまた美しく画面に映っていた。
ラストも明らかな答えというのはない。だが、その答えは観る者に委ねられる。この後、ファーンはどのように生きていくのだろうかと考察することでこの作品は美しく輝くのではないだろうか。
コメントする