国境の夜想曲のレビュー・感想・評価
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夜想曲
予告をみてこれは映画館で見なくてはと。 普遍的な悲しみと日々の営みが心に迫った。 もともと関心があったので、これはイラクかなこれはクルドの女性兵士かなとかなんとなくは背景がわかる。あまりそこに意味はなくて、映し出される表情やちょっとした会話、風景が物語るものを見る映画だと思う。 こんな風になにかを表現してみたいな。 監督のコメントを引用。「実際の暴力性は、爆撃が起こっている数キロ先の人々の生活の中にある。戦いの衝撃波は長く、遠くの日常にまで響く。私はその『日常の痛み』の方に近づきたかったから、戦争をこだまのように描いた」 敢えて名前も地名もない人々を映すことで彼ら彼女らと似たような境遇のさまざまな場所の人たちに想いを馳せる。
静かに戦争を考える
ごめんなさい、油断して寝落ちしそうになりました。淡々と紛争地帯の現実を見せつけられる。正直、もっと刺激が強い映像を予想し期待していました。しかしこれが現実なんだなと、煽るような説明もナレーションもない。どんな状況でも人々は生活を続けている。結論付けたものはない、後はそれぞれで考えて行かねばならないんだろう。
「ある人質」「モスル」
上記2つを観ていればそこそこついていけるかな、と(たぶん…)。NHKの深夜帯に流れてる環境映像の様な作品なので、油断すると即寝落ちです(苦笑)。 中東、アフリカ、南米。知ろうとするべきなのは何もウクライナだけじゃないという事だろう。兵士に獲られ捕虜(人質)として捕られた女性の母親の慟哭が突き刺さる。 生まれた時から機関銃と自動小銃の射撃音が虫の音と同じ様な世界の日常を切り取った作品。
同じ時代を生きる者として
先日「風に舞い上がるビニールシート」読んだのですが、紛争地域では、ヒトの生活も命も、すぐに吹き飛ばされる。しかも、安全な処に着地できる保証はない。そう、ヒトの生活基盤なんて、ビニールシートより軽いんですね。 チラシによると、この映画は光だそうです。ただ、その光を受け入れるまでの闇が、余りに深い。ストーリー仕立てではないので、映画としてのインパクトは弱い。でも私達の日常は、そもそもドラマ仕立てではない。それに、国境の日常は、私達の非日常だと、思い知らされます。残虐なシーンも皆無なのですが、ヒトに刻まれた残虐な記憶が無くなることも、皆無のようです。 哀しみは、時間をかけて小さくできるそうです。でもゼロになることはない。小さくなってポケットに収まっている。そしてある日、ふと、甦る。そんな時、誰に何を伝えたらいい?。実は、何も伝わらない。ただ伝えたい人と、何とか受け止めようとする人が、いるだけなのかも…。 別の国境で、新たなる哀しみが、産声あげたようです。昨日までのお隣さんが、良く分からないイデオロギーの違いの為に、殺戮し合うとすれば、本作は一体何の為にあると思いますか?。ヒトにとって、どんな意味があると思いますか?。あるいは…。 映画はあくまで、お金を払うエンタメコンテンツです。ただ、何かを伝えたいと願う人と、勘違いでもいいから、受け入れようとする人がいる限り、続いてほしいものです。それが、拡張主義のクニに対する、私なりの、ささやかな抵抗だから。
何に加担しているのか、何に加勢できるのか
本来ならFertile 豊穣な土地が荒涼として暗く痛く不気味ですらある。 エンドロールで確認する、レバノン、イラク、シリア、クルディスタン、、豊穣な土地が、戦争と殺戮と恥辱と貧困と、あらゆる苦難の土地に、[国]になったのか。 終始無言に、しかし美しく暗い闇の時代を生きる土地が、川が、空が、人々が、映し出される。静寂。音楽は精神科病院の芝居のシーンのみ。 音楽やナレーションや説明に感情を揺すぶられたり流されることはない、ひたすら見ている者を突き落とすような、または記憶をたどりこれは何なのか、手がかりを自分へもっているのかを必死に思い出そうとするしかない、美しい映像、冷たいが人間の眼差しをもって突き刺してくる映像。そして何も知らない、無知なる自分を恥じるしかない。事象として、知識として知っていたとしてもなんの役に立つものか、、 自分は一体何ね加担しているのかいないのか、そして、何かに加担できるのかできることはないのか、 脆弱、暗闇、夜想の中でそのことばかり。 それでもアリは母たちは兵士たちは子どもたちは病院の医師も患者たちも街を行き交う人もキャンプの人も生きて行く。視界には遠く小さくてもキラキラと光があるから。
恐怖と緊張の中にある日常
シリア、レバノン、イラク等の国境付近で3年間に渡り撮影されたドキュメントムービー。説明も語りも音楽も殆どなく、淡々と響く生活音や銃声。どうやって撮ったのかと驚くような美しい映像の中描かれる、緊張の中にも必ずある人々の生活の息吹。その緊張感がヒリヒリと伝わってきた。 息子が殺された牢獄の壁を撫でて、嘆き悲しむお母さん、ISの虐殺の場面を見てきた子どもたち、今もISに誘拐され戻れない女が密かに送ってくるメッセージを何度も聞くお母さん…日本では想像もつかないことが現実であるということ。 ただ、あまりに詩情豊かな美しい映像で説明などもないため、ドキュメントとしての「現実を伝える力」は弱まったように思える。彼らの恐怖はこんなものではないと思うし、ISの存在感も感じられず。唯一出てきた国名が「アメリカ」だけというのも偏っている気がした。
銃声が聞こえ続ける日常
ドキュメンタリー、かつ通常触れる事ができない映像だろう、、、と推測し、TIFF2020にて鑑賞。 全体的に緩慢な作り。 重要な映像もあるのだろうが、 どーにも訴えてこない。 映像として流れているだけ。 もちろん、現地の状況を伝える重要な 映像だとは思うものの、記録映画っぽい。 大変失礼な話だが、途中何度か寝落ちして しまいました。(そんな僕が感想書いてよいのか?は置いといて) 僕としては、日常生活、綺麗な風景のバックで、 タタタタタ と当たり前のように、遠くてなる鐘の音の ように響いてる機関銃?の音が、 この悪夢に終わりがあるのだろうか?と 絶望に近い感覚を覚えました。 (2020年鑑賞時レビュー)
戦争はすべての人に 悲しみが降りかかる
特に子供への影響は大きい。 悲しい絵の羅列には ショック☆<( ̄□ ̄;)>☆ショックでした。 毎夜のように響き渡る 銃声。 子供を失った母親たちの悲しみ。 平和な日本に生まれて良かったわ。
イスラム教と聖地と祖国を捨てよ
新聞の切り抜きをベタベタと貼り合わせたような映画である。兎に角ダーイッシュ(ISIS=イスラム国)の連中から酷い目に遭ったという話や、町はもはや瓦礫の山で、辺境の住民は女と子供だけが残されて、明日も知れないその日暮らしの貧しい生活をしている話である。悲惨な話やシーンや風景の連続だが、多すぎて徐々に麻痺してくる。だから何?と思ってしまうのだ。 祖国などという言葉を後生大事にしているようでは、いつまでも被害が続くだろう。逃げ出す勇気が必要なのだ。他所へ行っても安全や生活は保証されないかもしれないが、不幸が約束されているこの場所にしがみつくよりはずっといい。 宗教には聖地などという馬鹿な幻想がある。エルサレムやメッカといった場所にこだわるから、その場所を巡っての争いが起こる。その場所に権威や名声を認めるからいけない。権威や名誉といったつまらないものにこだわるのは常に男だ。 イスラム圏はすべて男が支配し、女は望むと望まないとに関わらず、子供を産む。人口は増え続けるが、殺される人口も多い。女たちにとって聖地など糞食らえだろう。イスラムの戒律など女を不幸にするばかりだ。必然的に子供も不幸になる。 本作品に出てくる不幸な人々は女と子供ばかりである。逃げ出すにもその方法がわからない。実際に逃げ出そうとすれば、銃を持った男たちに殺される。世の中に対してマウンティングをしたいだけのダーイッシュの精神性はジャイアンである。ガキ大将だ。要するにクズである。 しかし人口から考えて、ダーイッシュばかりがイスラムの男全員ではない。ダーイッシュでない男たちの中には勇気がある者もいる。難民となってもヨーロッパに逃げ出す勇気である。子供を作らない勇気である。この不幸の連鎖を止めるためには、ダーイッシュと戦うか、逃げ出すか、子供を作らないかのどれかまたは全部の方法しかない。 他国が軍事的に介入しても失敗することは、アメリカの事例を見ても明らかだ。地元の人はダーイッシュと同じくらい他国の軍事介入を憎んでいる。ダーイッシュが根絶しないのは地元民が根絶させないからである。有権者が自分と同じレベルの政治家しか選ばないのと同じである。イスラム教徒がイスラム教と聖地と祖国を捨てない限り、イスラムに平和は訪れない。
夜明けのうた
饒舌な映画もあれば、この映画のように心が伝わればという映画もある。 最近ドキュメンタリー映画を観る頻度が多くなっている私的には、この映画のような共感力を求める映画は確かに観ているのはしんどいが、そこに監督が感じた思いを反芻できる醍醐味も感じられた。 シリアや他の国境地帯で撮られたというこの映画。ISISがなにをしたか、そして世界がその行為で何を失くしたか!? またどういう希望を持って、かの地の人は生きていっているのか!? 答えは私達にも突きつけられている。その答えも自分の目で観て確認して下さい。
芸術作品じゃないなら説明を!
芸術作品としては、いいのかもしれないが、さすがに説明がないとわからない。 どこの国の話で、何の映像なのかがわからないため、ドキュメンタリーとして成立していない。 三年の歳月をかけて撮ったということだが、どこかで見たことがある映像ともいえるため、この映画で訴えたいメッセージが伝わってこない。 中東の戦乱地域のイメージ映像としてはいいのかもしれないが、ちょっと残念な作品。 素材をそのまま流すことは、ありのままの事実を伝えることにはならない。作品として仕上げてほしい。
すき好みはあると思いますが、平等に描かれていて極めて高評価。
今年37本目(合計310本目/今月(2022年2月度)9本目)。 1時間30分でテアトル梅田さんまで移動して見たのがこちら。 105分ほどの映画で、分類的には「ドキュメンタリー」になりますが、映画というほどにはびっくりするほど字幕がほぼ出てこず、「字幕が出る部分だけを全部集めても」5分くらいにしかならないのではないか…と思います。大半(というより、95%以上)、音楽とともに流れる、このISIS問題に苦しむ住民たちの悲しさが伝わってくる内容です。 この関係(字幕が大半ない)ことから、「何を述べたいのか、映画の趣旨がわかりにくい」ところも確かにあります。ただ、ISIS問題は今では常識ですし、ISISの被害にあった人、また、「もうどうでもいいから、さっさと安定した生活を送りたい」という人、そういう方に密着して撮られたのだろうと思います。 さて、ISIS問題に関して、この映画は配慮があります。一般的にISIS問題を描く映画だと、実話ものベースで「ISISをやっつけておしまい」みたいなアクションものが多いのですが、当然、(日本も国として承認はしていませんが)ISISや、極論すれば北朝鮮等にも「言い分」はあるわけであって、この「言い分」についても一定の配慮が見られます。 つまり、今のISIS問題や、そもそもパレスチナ問題や、中東の混沌とした状況を作り上げたのは、もとはといえば、20世紀初頭のイギリスの「サイクス・ピコ協定」ですが、条約や国名こそ出ないものの、「本映画は、近現代にヨーロッパが結んだ条約によってもたらされた、パレスチナや中東の悲劇を描く映画」という趣旨のことが出ます。さすがに「サイクス・ピコ協定」まで出して「イギリス叩き」をするのは変な話ですが(それもそれで趣旨違いとは言える)、ISISも「国だ」と主張したのも元はといえば「サイクス・ピコ協定」なのであり、この問題を語るにあたっては、ISIS問題は外せないのです。これをはずしてしまうと、日本でのISIS問題の報道が、アメリカの主張寄りになっていたため、「ISISはけしからん」ということになり、一歩間違えると「イスラム教は危ない宗教だ」ということになりかねないからです。 しかし、程度を超えると問題になるとはいえ、ISISがなぜ「国だ」と主張してここまでモメたのか(あるいは、今でも解決しないパレスチナ問題)は、結局全部、イギリスの責任になりますので(いわゆる「二枚舌/三枚舌外交」と呼ばれるもの)、それをもって「イギリスを叩く映画」にするのは変ですが、史実としてはそうですので、イギリスのこの問題について軽くでも触れたこの映画は極めて評価は高いです。 一方、ドキュメンタリー映画という事情と、「本当に字幕が少ない」という事情はどうしてもあるので(字幕にいたっては、全部かき集めても5分にも満たない?)、下手をすると「イラン・イラク、当時のISISの戦闘を見るだけの映画」という評価にもなりかねないのが残念なところです。また、ISISを取り巻くこの戦争は、色々な民族や宗教が絡んだ複雑な戦争ですが(少数民族なども迫害されている)、およそ高校世界史で習わないようなマニアックな字幕も出る等、かなり本格派です。ただ、パンフレットが700円と比較的良心的なので、そこまでは気にならないかな…というところです(ISIS問題は正直、全部が全部、完全に説明して完全に平等に描こうとすると、本当に5時間コースになる)。 採点にあたっては、下記を考慮しました。 ------------------------------------------------------------------------ (加点2.0) ISISを扱った映画(ないし、この映画でもちらっと出る、パレスチナ問題)はよくありますが、元となったイギリスの諸問題(サイクス・ピコ協定)には触れない映画も多いです。ただ、この映画は固有名詞こそ出ないものの「西洋が結んだ条約にイスラエルや中東は翻弄され…」と出ることから「事実上出ている」と評価でき、この点において、「ISISの言い分」も理解できる作りになっていた点、ここは高く評価しました。 ※ 要は「平等に描く」ことが大切なのであり、この手の映画で、その都度(ユダヤ人問題、イスラエル、ISIS等)、イギリス叩きをするのも変な話ですが(ストーリーが支離滅裂になる)、「何も出さない」映画が多い中で、ちゃんと「固有名詞こそ出していないが、事実上出ている」という点に着目しての「平等原則」に照らしての加算です。 (減点0.4) 映画内では事実上、内戦状態にあったISISを中心とする国を舞台に描かれます。このため、英語は一切でない(上記の「ヨーロッパの近現代の条約~」は冒頭に英語で出ます)一方、舞台の大半はアラビア諸国なため、看板等も全てアラビア語なのですが、この翻訳が大半ないため、やや翻訳不足かな…という気はしました(とはいえ、あの荒れた街中の落書きなんて、どうせ翻訳しても「イスラム教を信仰しましょう!」とか「コーラン(クルアーン)は毎日読みましょう!」とか、ISISよりな「いたずら書き」しか書いていないと解するのが妥当)。 この点に関しては、「字幕少なめ、映像でみせるタイプの映画だからこそ」の減点対象なのであり、通常の映画ではこれ(字幕の翻訳不足)は0.1程度ですが、「いかんせん、字幕が大半ない映画」という事情を考慮してのものです。
タイトルなし
様々な情勢により巻き起こる侵略・圧政・テロ 多くの人々が命を落とし 痛みに満ちた土地 イラク・クルディスタン・シリア・レバノンの 国境地帯 ロージ監督がひとりで訪れ撮影し その地で生きる人々の姿を映し出した ドキュメンタリー作品 バイク、車、蹄、祈り、銃声 聞こえてくる"音"に圧倒された ISIS侵略により起こった悲劇 心に傷を負った子供達の描いた絵 多くの悲しみの中でも生きていく 人々の営みと景色を照らし出している
東京国際映画祭 7日目鑑賞 先日鑑賞した“二月”のような詞的な要素...
東京国際映画祭 7日目鑑賞 先日鑑賞した“二月”のような詞的な要素の強い作品。ただし背景は全く違い、中東の紛争地帯を映してゆくドキュメンタリー。 こういった作品は公開される可能性はあまり高くなさそうだし、公開されても選ばない可能性もありそうで、そこは映画祭ならではなんだろうと思う。 長回しのカメラワークと、なりやまない銃声をバックに映し出される映像は美しいのだけれど、これまた、現実世界に留まっているのが厳しい作品でした💤
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