「資本主義と分断の行き着く先。金より命があまりにも軽い。」ニューオーダー nyaroさんの映画レビュー(感想・評価)
資本主義と分断の行き着く先。金より命があまりにも軽い。
ひと昔前なら主人公が自らの選択によってひたすら悲惨な目にあう実存主義的な不条理映画と捉えたでしょう。ですが、この作品で気が付くのは、世界ので起こってもおかしくないリアリティです。特にメキシコにおいては実話に基づくとか言われても納得しそうです。
そして、この映画を見るときに誰の視点で見るか?というのもポイントになる気がします。金持ち、労働者階級のどちらでしょう?入院云々の話などで主人公のマリアンをいい人に描いているし、はじめの方の展開が彼女中心なのでマリアンに乗っかる感じもあります。一方で、前半では金持ち階級が嫌な感じで描かれていましたので、彼らが悲惨な目にあって悪い気分ではないのも事実です。裸で水をかけられるシーンも、エロというよりみじめさが際立っていて、金持ちも剥かれれば一緒などと思ってしまいます。
ですので、ひょっとしたら我々の打倒金持ちの妄想を映像化したという意味もあるかもしれません。
で、この映画なぜ緑か?ですよね。緑は自然…ではなく、アメリカでは不吉な色の様です。毒のイメージもあるみたいですね。キリスト教だと異教徒の意味があるそうです。メキシコの国旗を最後に移したので国旗が表す色として、緑・白・赤は、それぞれ独立・信仰・統一の意味だそうです。つまり、独立ですよね。ニューオーダーとは新体制の意味ですので、この映画の内乱の意味が独立ということなのかなと思わなくないですが、やっていることは誘拐犯罪とテロリズムなので何とも言えません。
逆にマリアンの印象的な赤いスーツとあわせて、映画そのものがメキシコを表現したともとれます。
一方で、冒頭にマリアンが全裸で緑の床に白壁の中、びしょぬれで立っていました。つまり、「統一」の赤がない状態です。そこに屍の山が血(赤)だらけで映されるので、統一は血によってなされているととることもできるでしょう。
20万ペソとか80万ペソとか金と命の比較を強調していました。細かい金のやり取りで命が奪われていくところ、軍のエライさんが国を牛耳っていること。金より命。それがメキシコの現実でもあるでしょうし、世界のどこでこの事件が起きても不思議ではないです。つまり資本主義と分断の行き着く先でもあります。日本では起きませんようにと祈るだけです。
具体的な話ですが、象徴的なイメージもあって少し難解です。1度見ただけでは正解到底たどり着いたとも思えませんでした。グロテスクな映画と言われているようですが、私は世界で起きていることの方がよっぽどグロテスクな気がして、そこは気になりませんでした。