「家族と暮らす「青い家」が1番なんだ 一緒にいることが幸せなのだ。 彼の涙がそう語った。」ボヤンシー 眼差しの向こうに YAS!さんの映画レビュー(感想・評価)
家族と暮らす「青い家」が1番なんだ 一緒にいることが幸せなのだ。 彼の涙がそう語った。
映画の最初からラストに向かって、どんどんと青年が成長し、顔つきが変わっていく演出は見事だ。
撮影期間を必要以上に永くとったのだろうか?
いかにも”居そうな船長”の存在感と演技は人間味があり、実にうまい。
それ以外の演者の演技も申し分なく、監督の演出の素晴らしさが光っていた。
バストショットが多い撮影もTVドキュメンタリー感がでており、迫力と臨場感があった。
ただ、タイ外洋の設定に沿った”抜けるような海原”のカットが幾つか欲しかった。
これはカメラマンが気を利かせて、保険的に撮っておくべきだろう。
また、ストーリー的にもリアルさの意味でも、
船長たちが少年に、もう少し操舵を教えた方が良かったと思う。
女の子は売春婦へ、男の子は奴隷となって、ブローカー達に転売され続け、命の重みはない。
半世紀以上前なら判るが、2000年を過ぎた今日ても、
このような極悪環境で生きている人が、いる事がとてもショックだ。
東南アジア全域にわたる貧富の差という「社会構造」が悪いのだが、
1番悪いのは教育を受けたいない貧困層は自分の手で、貧困さを解決しようとせず
産まれた環境に流されることを”良し”としている事なのだろう。
こんな事を何代繰り返していても、何も変わらない。
しかしそれを自力だけで打破しようとした主人公の行動は建設的で素晴らしい。
また働かされる場所でも、
適応能力があり、辛抱強く、意志の強さも備え”生きる力”は十分だ。
少年が家に帰った後をもう少し、観たい気もするが、
「あと、もうちょっと」のところで終える脚本はすばらしく
最後に少年の流した涙は”何が正解”か、僕たちに答えを教えてくれたような気がした。
現代版「青い鳥」が僕らに教えてくれた事は
運命に逆らわず、不満をもたず、1日1日を精いっぱい生きることが本当の幸せなのだと
そして明日
少年はまた殺虫剤を撒くだろう。
この映画を観たら、昔の映画だが、
本映画とは違った「太陽がいっぱい」を観て、主人公を比べたくなった。