「不法な労働環境から脱するために」ボヤンシー 眼差しの向こうに h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
不法な労働環境から脱するために
東南アジアやアフリカでの不法な強制労働とそれに伴う悲劇がいまだに後を絶たない。
2013年4月にバングラデシュの首都ダッカ近郊で発生した「ラナ・プラザ崩落事故」は、著名な大手アパレルの下請けの過酷な実態が明らかになった有名な事件だ。
全世界で約1億7千万人の子どもたちが働かざるをえない状況にあり、今でも人身売買が当たり前の国もある。
私たちが日頃手にする商品は、新興国の過酷な労働環境下で生産・加工されているものも多い。前述の衣料だけでなく、水産加工物やコーヒー豆、カカオなど普段口にする食品も多い。
日本を含めた先進国が恩恵を受ける低価格の構造は、裏を返すと生産プロセスの歪みに直結し、この映画の悲劇は私たちと関係のない話ではない。
以前は「途上国」だった日本でも同じような問題は存在した。小林多喜二著の「蟹工船」は著名な作品。増山実著の「波の上のキネマ」においても戦前の西表炭鉱での島抜けできない過酷な労働環境の実態が描かれている(※映画愛に溢れた小説。映画好きの方は是非ご一読を)。
唯一絶対の解はないかもしれないが、ただ私たちは傍観者でいることはできない。よその国の話だと目を背けることなく、間接的な「加害者」であることを忘れない。フェアートレード認証の商品を購入にしたりと、少しでも個人でできることからはじめていく。そう思い行動に移すだけでも、この映画のメッセージの価値はある。
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