「あの頃と、今も大切に。 (恥ずかしいセリフ禁止!)」ARIA The CREPUSCOLO twilight reviewさんの映画レビュー(感想・評価)
あの頃と、今も大切に。 (恥ずかしいセリフ禁止!)
『未来』に続く、夜明け前の物語――。
TVアニメ放送開始から15周年。
原作、アニメともに終わりを迎えたARIAの新たなる第二章は、『水の三大妖精』に数えられたアテナ・グローリィ、操舵の天才と名高いアリス・キャロル、そして一人前のウンディーネを目指すアーニャ・ドフトエフスカヤ属する『オレンジぷらねっと』に焦点が当たる。
突き抜けた力量を持ちながら、大切な相手には人一倍不器用な彼女達。ARIAが持つ暖かな空気はそのままに、あるエピソードの裏側や未放映の原作エピソードなどを交えながら心の交流を描く今作は、ファンにとってたまらない一作となっている。
今回鑑賞した中で特に印象的だったのは、原作者である天野こずえ先生がそのまま描いたような、登場人物達の豊かな表情。
……と、もう一点。アテナさんが再びARIAの輪の中に戻ってきてくれたことだ。
元々アテナさんは声優の川上とも子さんが役を務めていたが、病気の為お亡くなりになってしまった。そのため前作の『AVVENIRE』では歌唱のみの出番であったが、今回からは佐藤利奈さんが声を当てている。
その声と演技は、私個人からすると、川上さんが演じた時と全く変わらないアテナさんそのものだった。アリスに語りかける時の柔らかな口調などはまさに「アテナ・グローリィ」で、途中ライブラリからの出演かと疑ってしまうほどだった。
もちろん、声が似ていればいい、演技がそっくりそのままならいいというわけではない。
正直、本作を鑑賞する前まで、アテナさんに誰かの声がついてしまうことには複雑な気持ちだったけれど、役を受け継ぐ方は、似たような声を出せるという、そんな簡単な理由だけで務めるわけがないのだ。
佐藤さんが演じたアテナ・グローリィは確かにアテナさんだったし、川上さんを含めた精一杯のアテナさんだったと心から思う。だからこそ、何の違和感を持つこともなく自然にお話へ集中できたし、アテナさんという、ある意味離れてしまったキャラクターが再び帰ってきてくれたことを、素直に受け取れたのだと思う。
愛しい過去を振り返りながら、しかし同じくらい今を大切に生きようと前を向く彼女たちの姿は、『CREPUSCOLO』の言葉通り、見ている者に優しい夜明けを感じさせてくれる。