「上映時間をあと15分くいとめてたら間違いなく傑作になった」私をくいとめて わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
上映時間をあと15分くいとめてたら間違いなく傑作になった
「勝手にふるえてろ」が大好きなので、どうしても比較をしなければならなくなってしまいます。松岡茉優がものすごい情報量の多い独り言を上手くこなしていたのですが、果たしてのんはどうなのか…とやや疑念的に劇場に向かっていったんですけれども、御見それしました。本当にのんが輝いている輝いている。演技力も明確にメリハリを持って演じているので、彼女だけが移っているシーンだけでも全然飽きない、飽きさせないパワーを持っていると思いました。
前半と終盤は、のんがAと名乗る自分自身とどんどん会話を重ねていくので、会話劇として非常に面白いんですけれども。そして、あまちゃんを見ていた勢としてはあまちゃんのコンビ復活なんて否応なしに燃えるんですけども。
しかし、こののんと橋本愛の共演シーンである中盤のイタリア旅行のシーンが作品の根幹にそこまで触れておらず、橋本愛演じる役のサイドストーリーにしかなっていないところが非常にもったいないなあと思いました。確かに橋本愛が演じる役は、海外結婚という人様から見たらしあわせな幸せな選択をしたかのように見えて、海外の生活で孤独を感じている。のんが演じる役は、橋本愛を失って恋もうまくいかず自ら進んで孤独(劇中ではおひとりさま)を選んだという対比はストーリーの展開に有効だったのはわかります。わかりますけど30分近くここに割くのはもったいないというか、短くできるだろうという印象がありました。
また、のんと中村倫也が演じるAのやり取りが面白すぎるっていうのもあるんですけど、コントチックな演出になるところが逆に冷めてしまうというか。特にカーターのシーンは全カットしてもいいんじゃないかと思うくらいノイズでした。中盤の間延び間の原因の一つとしてもあると思います。
主人公は最終的に成長することはできたのかはわかりません。しかし、まさかAがあのような外見で、丁寧に伏線を張っていたとは思っておらずなるほどなあと思わされる海のシーンでした。のんという才能を今のような頻度で今のような露出のさせ方にするのは本当にもったいないことであると改めて再確認させられました。また、綿矢りさ原作と大九監督の相性の良さも再確認しましたし、吉住さんの出演が本当にピンポイントで成功していたというか、奇跡的なキャスティングだと思いました。観に行ってよかったです、