劇場公開日 2020年11月13日

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「実話に基づいたとてもよかった映画+日本も考えないと。」THE CAVE サッカー少年救出までの18日間 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5実話に基づいたとてもよかった映画+日本も考えないと。

2020年11月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 今年50本目は色々悩みました。「実話ベース」「感動もの」といろいろ考えましたがこちらを選びました。実際、正解だったようです。

 多くの方が書いている通り、実話に基づくお話(洞窟の遭難事故)です。
タイをはじめとする東南アジアには特有の雨季があり、それによるトラブル(冠水事故、農業が成り立たない等)もあるようです。ただ、それは自然災害であり避けることができませんが、それを教訓に「この場合はこうする」「トラブルにならないようにマニュアルを作る」という"減災"の考え方はあります。くしくも日本も梅雨・台風がそうであり、また何度かの大きな地震が多くの人命を奪ったこともあり、自然災害には勝てませんが、ハザードマップの確立や早期避難の概念が確立し、100%とはいえないものの、日本は「減災」の方向に着実に動いています。一方でトラフ地震など潜在的なリスクはまだまだ抱えており(実際におきたら東日本大震災を超えると言われる)、日本もまだまだ考えないといけませんね。

 さて、この映画は史実に基づくお話ですが、この史実を伝えるという部分以上に気になったところ、それは「タイの排他的なところ」です。国内でさえ手伝いたいという業者がいるのに「なんとか省の許可がないとダメ」といわれたり、国外からボランティアで手伝いを申し出たのに(一度は)断っていたり、「それどころじゃないでしょ」案件でそんないわゆる、「マニュアル的対応しかできない」ところです。まぁ、いわば縦割り横割り行政や排他的なところですね。ただ、今回の事件が大きな教訓となり、自然災害(特に、タイの場合は雨季には勝てない)に対するレスポンス、つまり日本でいう「減災」の考え方が広まっていったり、「こういう場合には行政の縦割り横割りも国外からの協力もいとわず受け入れる」という方向になっていくのでしょう。

 ※ タイは「発展途上国」とはいわれますが、「政治的途上国」ではないので(つまり、国王が好き勝手する支離滅裂国家や、人権侵害が支離滅裂な国ではない)、今回のことをまったく教訓にしない、ということはないと思います。そのために救助隊に1人の犠牲者が出ましたが(史実通り)、その方のご冥福をお祈りするとともに、タイ含めてこうした「自然災害に対してどう対応するか」という「減災の考え方」および、「こういう非常事態には国を超えて助け合う」ことが当たり前になればよいな、と思いました。

 評価は下記を考慮して4.5としました。中には1行だけで2点とかつけている方もいますが、私はそういうのは好きではないので客観的に考えて根拠も示して点数も示しています。

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 0.2点減: 今回の実話に基づくこの事件が起きたときは、まだタイが「国の許可を取れだの(いわゆる行政の縦割り横割り)、外国の助けはいらない」だの言いじめたことでさらに問題が複雑化したのですが、そこの問題提起がちょっと足りていないように思えました。

 もちろん、あまり触れたくない問題(たとえば、宗教に関することなど)であればわかるのですが、タイとしてもこのことは重く受け止めて「自然災害(雨季)がおきたらこうする」ということは考えていくようになったのは明らかであり、タイ(という国の政府)がそれに待った、つまり「それは描写するな」と言ったとは思えず、ちょっとそこは残念な点ですね(特に誹謗中傷するのでない限り、タイのこの後手後手対応を批判する程度であれば正当な範囲の描写)。

 0.1点減: タイの方でもテレビ局の方などは英語を使えるようですが、一部に致命的な文法誤りがあり(動詞 continue の使い方、関係代名詞など)、どちらの解釈も成り立ちうるため(当方準1持ち)、「字幕が正しいのか発言が正しいのか」で矛盾する点があるところです。ただ、ここはかなりマニアックな点かと思います。

  ※ 興味がある方は、「関係代名詞 which の非制限用法」などでググってみてください(日本の大学入試でも出題される難解論点だし、英語がいかにグローバル言語だとしてもタイでそんなに厳密な英文法を求めるのも酷なので、あまりそこは気にしないですが…)。

 0.2点減: 実はこれなのですが、タイが舞台の映画であるため、タイ人の方は多くの方がタイ語を話しますが、中には新聞記者・ニュース報道などでは英語を話している人もいます。一方で海外からきたレスキュー隊は(一部を除いて)英語です。

 このような場合、英語の字幕はそのままとし、それ以外の言語は《○○○》などとするのが普通だと思うのですが(その○○○に該当する部分に英語翻訳と日本語翻訳を入れる)、それがない以上に、ごく一般的な語句はタイ語にも入っているようで(たとえば、タイ人の農民?の方がスマホで話しているときに Hello? などと言っているのは、おそらく英語からタイ語に来たのでしょう。スペルは違うと思いますが)、余計に「何語なのかわからない」状態が生じてしまい、最終最後は「描写されている人の人物像などから英語かタイ語か判断せよ」になってしまっており(例えば、タイの一般の農民が「完全な」英語を話すとは考えにくい)、一方で「片言の英語」も出てくるため(上記のスマホの件)、余計に大混乱し、「言語関係」に無頓着かな…とは思いました(上記の2番目の0.1点減とも関連します)。

 ※ 例えば、少し前ですが「ANNA」だと、英語中心で、ロシア語の場合だけ《○○○》となって、英語翻訳と日本語訳が併記されており(確認済み)、この混乱は生じません。
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yukispica