「人間には輝ける場所がある」十二単衣を着た悪魔 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
人間には輝ける場所がある
黒木瞳・「嫌な女」に次ぐ監督第2作品目。
原作は内館牧子「十二単衣を着た悪魔ー源氏物語異聞」
優秀な弟にコンプレックスを持つフリーターの伊藤雷(伊藤健太郎)は、
雷鳴に打たれた途端1000年以上も前の紫式部の小説「源氏物語」の
世界にタイムスリップしてしまいます。
そして光源氏を忌み嫌う弘毅殿女御(こうきでんにょうご=三吉彩花)に
仕えて陰陽師として認められ、成長して行く物語りです。
「源氏物語と疾病展」でバイトしていたフリーターの雷(らい=伊藤健太郎)は、
パンフレットであらすじを知っていたため、
未来を言い当てたり、
バイト先で貰った風邪薬が弘徽殿女御に効いて、
すっかり信用をされて陰陽師・伊藤雷鳴を名乗ることとなります。
弘徽殿女御とは帝の寵愛を桐壺更衣に奪われた言わば第一夫人。
息子の春宮(田中偉登)が異母弟の光源氏(沖門和矩)に人気で叶わぬ事を
面白くなく思っている。
弘毅殿を演じる三吉彩花が力強くハマり役。
気が強くリーダーシップのある姿に雷鳴は、
「生まれた時代が現代なら女性総理第1号になれたのに・・・」と、
思う。
理想の女性上司像を《眼力の強さ》と《体格の良さ》
《力強い台詞》と、「ダンス・ウイズ・ミー」より魅力的に見えました。
また光源氏は歴史上名だたるプレイボーイだが、義母に当たる桐壺更衣と
不義密通をしていたりと、桐壺が産んだ子が実は光源氏の子では?
と、弘毅殿は睨みます。
弘毅殿の桐壺への一言、
「全部知っておりますぞよ」
が、悲劇を生み弘毅殿が「源氏物語最強の悪女」と呼ばれる所以です。
「源氏物語」ワールドは、現世よりさらに魑魅魍魎。
だから1000年も愛されるのでしょう。
現実世界では、就活59連敗と、
気が利かない、
空気が読めない、
役に立たない、
その雷が、平安時代では、陰陽師として重用され、
倫子(伊東沙莉)と結婚までセッティングされて、
次第に愛し合うさま。
人は環境により生かされる場があるのだろうか?
(原作では雷は雷鳴として30年暮らしたとあるが、
突然また現世に戻ると、わずか1日しか経ていません)
雷にとって倫子は本当に愛しい人だった。
(倫子は原作では、出っ歯で糸目の驚くほどのブスとある)
誰がキャスティングされるかと思ったら伊藤沙莉さん。
ときにおブスにも見えますが、雷を心から信じる愛らしさを
見事に演じて儚さも感じられる好演。
現世に戻った雷は弟の京大合格を心から祝う兄に成長して、
ラストには思いがけぬサプライズもあり、
なかなか面白かったです。