スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話のレビュー・感想・評価
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正しさでは救えない問題
全体的に見やすい映画だった。髪の毛がくるくるとした患者が愛くるしく、所長の婚活や、取り巻く問題など見やすく表現されていた。
事あるごとに「正規の手続きに違反しているのでは?」と職員が問いかけるが、「それじゃあ、閉鎖します!あとは政府がなんとかしてくれるんですよね?」というシーンが非常に共感できた。正規の手続きではないセクターが受け皿にならざるを得ない現実をうまく表した作品だと感じた。
社会が見捨てた自閉症児達とケア施設のプロ二人、若者達の日常を描く
コラボ問題を想起させる
DVDを借りた時、意図は何もなかったが、昨年末から炎上している若い女性救済組織と銘打つNPO法人Colaboの問題を思い出す作品だった。対象的なのは、どちらも監査されてやばいのは同じながら、Colaboが税金を雑に使っており、援助不要な女性を餌にしていると民間人から批判されているNPO法人なのに対して、作中の『正義の声』は、国と社会が無視する援助を必要としている自閉症児を少ない予算でなんとかやりくりし、救っていこうとする組織であることだ。今回この作品を視聴しおわり、弱者に寄り添うのは利権屋だけではないことに希望を感じた。ブリュノの姿を見て、内実伴う慈善組織というのものはSNSで広告を行わず、日々地道に我々の見えないところで眼の前の問題と共存しながら解決の為に奮闘しているんだろうなと信じたくなった。ニュースでは汚いものや上辺の広告が溢れていてそんな暇なく地道に活動を続けている人の出る幕は無いんだ。
作品の率直な感想は、ドキュメンタリーによった作品であるため、面白みはあまりなかもしれないが、自閉症児を通じて社会的弱者との関わりを視聴者に問う良作品であるため、見る価値はある。
作中とうして白髭のブリュノの奮闘には頭が下がる思いがしたし、少し抜けたところがあるマリクだが此処ぞという所で『寄港』で活動する若者たちを導く姿もかっこよかった。二人に負けず作中で光っていたのは黒人の若者ディランだ。彼はヴァランタン(ヘッドギアを付けた男の子)と真摯に向き合い歩み寄り失敗しながらも成長していく。その姿に感動した。
マリクが遅刻したディランを叱るときに言っていた言葉の内容が印象に残る。内容としては、自閉症児たちが、落ちこぼれの自分(『寄港』で活動する若者)たちの居場所を作ってくれているという内容だ。たしかに、と思う。解決したい問題というのは実は自分の存在価値を高めてくれるものであり、それは一方的なものではなく双依存的だ。自分はこの作品を見ていて少し自閉症児の方にジェラシーを感じることもあった。それだけ彼らが問題はありつつも密なコミュニケーションを取りながら人間はあるあるべきというような人と人との触れ合いを体現できていたからだと思う。
福祉のあり方…
他の施設で入居を拒否された自閉症や、親にまで見捨てられた、問題がある子たちを無認可ながら15年にわたり受け入れ続けるブリュワ、ドロップアウトしてしまった若者の就労支援を続けるマリク、プライベートの時間も削りながら、彼らを突き動かすものは何なんだろう。私には福祉の精神というものが全くなく、周りに福祉系大学に通学していたり、福祉関係の職に従事している友人がいるが、その心持ちは尊敬の念に値するし、それだけにこの映画を冷静に見れなかったかもしれない。ラストの方に描かれたベルを鳴らさず電車に乗れたこと、ヘッドギアを外すこと、共にサッカーをすること、前進するのに物凄い労力と時間が掛かるが、共に喜びを分かち合うこと、その子の自立や、その家族の真の支えになること、これが目指すところであり、喜びなのかもしれない。当然、人間が相手なので、画一的ではなく、ルールに反し、受け入れられない子供たちが出てくる。管理する側の国としては後からトラブルが起きたら、大問題なので、無認可機関を調査はする。しかし、現実は待ったなしで追い付いていない。家族や病院でさえ、彼等のような機関を頼らざるを得ない。後から云々というのを考えている前に大問題が発生している。認可無認可問わず、入居者への虐待などニュースを見るが、なぜそういうことが起きてしまっているのか、その先にある現実を見据えなければならない。実話だけに静かながら、映画はその本質を突いている。ヴァンサン、レダ二人の静かに熱い演技が良かった。
映画的な盛り上がりに欠けているが…
自閉症児をケアする施設を運営する2人の男性を描いた実話ベースの物語。
いろんな障害があって、様々な問題行動を起こす当事者たちの姿と、それを支援するスタッフたち。実話ベースなので最後に劇的な変化が待っているわけではない。ほんのわずかな変化。でもそれが前に進んでいる感じがして心地よい。
フランス政府がこの施設を潰そうとしているってことが本作の大きなテーマのはず。潰そうとする理由は、無認可だから、無資格のスタッフが多いから、定員以上の子どもたちを受け入れているからだった。言ってることもわかるがかなり理不尽。そのピンチをどう乗り切ったのか?ってところで盛り上がるのかと思っていた。ところがそんなクライマックスは待っていなかった。字幕でこうなりましたって説明がされただけ。かなりの肩透かしにあった印象だ。ここをもう少し映画的に盛り上がっていたらもっと評価が高くなっていたはず。
ただ、こうした障害者の問題を考えさせるという意味ではとても価値のある映画だった。
大変な
仕事とは言ってはいけない様な活動ですよね。時間は関係無いし、相手は悪気が無いしで。自分には無理ですね。でも、その後の後日談がテロップベースになってしまったのは、物足りなさが残りました。
自助じゃどうにもならない現実
まず、邦題をつけた配給会社の奴出てこい!
と文句を言いたくもあるが、それはさておき。
武器は根気と信念だけ、いま困っている自閉症の子どもとその親のために、出来る限りのことをするという、未認可施設の二人の活躍ぶりは素晴らしい。
そんな施設が国の基準に合わないからと、役人が営業の取り消しのため監査に来る。
守ったというより、今いる子どもたちの行き先はなく、誰も引き受けていないので、なし崩しに国が「見逃さざるを得ない」となるだけなのは拍子抜けながら。
何はともあれ、看護師たちを攻撃するほど、どこの医療機関も断らざるをえない重度の自閉症児たちの対応機関が不在という、制度の矛盾に対しての批判的な内容はすごく刺さった。
自助の強要ばかりで、公助の少ない我が国も思い出しつつ。
ちょっとだけ気になったのは、対処方法が20年くらい前のイメージに近い気がしたこと。
自閉症児たちは、音に過敏なケースが多いため、最近は耳栓やイヤホンの着用を試みることが多いと聞くが、それはせずにいるのに、時代設定として皆がスマホを使っていた。
スマホがあるなら、行方不明対策に、GPS装着は?
などなど。
それらのことから考えるに、時代としてはバラバラなエピソードを、直近に落とし込み再現したのかも、とも思いました。
【”行政は自閉症ケア施設の監査をする前にやることがあるだろう!”セイフティーネットワークの綻びに対する根本的な問題を明らかにするとともに、ASDの人々を献身的に支援する人々の姿に頭を垂れる。】
ーパリでASD(自閉症スペクトラム障害)支援施設を運営するブリュノ(ヴァンサン・カッセル:冷酷な殺し屋のイメージが強かったが、今作品でそのイメージは払拭)とマリク(レダ・カリブ)は毎日、朝晩ASDの若者たちが起こすトラブル対応で走り回る日々。-
・ジョゼフは頻繁に列車の非常ベルを押してしまうし、長く施設に幽閉されていたバレンティンは外部と上手く接することが出来ず、頭をイロイロなモノにぶつけるため、常にヘッドガードを装着している・・、など様々なASD症状を持つ青年たちと向き合う二人及び施設の支援員。
ーブリュノはキッパを頭に載せているから、ユダヤ教徒であろうし、マリクは自らアラブ系だと述べる。つまり、この支援施設の中心人物は純然たるフランス人ではない。又、遅刻が多く嫌々ながら支援員をしているディランは黒人だ・・。-
・何故、彼らはあそこまで献身的にASDの若者たちの面倒を見るのか・・。
序盤、ブリュノが言う言葉からヒントを貰う。”彼らがいるから、俺たちは救われる・・。”
ー深い言葉である。共依存ではないだろうし、彼らがいるから職があるという事でもないだろう。もっと崇高な考えの下、彼らは毎日働いているのだろう・・と解釈する。
彼らは決してASDの若者たちに上から目線で接しない・・。多少面倒ではあるが、一人の人間として接している姿。-
・ある日、ディランが目を離したすきにホテルの部屋からいなくなったヴァランタンを探すブリュノとマリクを始めとした支援員たちの懸命な姿が印象的だ。ヴァランタンの失踪前、彼の行動を知る彼らが、ホテルの部屋の突起物にごく自然に丁寧にカバーをかける姿も何だか沁みた。
ー高速道路での、あの救出行為は下手をしたら自らの命も危ない状況である。-
<ASDの若者たちが、ブリュノとマリクが運営する”正義の声””寄港”に身を寄せるまでの経緯は語られるだけだが,彼らがどのような扱いを受けてきたかが良く分かる。
だからこそ、杓子定規に施設の運営を監査する行政の男女に対して、ブリュノが預かっている一人一人の写真と彼らの症状の特長を叫ぶように叩きつけるシーンが心に響く。
そして、何より彼らとASDの若者達が徐々にではあるが、楽しそうに交流する姿と、二人の寛容な姿が観ている側にある感慨を齎すし、大きな問題提起を提示する作品にもなっているのである。
舞台はパリだが、決して他人事ではない問題でもある。>
ヴァンサンカッセルいいやん。
無許可で、支援する人たちも、ドロップアウトした少年少女を独自で教育して、見放された自閉症の子供達を預かるそら政府は目くじらたてるよ。しかも、ユダヤや中東の人達もいてる。まあ無茶苦茶。しかし、彼らのハートは熱くみんな頼りにしてます。大変だ!
特別に仮許可するって政府らしい。
ヴァンサンカッセルがいい。
デュランが気にいる言語療法士さん可愛い❤️。
「自閉症について描いた映画ではなく、他者への愛、そして献身について描いた映画」
個人的にはとても良い作品だと感じたのですが、こちらでの評価が低かったので初めてレビューを投稿します。
83本目
副題が「政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話」なんだけど正にその通りの内容で、とても良かったし、とても考えさせられた。
というのも、これが「良かった」と思ってしまうのって「映画」という1エンターテイメントとして享受しているからであって、当の施設の方々からすると本当に日々を切り取っただけであって、この映画のような壮絶な毎日を彼らは過ごしているんだろうというのが、ドキュメンタリーのように伝わってくる作品だった。
登場人物も結構多い割には各々のキャラがしっかり描写されていて「誰々と誰々の関係が良かった」っていうのが沢山あり過ぎて書ききれない感じ。
ブリュノとジョゼフの関係はもちろん、ディランとヴァランタンの関係は、お互いが歩み寄る様子を描写過多ではなく「視線」や「表情」で見せる手法が良かった。
(ディラン役の俳優さんはこの作品が唯一の映画出演作らしい!今後に期待したい俳優さんですね)
観てて辛い部分やシビアな描写もあったけど、コミカルさも忘れておらずその辺のバランス感も良かったし最後には泣いてしまった。
一人一人が心から寄り添いあっていて、そこに確かな愛があるんだと伝わってくる、胸に突き刺さるけど温かさも残るリアルな作品でした。
なんていうか、映画だから「良い作品だった」と受け入れられるけど、実際にはこの世界に自分が関わることは絶対に出来ないから、素直に良いと言えないみたいな、そんなリアリティのある作品でしたね。
めちゃくちゃ好きだけど、好きだというのに後ろめたさを感じてしまうような…難しく考え過ぎか…笑
後でパンフを読んで分かったけど、リアルなのも当然、本当に自閉症の方々や支援者の方々が出演しているとのこと。
「この作品は自閉症について描いた映画ではなく、他者への愛、そして献身について描いた映画」と書かれているのを読んで、僕も自信を持って好きな映画と語れるし、「知る」という意味でも素晴らしい作品だと思いました。
いろんな意見や考えを生みそう
最強のふたりは大好きで年に一度は見たくなる僕にとって大切な作品である。同じ監督という事もあって必然と期待値が高まりすぎてしまったのか少し期待してたのは違ったかなというのが率直な感想。
この作品に限らず「障害」というのをテーマにするのはやはり難しさはあるのか。この作品で描かれているのは自閉症の児童達がメインである。もちろん彼らを必要以上に特別な目で見てるつもりはない。ただこの作品で描かれているように彼らを特別視せずに健常者と共に生活できる社会を求めるには逆に彼らを特別扱いしすぎてる場面もあるように感じてしまい疑問を抱いてしまうシーンが度々ある。
特に印象的だったのは電車や駅にある非常ベルを押して逃げるシーンだ。この作品は実話ベースであり、もちろん現実はどういう対応をとっているのかは知らないが、この作品内では鳴らす事に具体的な注意などなく一緒に逃げるシーンが描かれている。この辺りは文化の違いなのかわからないが、彼らを理解しようとする心に水を差され気持ちが作品から心が離れてしまった。
ホテルの窓からレンジを投げるシーンもそうだが、一般人に傷をつける可能性があるシーンに対してのフォローがないのは終始引っかかる。
もちろんいいシーンも多いのだがこういうシーンが僕は目につきあまり心に響く作品ではなかったかなというのが率直な気持ちである。
かといって彼らを否定するつもりは全くない。作品の感想と彼らへの理解は全く持って別物であり、監督同様彼らが特別扱いされ溶け込みづらい社会を改善していく事の必要性は同じ気持ちである。
価値観や考え方の違いからこの作品は個人的には合わなかったが、現実の一部を知る貴重な時間ではあった。
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