劇場公開日 2020年7月31日

「カプセル怪獣は、弱い、敵に勝ったことがない、ただの時間稼ぎ。」8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5カプセル怪獣は、弱い、敵に勝ったことがない、ただの時間稼ぎ。

2020年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

すごいなあ、コロナ禍の中、その状況を逆手にとってここまでのものを仕上げてくるか。作品全体の緻密さはないが、むしろそこが狙い目のようで、うまくファンタジー色に仕立てられている。現実と幻想が混在しているような。確信と不安の間の感情が錯綜しているような。
なによ、カプセル怪獣って?ってとこから始まる物語が、ああ、今言ってるそのことはアレのメタファなのかって脳内変換しながら見ていくのだが、この、ちょっと陳腐そうな映像から醸しだされる”冷静さ”が妙にリアリティがある。そしてカプセル怪獣に希望を持たせながら、実は弱い、敵に勝ったことがない、ただの時間稼ぎ、と身も蓋もない断を下す。たしかにウルトラセブンに出てくるミクラスもウインダムもそうだった。でもそこには単なる批判や諦めがあるのではなく、前向きな希望的な感情に満たされている。その空気感が絶妙に上手い。
そして最後、日々変化をもたらしていたカプセル怪獣が、そこに行きつくのか。なんだそれか、と思うか、はっとさせられるかは人それぞれなのだろうが、エンドロールに流れる小泉今日子の歌声を聴きながら、僕が安らぎを覚えたのは確かだ。

栗太郎