「計算された素晴らしい作品」スパイの妻 劇場版 kokokakaさんの映画レビュー(感想・評価)
計算された素晴らしい作品
優作、聡子、甥の文雄、憲兵の津森、ドラモンド、野崎医師、死んだ女性 と、この作品は登場人物が少ない中、とても緻密に作られた作品だと思う。
見ていた時に気になった(フラグの立った)シーンがいくつかあった。
①序盤、趣味の撮影をしている際に妻聡子が「金庫の番号は覚えてしまったわ」と言ったこと
②イギリス貿易商ドラモンドが預かったフィルムをネタにゆすってきたこと
③聡子が船の船底に隠れていた時に船長とボブがあっさり居場所を教えたこと
①に関してはその後聡子が証拠品を盗むために金庫を開けて伏線は回収された。でもこれはおかしいと思う。大事な証拠品を聡子が見ている前で金庫にしまったからだ。
つまり優作はわざと聡子に証拠品を盗ませるよう仕向けたと考えるのが自然ではないか。
②ドラモンドはスパイ容疑で憲兵に捕まったが、優作が保釈金200円(約50万円相当)を支払って解放された。当時の憲兵の取り調べなら獄死だって充分あり得る事態から助けてもらった命の恩人をゆすったりするものか?見ていた時は「ひでーイギリス人」と思った。しかし後になってよく考えると聡子と別ルートでアメリカに行くための口実に優作が嘘をついたのではないかと。
③本当に聡子をかくまう意思があるなら憲兵に嘘の場所を教えてその隙に逃すとか手段はいくらでもあったはず。それをいともあっさり教えたということは、ここまでも全て優作から指示されていたのではないか。
それから満州に行ったのは何か情報を掴んだ野崎医師から調査依頼があったからではないか。野崎医師は終盤のワンシーンで聡子に面会に来た時に重要なことを語る。優作のことは全部わかっている、とようなそぶりで。
つまり、優作と野崎医師とドラモンドはスパイ仲間で日本を戦争へ向かわせ敗戦させることで修復を図ろうと企てたのではないだろうか?
そしてエンドロール。戦争も終わり目的を達成し偽造文書で別人になりすましてアメリカにいる優作の下へ、聡子は行った。