「731部隊の告発者」スパイの妻 劇場版 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
731部隊の告発者
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残念なのはフィクションとしてもモデルに近い人すら思い浮かばないことだろう、もっとも戦争の当時を知る人たちも齢を重ね語れる人もいなくなってしまった。731部隊の残虐非道はことごとく軍により隠ぺいされ、戦後、進駐軍ですら実験データと交換に免責の措置をとったので明るみにでるのは終戦の4年後に旧ソ連が開いた軍事裁判、ハバロフスク裁判であった。
うがった見方をすれば告発の勇気をもった一般人は居なかったのか、いや居て欲しかったというのが、十字架を背負わされた戦後生まれの若い脚本家たちのせめてもの悲願なのかもしれない。
脚本の濱口竜介と野原位は黒沢清監督が芸大で指導していた教え子たち、「先生、神戸を舞台に一本撮っていただけないか」と持ちかけ、銀獅子賞までとらせてしまうのですから大した先生孝行の生徒さんたちですね。
テーマは人道的であるし告発の主人公でなく寄り添う伴侶の視点で描いたこともヴェネツィア映画祭の審査委員長ケイト・ブランシェットさんの胸を打ったのでしょう。
そもそも主人公はスパイではありませんし軍の関係者も知人なので訴追も手加減されていますのでサスペンス調の緊迫感は希薄、主題は例え国家に背いても夫を信じる健気な妻、愛の物語といったところでしょうか。これはこれで有りでしょうが個人的にはもう少しベテランの俳優陣で観たかった気もしました。
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