「まさに「お見事!!」」スパイの妻 劇場版 yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに「お見事!!」
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話は割と単純と言えば単純な映画。
戦前の満洲で、日本軍の石井(731)部隊の人体実験を目撃した人が、周囲の人に影響を与えていく。黒沢清監督にしては珍しい、史実を元にした映画だ。
俳優さんの演技は素晴らしかった。
特に蒼井優。
神戸のお嬢様をめちゃうまく演じていた。
話の中盤で価値観がガラッと変わった後も、いきなりキャラクターの雰囲気を変えている。あれが出来るのはまさに「女優」だからこそ。一般人であんなに人格が変わると逆に怖く感じる。
憲兵隊長であるお酒馴染みの「けんじ」のルサンチマンも良かった。
蒼井優演じる聡子に恋心を抱いている、という設定だが、たしかに相手はお嬢様で、彼は普通の(・・あるいは貧しい?)家の出身だろう。恋心だけでなく、階級に対する恨みもあったはず。その辺がふんわりと感じられた。
これは恋愛映画ではない。
最後、聡子の夫、優作の取った行動は、「愛」よりも上位の価値観(正義)が存在する、人はその価値観をより大事だと考えることを示している。宗教を考えればすぐ理解できる。聡子が心変わりしたのも「愛」が理由ではないし。個人的には当たり前のことだとは思うが、恋愛至上主義みたいな気持ち悪い風潮が日本には漂ってるので、良い反証になるのでは?と映画観ながら感じた。
最後のどんでん返し含めて、ほんとに「お見事」と言える映画でした。
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