「「スパイの妻」、いや「売国奴の妻」、いや「大嘘つきの妻」と呼ぶのが一番良いかも。。蒼井優がまるで昭和の映画女優の様。有る時は原節子、有る時は杉葉子、有る時は…でもそれが一番のトリックだったりして…」スパイの妻 劇場版 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「スパイの妻」、いや「売国奴の妻」、いや「大嘘つきの妻」と呼ぶのが一番良いかも。。蒼井優がまるで昭和の映画女優の様。有る時は原節子、有る時は杉葉子、有る時は…でもそれが一番のトリックだったりして…
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①蒼井優がいかにも終戦直後の映画の主演女優のような演技に驚いた。髪型といい、当時の奥様方のような話し言葉といい話のテンポといい。映画自体も戦前が背景のせいか、まるで昭和の映画に似せたような作りだ。②しかし、観ているうちに既視感というか嘘っぽいというかいかにも作り物という感じがしてくる。まるで芝居を観ているような。③いかにも戦前の日本らしい兵隊や憲兵の姿。貿易商を営み阪神間に豪邸を持ち運転手とお手伝いさんのいる如何にも戦前の小説や映画に出てくる絵に描いたような中流(当時の)の社長夫妻、憲兵の偉いさんになった東出昌大は妻の幼馴染みで、純朴だった青年が冷酷な軍人になっていく良くある設定。外国人相手に貿易商を営む夫は当然進歩的な人間という性格付けであり、妻は途中まではまさに有閑マダムである。福原夫妻が義憤に燃える原因が満州軍の細菌部隊の活動のエピソードというのも、考えてみると余りにありきたりに思える。大事な生き証人があんなに簡単に殺されてしまうのも何か変。⑤映画の中で福原と甥とが余興に作った素人映画が出てくるが(重要な映画的小道具となる)、それが象徴しているのが実はこの映画自体が“敢えて作り物っぽく作った映画”という入れ子構造の映画ではないか、ということかも。⑥作り物っぽい単なる反戦映画+恋愛映画の演出に銀熊賞を与えたのであればヴェネチア映画祭も随分堕ちたものだと言わざるを得ないが、そういうトリッキーな映画のトリッキーな演出を評価したのであれば納得できるというものだ。
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