「めっちゃ面白そうな設定なのに平凡なストーリー」人数の町 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
めっちゃ面白そうな設定なのに平凡なストーリー
多分ですけど、この映画を観に行ったほとんどの人は「予告編を見て、面白そうだったから」というのが鑑賞理由だったと思います。私もそうでした。
確かに作品の設定や世界観は非常に面白いです。予告編を観るだけでも結構楽しいです。
でもこの映画、予告編以上のことが本編で起こりません。設定や世界観が面白いのは間違い無いのですが、そこからストーリーが広がらないし盛り上がらない。おおよそ予告編を見て抱いた予想の範疇の出来事しか起こりません。せっかくの設定が活かしきれていない、非常に勿体ない作品だと感じました。
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借金で首が回らなくなった蒼山哲也(中村倫也)は借金取りから暴力を受けていた時に黄色いつなぎを着た謎の人物に助けられた。「居場所を提供する」と彼に誘われるがままに謎の町に移住した蒼山。その町は、簡単な作業をこなすだけで衣食住が保障され、プールなどの娯楽施設を利用したりセックスの快楽を貪ることもできるというユートピアだった。最初はその不思議な町での生活や不思議な慣習に戸惑う蒼山だったが、偶然プールで出会った緑(立花恵理)に町のシステムを教えられ、段々とその町に順応していくのだった。
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「こういうことをテーマに描きたいんだろうな」ということは大体理解できるのですが、それにしたって中途半端。キャラクターも、そんなに大人数出ているわけでもないのに掘り下げが中途半端。ディストピア映画の定番としてラストは当然町からの脱出を描くのですが、脱出後の展開がこれまた中途半端。
「面白そう!この後の展開が気になる!」と感じる部分がいくつもありますが、その感情がいつまで経っても「面白い!」まで到達しない。とある映画レビューYouTuberさんの言葉を引用すると、「風呂敷広げるけど畳まない」。
例えば、蒼山に一方的に想いを寄せる菅野莉央さん演じる眼鏡の女性。何度も蒼山にアプローチを仕掛け、部屋で2人っきりになった時「私、人を殺したことがあるの」とカミングアウトします。嫉妬に狂って人を殺した過去のある女性が自分に想いを寄せている、蒼山くんがこの後どうなっちゃうのか非常に気になる展開です。でも、その後は何も起こりません。びっくりするくらい何にも起こりません。プールで蒼山と緑が体を寄せて会話しているところを後ろからずーっと見つめている描写もあるのに、本当に何にも起こらずに彼女は段々と登場出番が減っていっていつの間にか忘れられます。
上映時間の2時間弱の間で、大きな事件はほとんど起こりません。とってつけたようなピンチの場面はありますが、それも別に面白くはないですし。
個人的には、2時間の映画にするんじゃなくて20〜30分くらいの、「世にも奇妙な物語」みたいな作品にすればスッキリとして面白くなったと思います。
ストーリーに関しては正直盛り上がりが無くて退屈ですが、キャスティングは非常に良かったと思います。主演の中村倫也の「優柔不断の冴えない男」っぽさとか、ヒロイン役の石橋静河の「真面目な石頭」っぽさとか、立花恵理の「男をアゴで使う悪女」っぽさとか。キャストの顔かたちがキャラクターの性格に合っている、「っぽい」顔なんですよね。分かるわーって感じ。演者の皆さんは全員素晴らしかったと思います。
出演している役者さんのファンにはオススメできる映画だったと思います。