「まさに不条理」アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台 kame-pukupukuさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに不条理
映画館で鑑賞しました。
実話を基にした物語ということで、映画のストーリーとしては、パンチが効いていない感じもあります。一方、実話だと考えると、逆にここまで服役囚に色々自由にさせてくれた司法関係者たちが凄いな、とも感じます。
服役囚たちに演劇を教えるエチエンヌも単純に良い人というわけではなく、自分のエゴを出してくる感じや、逆に服役囚の普通の人が持っている感情(息子と会いたい等)を描くあたりは、とてもリアルさを感じました。
ただ、公演に行く度にすぐに調子に乗って問題を起こす彼らを見ていると「だから服役するんだよ」という気持ちになったりしました。また、多分それなりに懲罰受けてるけど、また公演に行けるようになっている辺りを見ると、さすがに甘すぎやしないか、と思ったりもするわけです。
最終的に彼らは公演の直前に逃走するわけですが、そりゃそうよね、いつか逃げ出すよねという感じです。
自分の中で感覚が合わないなと思ったのは、服役囚たちが逃げ出して、エチエンヌが一人でこれまでの経緯であったりを話すわけですが、そこで観客から拍手喝さいを浴びます。これは何に対しての拍手だったのでしょうか。逃走するような服役囚たちをこれまでまとめ上げてきた彼に対する拍手なのでしょうか。
また、エチエンヌは拍手を電話越しにカメルに聞かせ、お前たちへの拍手だ、みたいなことを言いますが、こんなこと言えるんですかね、と思ってしまいました。エチエンヌからすれば、自分だけでは到底たどり着けない最高の舞台を体験させてくれた、という気持ちもあるでしょう。しかし、最高の舞台で演技をする彼らを見たかった、俺の演出をこの舞台で発揮させてほしかったという悔しさもあるでしょう。その悔しさを押し殺してまであのセリフをエチエンヌが言えるのでしょうか。服役囚の気持ちを変えられなかった、と完全に諦め、どうでもよくなったから言ったのでしょうか。
色々と疑問点を書き連ねてしまいましたが、自分としては、エチエンヌが舞台上で刑務所長にお礼を言ったところは感動しました。