GAGARINE ガガーリンのレビュー・感想・評価
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自給自足ですかね
パリ郊外にあるガガーリンという名の公営集合住宅が取り壊されることになり巻き起こる話。
母親に置き去りにされた少年が、住民の退去が進み解体工事が始まって尚、母親に置き去りにされて一人で暮らす少年が、部屋を魔改造しながら住み続けるストーリー。
ロマの問題も孕みつつ、少年の夢や交友関係をみせていくけれど…16歳ですかぁ。
そういえば、そもそも自分は居住している「場所」とかに拘りはなく、補償されるなら構わんよってタイプだった。
まあ、彼の場合は母親を待つ、再開できる可能性への期待もある訳だけれど、その割にその辺を訴えかけてくる感じでもないし。
友情模様も恋愛模様もちょっと中途半端だし、こんなに杜撰な解体及び発破の管理って…。
ラストははっきりしなかったけれど、ルーベンスの絵をみられた少年と犬的なことですかね?
内容も雰囲気もお花畑感があって自分にはハマらなかった。
主役像が定まらず、結局乗れなかった理由。
古き良きコミュニティにノスタルジックに拘り抜くかに見えて寧ろ孤独をこそ追うどっちつかず、
恋をするようでしない不能性、
ゆえか主役像が定まらず、結局乗れず。
表現めく画で尤もらしいが実は相当に凡庸と感じて幕。
サヨナラだけが人生なのだ
「地球は青かった」でお馴染みのソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンと同じユーリという名前の黒人青年が主人公である。宇宙飛行士の資料映像が流れるシーンもある。ユーリは親しみを感じ、憧れを抱いていたのだろう。
ガガーリンの宇宙飛行の年に建てられたガガーリン公営住宅も築60年。名前の由来である宇宙飛行士はとうの昔にこの世を去った。公営住宅は耐用年数をはるかに超え、取り壊しの調査がはじまる。ひとり暮らしのユーリにとって、この公営住宅とその住民は、家であり家族のような存在だった。他の住民たちと違って、親戚や知人もないユーリには、団地を取り壊されたあとの行き先がない。
人は南の無人島でない限り、人間関係の中でしか生きていけない。人間関係は場所と密接な関係がある。ユーリは団地を出ることができない。そんなユーリをロマのディアナは「意気地なし」という。蛇足だが、ロマはボヘミアンとかジプシーの意味で、日本語で言えば「流浪の民」である。ディアナにとっては流浪が日常であり、別れに慣れている。
ユーリはディアナとの関係をひとつの絆だと思っているようだが、ディアナにとって他人との間に絆などない。実はディアナが正解で、人と人との間に絆などないのだ。家族の間にもない。日本の殺人事件の半分以上は親族間で起きている。家族の関係は絆ではなく、忍耐と諦めの関係なのだ。年数を経て忍耐の堤防が決壊した結果が殺人となる。
絆などという言葉を使うのは、他人との関係性に対して根拠のない幻想を抱いているか、甘えているか、またはその両方だろう。ボヘミアンのディアナは人間関係を楽しみはするが、あっさりと捨てられる。そこが甘えん坊のユーリと決定的に違うところだ。
手先が器用で努力家のユーリは団地の中で様々な工夫をするが、団地は確実に取り壊される予定だ。ユーリは団地への依存心を断ち切って、ロケットで外界に飛び出さなければならない。果たして打ち上げは成功するのだろうか。
ユーリが少しも考えなかったことがひとつある。それはガガーリン公営住宅が建設される前に、その土地に住んでいた人々のことである。農家が牧畜をしていたかもしれないし、第二次大戦のときは戦場になったかもしれない。そのずっと前は貴族が浮気をしていたかもしれない。時間を軸に想像力を巡らせれば、この場所には既にたくさんの出逢いと別れがあったことに気づく。ユーリは悟ることができたはずである。サヨナラだけが人生なのだ。
移民問題から考えるフランスのリアル
本作の主人公、ユーリは、宇宙飛行士「ガガーリン」の名を冠した実在の団地 「 ガガーリン団地 」 に住むアフリカ系移民2世(又は3世)と思われる。そして彼は、宇宙飛行士に憧れを持つ十代の若者。(「ユーリ」の由来はユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリンの名前からだろう。)
この映画の主題となっているのは、明らかにフランスの移民問題、特に移民2世、3世および不法移民などを含む若年層の問題だ。
戦後フランスは、日本と同様に 史上最大の経済成長期(1945年から75年までの栄光の30年)を経験し、安価で大量の労働力確保のため、積極的な移民受け入れ政策を行う。74年の第一次オイルショックを契機に、原則として大量移民の門戸を閉じたものの、現在ではその2世、3世、さらに不法移民が大きな社会問題となっている模様。
現在のフランスが抱える移民2世、3世、問題とは、まずは若年層の高い失業率と教育の問題、そして移民ジュニアに対する差別の問題、そして経済的な格差の問題。これらが、若年層が感じる「閉塞感」に繋がっており、本作でも隅々にその空気感が感じ取れた。
また、本作に出てくる「ガガーリン団地」は1960年に完成との設定。ちょうど、74年の転換期から15年ほど前より移民の受け入れを開始し、約60年の歴史を持つ建物。そこには、移民家族を含む社会的なコミュニティーが形成されていた。
老朽化が原因で、この「ガガーリン団地」の取り壊しが決定されるとことからストーリーが始まる。60年の歴史を持つ団地の取り壊しは、そこに築かれてきた(移民家族を含む)コミュニティーの断絶を意味しており、ふと福島原発問題で移住を迫られた人たちの問題が頭をよぎった。(移住そのものよりも、コミュニティーの断絶のほうがよりいっそう大きな問題だったと記憶している。)
本作の最後のシーンで、主人公のユーリがモールス信号で繰り返し伝えたかったメッセージは、そのまま現在のフランスにおける移民2世、3世の若年層の訴えを代弁していたように思う。
全体を通して社会問題を扱いつつも、「宇宙」をテーマにした斬新なアイディアと映像感覚、そして美的センスが随所に散りばめられていて印象的な作品だった。
(当然のことですが)天文知識がないと理解がハマります(補足入れてます)
今年54本目(合計327本目/今月(2022年2月度)26本目)。
…とはいえ、タイトルから、真向から天文ネタではないとしても、まったく天文ネタはないだろうとも思えず、「どの程度問われるのか」の幅が「見るまで」わかりにくいです。さらに天文ネタ以外の事項(フランスにおける外国人問題など)の知識まで問われるので、かなり難易度は高めです(一部は補足入れました)。
ストーリーはここにもあるように、実在するガガーリンの名前を冠した公営住宅「ガガーリン公営住宅」にいろいろ建築基準的に色々まずいという話になって取り壊そうという話になったところ、そこに思い入れがある人がどこまでそこに粘るか…というものです。
結局、日本でもそうですが、住宅は特殊なもので、「住む場所はお金では必ずしも買えない」ため(なかったら、それまで)、「補償金を出すから退去してよ」では必ずしも進まない部分も当然あります。それは日仏違っても趣旨は同じです。
趣旨としてはいくつか天文ネタが混ざっている以上に、この「退去問題」それ自体は単なる(古すぎる)マンションの取り壊しの話に過ぎないところ、フランスは外国人の居住問題が日本以上に頑固で、いわゆるジプシー(ロマ)の論点も入ってきます。この点は明確に描れますが、字幕としては少なめ。もっとも、その論点はあるだけで、「メイン筋」ではないので、そこまでは重要視しなかったのだと思います(あるいは、「退去問題」のほうに結局吸収できるので、あえて重要視せず、「両方理解できますか?」という論点にしたかったのだろう、とも思えます)。
なお、元のテーマ自体、つまり、ガガーリンの存在などそれ自体は史実として存在しますので、一部で当時の画像・動画が使用されているようです。
とはいえ、タイトルから「一般的な天文の知識は要求されるだろうが、その度合いがそこそこ高め」という点に減点幅がいってしまうのではないか…というところです。
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(減点0.3) 日本は天文教育に関しては、小学3年(太陽)、4年(星座)、6年(太陽と月、惑星)、中学3年(太陽系と金星の満ち欠け)程度しか扱わず、高校地学は事実上存在しない科目です。それ以上の知識を得たいなら、自分で天体望遠鏡を買ったり、プラネタリウムに行くなどしないと無理です。
ただ、天体望遠鏡もピンからキリまでありますし、プラネタリウムもこのご時世、なかなか行けない(そもそも、学習教材の一つでもあるので、貸し切りの日も多い)状況で、「日本国内の天文教育の現状で」、一部、わかりにくい点や何を意味するのか理解しにくい部分はあります。
とはいっても、元にないものを勝手に足したり引いたりできないのも確かであり、極端にマニアックな事情は出てこないし、一部は「明確に」配慮があるので、減点対象はこの程度です。
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【!※注意※!】 映画内でも述べられていますが、双眼鏡・天体望遠鏡で太陽を直接見てはいけません。
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▼ 一部、わかりにくい点について(映画内の時間軸順に)
(月食・日食に関すること) 基本知識なので、これはぐぐったほうが早いと思います。図の説明も必要ですし、国立天文台など詳しいです。
(太陽を見るシーン) 上記にも書いていますが「双眼鏡・天体望遠鏡で直に太陽を見ては「絶対に」いけません」ので注意です(食のときも、安全を重視したほうが良い)。
(序盤、星座表を見ているシーン) 星座表までフランス語訳になっているので特定はしにくいですが、映っているのは、ペガスス座とアンドロメダ座あたりです。
(そのあと、さらに、ラストあたりに、夜空を見上げるシーン) 映るのが真四角に星が並んでいるだけで何かわかりにくいですが、上記がヒントで「秋の大四角形(さらには、秋の大ひしゃく)」です(ペガスス座の3つと、アンドロメダ座の1つで構成される。2等星3つ、3等星1つ)。
※ フランスでは非常にメジャーなアステリズム(星の並び)で、ゴッホ作の「ローヌ川の星月夜」で描かれているのが北斗七星か、秋の大ひしゃく(上記の4つの星にさらに3つを加える形で、北斗七星と並びが似る)かは現在でもフランス国内では争いがあるほどメジャーなアステリズムです(よって、その部分でもある秋の大四角形は、日本以上にメジャーな存在です)。
(主人公の名前が「ユーリ」) さて、「ガガーリン」のフルネームは、何でしょう?
※ 日本だと、女児名の印象を受けますが、違います。
(ヒロインの名前が「ディアナ」) 古代ギリシャ・ローマで、月の女神とされた、アルテミスやルナ、ディアナによるものと思います。
(後半で登場する犬の名前) 月に着陸したことがある、「人以外の」動物は何でしょう?その動物には命名もされていますが、さて、何でしょう?
理解不能なファンタジーでした
ガガーリンはパリにある団地の名前。
再開発で取り壊しが決まっていて、住民は次々と退去していく。そこに住む男子のユーリは、母親に置き去りにされ一人暮らし。その辺りの設定は分かるんだけど、行き場のないユーリが始めた事は、自分の部屋を宇宙船にする事。そこ地上だぞ、意味あんのか?時間の説明が無いので、どのくらい1人で住んでるのかは謎だったけど、学校やバイトなど社会生活が全く描かれていない。彼はどうやって飯を食っていたんだろう?野菜を育てるのだってタダじゃ無理だと思うよ。
団地にいるのは1人だけ。工事関係者は、まだ人がいることに気付いていない。ありえなすぎ。友人達もそこに留まっているのを許している。ありえね〜。団地はそのままダイナマイトで破壊作業に。しかも夜。ウソ〜!?元の住人達とカウントダウン。しかし、ユーリのせいで失敗。皆んなでユーリを救いに団地に入る。ウソ〜!?爆弾あるのよ、危険すぎでしょ。それを許す工事関係者。もう何が何だか???
最後の宇宙空間的シーン、何これ?想像してるだけ???
誰にも共感できず、理解もできず、ずっとモヤモヤしてました。残念。
粘る少年
解体間近のガガーリンという名の巨大団地から退去せず粘った少年を終始追うドラマ。母親しかいなく、それも男とどこかに、、、孤独少年。行き場所なんてない、、、
可哀想な話しだけどなんか感動出来なかった。。
ずっと団地から出て行く出て行かないの話で後半は飽きてしまった。
ついでに自分の分譲マンションの将来を考えてしまった。
ローソ返済早めにして老後の負担減らさなくちゃなーってしみじみ思いました。
変わりゆく街の風景の影に、空の郊外に見捨てられた月の隣人
宇宙船 in 団地でたった一人内緒の篭城戦…?月のおとなりで。ロシアの宇宙飛行士と同じ名前の実在した団地を舞台に、帰ってこない母を待ちながら一人暮らす少年を描いたカミングオブエイジ青春映画(と言うには語弊というか幾分影もある表現の責務と可能性的着地点)。
生活があって、けどそんな待つ場所を失うアイデンティティー・クライシス。ある日突然、行き場を失うことを突きつけられる主人公ユーリ。たとえ立ち退きを命じられ、母も帰ってこないとしても、彼にはそこしか残っていないから。人類は空に夢を見て、思いを馳せてきたから、空気(、水、土)のように心の拠り所。取り壊しの進んでいく団地で、ある意味似ている状況になっていく。陥っていく。壁に囲まれ、壁をぶち抜いて作り上げていく自分の世界。それは頑として自らが信じた道を進んでいくというよりも、そうするしかないみたい。だから辛くなる…。考えさせられる。
2024年パリ・オリンピックに向けて、社会がすべきこと。コミュニティの役割とそこからいかに社会のきちんと十分な受け皿を用意しない方針によって弾かれるか、そして薬物はじめ貧困に至る厳しい現実をしっかりと見据えている。詩的、幻想的な見た目とは裏腹に重たい題材を真摯に描いている。クリシェからは程遠く、決して扱う題材を軽視することもなく、最後まで見事なデビュー作。
勝手に関連作『アクエリアス』
すべて直せば解体できない
私達と月は隣人同士
宇宙で大切なのは空気
空の郊外
パリの風景の終わり
2020年作品。60年前の1960年、ベルモンドとジーン・セバーグが若さを滾らせた恋愛をゴダールが活写した、疾走するパリ。60年経たパリは、取り返しがつかないほどに、時代の疲弊が至ってしまっているのか。破壊されようとする60年代の団地はクライマックスでSOSを発信する。どこで人類は進化の方向を間違えたのだろうか。
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