「🎵やたら~ やたら~ やたら~」GAGARINE ガガーリン カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
🎵やたら~ やたら~ やたら~
せつないのよ。
かつて宇宙飛行士のユーリ・ガガーリンが記念の植樹にも訪れた、彼の名を冠したマンモス団地は老朽化やスラム化が進んでしまい、老人や貧しい家族が住んでいる。あちこち共有部分の破損や照明の故障だらけ。ユーリという名の幼少時から宇宙飛行士に憧れてきた天文や機械に詳しい16歳の少年が思い出の詰まった団地の解体中止にわずかな希望をつなぎ、できる限りの抵抗をみせる。
ユーリの母親はシングルマザーで彼を育てていたが男が出来て玉の輿なのかバックレる。彼をひとり残して出て行ってしまった。おばさんのファリが時々ユーリの様子を見に訪れる。ユーリにはフサームという親友がいる。団地の近くに素敵な娘ディアナ(DIANA)がいるのを天体望遠鏡で見つけたユーリ。遠くから観察しているだけのユーリをフサームがからかう。ユーリは自分で中古資材を集め、それで修理すれば、団地の解体を少しでも伸ばせると願う。出ていった母親が残していった金のネックレスチェーンのロケットを廃材業者に渡して、10キロ分の蛍光灯やLED電球と交換する。DIANAも手伝う。10キロはフランス語でも、ジュキロって聞こえた。空耳?
団地の周囲には建築中の高層ビルや建設資材や廃材収集業者が多くて、ディアナ(DIANA)はメカに強く、自動車の修理ができる娘。小さい弟や従兄弟の面倒を見ながら、家族と暮らしているしっかりもの。エキゾチック。彼女は葉っぱ売りの青年にからまれた際に、ロマ族だと言い返す。流浪の民ロマ族。DIANA役のリナ・クードリ(アルジェリア出身の新鋭)に私も惚れました🤩 急いでフレンチディスパッチやこれから公開するオートクチュールも見なきゃ!
🎵Oh~ please, Stay with me.
DIANA~
しかし、お役人が棟の照明などの安全性のチェックに訪れ、結局ダメ出しされてしまい、取り壊しが決まってしまう。しかも、ユーリの母親は団地に住めなくなったユーリの引き取りを拒否(鬼じゃ)。ユーリは住民が立ち退いたあとも団地の8階に籠城し続ける。
ユーリが廃材でこしらえた宇宙基地空間が素晴らしい。すごい才能。建設現場のクレーンの運転室のディアナとの光のモールス信号での会話もロマンチック。
団地はいつかは壊されてしまい、共同体の住民もばらばらになってゆく現実。所詮人生は別れの繰り返しなのか。母親にも捨てられたユーリは浮浪児なのか。
北極星と北斗七星が映し出されると、つい小林旭になったつもりで、よーるがまーたくるー🎵 オーレの心に~🎵と歌いたくなる。菅原文太になって、一番星ブルースも歌いたくなる。
解体の日に集まって来たたくさんの元住民の人々。ダイナマイトが仕掛けられ、カウントダウンのさなか、ユーリがまだ団地の中にいると気付いたディアナ。屋上で凍え、幻覚で宇宙ステーションから離れ、宇宙空間に投げ出されるユーリの夢の映像が美しく、はかない。まるで、マッチ売りの少女が凍死するときの夢のようで、泣きそうになる。屋上で飼っている愛犬の名はライカ。ソ連のスプートニック2号に乗せられた犬と同じ名前。
船が沈む時、船長は船と共に。
宇宙ステーションに模したマンモス団地が解体される時、ユーリ船長も共に逝くのかと思うと悲しくて、泣きそうになる。
最後にまたあの曲が流れる。
🎵やたら~やたら~やたら~
やたら、せつないのよ❗
子供の頃に団地住まいの経験がある人はきっと泣くよ!
こういう作品を作った新鋭監督(ふたりの合作)って本当に素敵だなぁ。
大好きだぁ~~~~