劇場公開日 2021年1月1日

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「「世紀末救世主伝説映画(含むゾンビ)」な一作。」新感染半島 ファイナル・ステージ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「世紀末救世主伝説映画(含むゾンビ)」な一作。

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2016年公開の前作に続いて、本作もヨン・サンホ監督がメガホンを取り、これにて『新感染』シリーズ三部作の一応の区切りとなっています(本作を鑑賞するまで、このシリーズを二部作と思ってたんですが、実際には2016年公開のアニメ作品『ソウル・ステーション・パンデミック』も含めての三部作だそうです)。

前作が列車内という閉鎖的な空間を活かした、緊迫感と恐怖感溢れる作品だった一方、本作はちょっと過剰なほどの躍動感が際立つ、「世紀末映画(含むゾンビ)」となっています。キャストも刷新し、残念ながらマ・ドンソクの肉体美を鑑賞することはできません。代わって主演のカン・ドンウォン、イ・ジョンヒョンらが、見事な演技を見せてくれます。

本作は、サンホ監督が公言するように、『アキラ』や『マッドマックス』シリーズなどの先達の影響を、過剰なまでに、そして堂々と見せつけてくれます。これはつまり、本作では「ゾンビ」を描くことに主眼を置くのではなく、極限状態に置かれた人間同士の争いに焦点を絞ることを意味します。そのため、作中では大量のゾンビが登場しますが、それらは登場人物の行く手を阻む障害物とか、何らかの形で利用可能な道具、といった程度の、ドラマの背景装置の役割しか果たしていません。

後半になるとより一層、先に挙げた先達に対するオマージュが際立つため、確かにすごい表現技術に裏付けられた躍動感のある映像なのに、どこか既視感がある、という不思議な感覚を味わうことになります。

結末近くの描写については、ややくどすぎる、という評もあるようですが、真上からの俯瞰で主人公達を捉えた映像は、これ以上なくシンプルかつ力強く、人物同士の錯綜する想いを表現していて、非常に素晴らしいと感じました。

徐々に『家族』というテーマに収斂していくところに前作とテーマ上の繋がりを感じさせるのですが、肝心のドンウォン扮する主人公が、終始何を考えているのか分からないので、この点でやや説得力を損なっているのが残念…。彼の演技力で画面に目を引きつける力は強いんだけれども。

yui