「ゾンビ映画になにを求めるか。それで大きく評価が分かれる作品」新感染半島 ファイナル・ステージ コンビニさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ映画になにを求めるか。それで大きく評価が分かれる作品
前作ファイナルエクスプレスは、ゾンビ+新幹線という密室+タイムリミットのある中の脱出劇で、キャラの立ち方や誰が死ぬか分からない不安感など新しい形でエンタメ的にも非常に楽しめた作品でした。
ゾンビ映画というのは、とにかくエンタメに特化する前作のファイナルエクスプレスやアイアムアヒーローなどのタイプ、ロメロのゾンビのような社会批判を盛り込んだタイプ、ゴア描写に力を入れるブレインデッドのようなタイプ。この3つに大きく分けられるかと思う。
今作はエンタメに振りたかったのは分かる。ゾンビだらけで廃墟となった韓国。生き延びている元軍人達によるイカれた非感染者コミュニティ、反抗するレジスタンス一家と韓国に残されたお金目的で一攫千金を狙う冒険者という構図からも明らかだ。プロットは非常に悪くない思う。
しかし前作のようなタイムリミットや密室からの脱出劇という緊張感があるわけでもなく、かといって脚本にどんでん返しがあるわけでもない。かわりにあるのは残された家族達の親子愛や救うことができなかった主人公の様々な葛藤。ゾンビ映画にそういうのを持ち込むことに違和感を感じる方もいるでしょう。そこまで幅広い層に観てもらうためにハリウッドナイズする必要はあるのだろうか?
とにかく泣かそうとする演出も鼻につくし、だれが死ぬかもまるわかりで緊張感もないし、たいしたゴア描写もない。無い無い尽くしの凡庸なゾンビ映画としか言えない。
強いて解釈するなら、例えば最後のおじいさんのセリフで「地獄から抜け出さしてやりたかった」というようなセリフからは今の韓国経済の貧富格差を表している・・・ともとれる。あとイカれた軍人たちは過去のベトナム戦争などの韓国軍の行ったことに対しての批判・・・ともとれる。かもしれません。
あと個人的にCGを使いすぎている点も楽しめなかった。マッドマックスとか言われてるけどあっちはCGをほぼ使ってません。アクション演出でCGをたくさん使わないとできないのであれば、そもそもやる必要はないというのが個人的な意見です。CGにお金をかけるよりもいかにCGをつかわず魅せるか、という方向にお金を使ってほしかった。
見終わってみると最初の香港行きの船内で感染者が突然発症したときがピークだった。これなら今度は船の中だけで複数の救助船で避難合戦でもさせた方が面白かったんじゃなかろうか