「もし、この作品を見なければ」アナザーラウンド tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
もし、この作品を見なければ
北欧•デンマークの(我が国の常識から見れば)ネジの外れた飲酒事情を知ることは無かったと思います。
異国文化を覗き見ることが出来たうえに、「北欧の至宝」ことマッツミケルセンが踊るキレキレのジャズバレエを堪能できるので、大変お得な映画です。
それだけではなく、お話についても
「鬱屈を抱えた仲間たちが」、「事態を好転させるために悪い事をはじめる」、「最初は上手くいくも」「徐々に深みにはまり、とりかえしのつかないことが起こる」、「すべてを失ったのちに残るものは…」
みたいな話かと。
これは、ジャンルは違えど、私の好きな邦画である「日本で一番悪い奴ら」とも共通する骨組みだし、こういうタイプの映画が大好きって人は結構いるのではないでしょうか。
幕切れについても、お酒のネガティブな側面をクローズアップさせたのちに、もう一回ポジティブ面も描くという説教臭さを抑えた着地。
それをマッツミケルセンがダンスで体現するという洒落た演出が良かったです。
ただ、「中年の危機」モノとして壊れた夫婦関係も描くのはいいとして。
奥さんが浮気してましたは微妙かな。なんか唐突かつ、腑に落ちない展開に感じました。
「マンネリでギクシャクした関係に陥った→酒で一瞬修復しかけたかに見えた→やっぱり生活が荒れて、より一層関係悪化→そして…」で良かったような。
悪い飲酒とそれによる弊害を描いているわけなので、パートナー側の責任に転嫁するのは何だかな…と。序盤のギクシャクした家庭の風景がよく出来ていたので蛇足ではないでしょうか。
とかく北欧っていうと「かもめ食堂」のほわほわした感じとか、IKEAのシンプルでお洒落な家具とか思い浮かべがちです。
「北欧のそういう面に憧れる人には、本作とミッドサマーを観せてあげたいなあ」などと思い至りました。