劇場公開日 2021年9月3日

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「ユニークな脚本と役者陣の名演に拍手」アナザーラウンド 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ユニークな脚本と役者陣の名演に拍手

2021年9月3日
PCから投稿

極めてユニークな脚本であるが、どうユニークかというと一言では説明が難しい。真っ先に目がいくのはやはり中年教師4人が独自の「自由研究」に乗り出すくだり。その根幹にあるのは、生徒たちの若さみなぎる活力と、40代を超えて疲労感と悲壮感すら漂う男性教師たちとの対比だ。いつの間に自分はこんなに枯れた人間と化してしまったのか。どうすれば人生を楽しむ勇気が湧いてくるのか。そんな彼らが死神と契約するかのごとく媚薬を得て、束の間の活力を得るーーーー。キルケゴールをはじめとする金言や、ふと挟み込まれる楽曲の歌詞などがさりげなくテーマを補強しあっているところが素晴らしい。たとえどんな困難や悲しみが横たわろうとも、この世界は美しい。自分の弱さと向き合いながら、時にコミカル、時に神妙になって突き進んでいくミケルセンら主要キャストがあまりに魅力的だ。特に中年を過ぎた大人たちには無性に響くものがあるのではないだろうか。

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牛津厚信