劇場公開日 2021年8月20日

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「文学的であり、現代的な85年」Summer of 85 昭和ヒヨコッコ砲さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0文学的であり、現代的な85年

2024年7月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1985年の夏。
冒頭から不穏な様子がうかがえるが、事情が詳らかになると、思ってたよりも深刻じゃなくてちょっと肩透かし。
18歳と16歳の少年が驚くべきほど開放的に恋を堪能していくが、その関係が非常に「普通」に描かれていることに驚く。
2人の関係はほとんどLGBTとして描かれていない。
映画館でべったりくっつき、クラブでは踊りながらキスをする。
調べたところ、フランスでは同性愛行為の非処罰化が成されたのが1983年なので、ここまでの理解は社会には広まっていないと思われる。
そういう意味ではBLっぽいファンタジーさがある一方でダヴィドからは耽美さを感じさせるもののどこか俗っぽさもあり、それがクライマックスに繋がる。

アレックスの初恋が理想を投影したダヴィドに向けられたものであることや、対話よりも感情を優先していることなど、
これに似た苦い思い出が口の中に広がる感じがあった。

私の思うダヴィドは、アレックスを追わなかったと思う。
利己的な選択への自責や罪悪感を感じながらも、自分の欲求に従う故にアレックスとの寄りを戻そうとは考えていない。
やり場のない感情を危険な運転に込めて、事故は起こるべくして起こったのだろうと思った。

昭和ヒヨコッコ砲