「あっぱれ」ヤクザと家族 The Family 原田智行さんの映画レビュー(感想・評価)
あっぱれ
ネトフリにて鑑賞
正直日本映画だとたかを括っていた
結論、とても良い映画だった
序盤はなんだかありがちな展開で、なんだこんなもんかと思っていたが、出所後の展開から目が離せなくなった。ヤクザとしての立場や権威が昔とは全然違い、時代の移り変わりを感じさせる。その後も元組員の仲間にも反社だと蔑まれ、途方に暮れてしまう。そんな中知らぬ間に出来ていた家族と出会い、人生に一寸の光が射す。車の中での娘との会話の中で、娘に何故母の元に来たのかと問われる。その答えは有耶無耶にされていたが、義理と人情であろう。どんなに時代が変わろうともヤクザとしての心は変わっていなかったのだ。あの時子供だった翼も立派に成長し、町はまだ完全に光を失ってはいなかった。そう思ったのも束の間、ネットやTwitterという、まさに新しい時代の象徴であるものに人生をめちゃくちゃにされてしまう。そんな中、老衰した親父に言われた「家族を幸せにしろ」は主人公の心に重くのしかかる。雷雨という重く暗い天気の中、家の電気(光)を消し、逃げる家族。しかし完全に主人公の人生の光は失われたわけではなかった。翼だ。だが、主人公は翼の力は借りようとはしなかった。おそらくもう生きるのに疲れたのだろう。柴崎組という1時代が完全に終わった。両方ともの家族を失った主人公は最後、海のなかで太陽の光に差されながら、暗い暗い、光の無い海の底へ沈んでいくーーーーー
その後、新しい時代の存在である翼と娘が海で出会い、時代が完全に移り変わった。
何より特筆すべきは、綾野剛と堤真一の演技であろう。綾野剛は3時代の主人公を見事に演じた。
主題歌も本当に映画の余韻に浸るにはぴったりな曲で、あっぱれだった。