「世の中から閉め出された男」ヤクザと家族 The Family しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
世の中から閉め出された男
Netflixで鑑賞。
ヤクザ映画と云えば、"東映実録路線"と呼ばれる作品群や、最近では「孤狼の血」のような、血みどろの抗争劇を中心にした作劇を思い浮かべますが、本作は全く違った趣きでした。
時代の流れに追い詰められ、人間として生きることを許されなくなったヤクザの姿を冷徹に描くと同時に、"家族"を求め続けた男の悲劇を描いた哀切のヒューマン・ドラマでした。
"親"である組長を慕い、ヤクザとしてオヤジのためなら命を擲つ覚悟で生きて来た男が、14年の刑期を終え出所すると周囲は一変していました。その変化の著しさがとても物悲しく、ヤクザから足を洗っても尚付き纏うレッテルのせいで、次第に行き場を失っていく様に胸が締め付けられました。
まともに生きたいと思っても、携帯電話は持てず、就職も出来ない。大切な人にも害が及ぶ。ヤクザだったと云う理由で、人権は無いも同然となってしまいました。
法律で雁字搦めにし、暴力団排除の動きが加速する中、若い世代が半グレとして台頭し、法律の網を掻い潜って活動し始める。いたちごっこの様相を呈した…かと思いきや権力側の人間がヤクザと癒着して便宜を図り、絵図を描いている…。そして主人公を徹底的に追い詰めたのはSNSでした。
ヤクザを追い詰める法律をつくったのはカタギだし、SNSを利用して気軽に拡散させたのもカタギ。これではまるで、カタギの方がヤクザのようではないか…
そんなやるせない現実でも、ヤクザとしての生き方しか出来なかった男の最後の決断とその結末に、胸を打たれました。
果たしてこれしか道は無かったのか。そもそも法律とは、誰のために存在しているのか。突き付けられた気がしました。